アルファ・クラブ掲載記事   アドバイス 昌平クリニック院長 鍋谷欣市

以下はALPHA CLUB 269号(11/'04)【私の工夫 それぞれの後遺症対策】に掲載された記事です
ひまわり逆 流
flower1 心に余裕を持って
熊本県 KYさん (73歳)
 平成5年12月、かかりつけの医師の勧めで内視鏡検査を受けたところ胃癌が見つかり、胃、胆のう、脾臓を全摘しました。術後、抗癌剤の副作用でつかえ、逆流を起こし、食事には苦しみました。現在、抗癌剤をやめて10年が過ぎ、何でも食べられるようになりましたが、逆流だけは治まりません。対応策として (1)就寝時は上半身を高くする (2)食事は軟らかめの物でよく噛む (3)刺激物はとらない (4)逆流が起こりそうなとき、また起きたときは、消化性潰瘍治療剤のアルロイドGを飲む。
  今は心理的な案心からか逆流も少なくなり、胃のないことの不安感も薄れました。身長174cm、体重は術前74kgでしたが、57kgに減りました。体力をつけるため、毎日1時間の散歩や家庭菜園などを楽しんでいます。

flower1 就寝5時間前からの準備
大阪府 Nさん (71歳)
  平成13年10月、1年前から胸やけを感じ、市販薬を飲んでも治まりませんでした。内視鏡検査の結果、胃癌が発見され、幽門側を5分の3切除しました。術後2年、食事量が増えたせいか、毎朝4〜6時頃に胸やけや逆流が起こり始めました。夕食に油物や肉類、甘い物など消化の悪い物を食べると必ず起こります。
  いろいろ考えて、寝るときは敷蒲団の下に座布団を2枚重ね、上半身に傾斜をつけ、体の左側を下にしないことと、また、就寝5時間前からは白湯以外は口にしなくなってから逆流が治まりました。
  身長157cm、44kgの体重が39kgまで減り、体力がありません。先生からは「何を食べても良いが個人差があるから」といわれましたが、早く元気になりたいです。

flower1 自分に合った生活
神奈川県 KMさん (50歳)
  平成12年6月、人間ドックで胃癌と診断され、胃の4分の3と胆のうを切除しました。十二指腸の吻合部狭窄のため食物の通過障害が起き、再手術をしましたが、十二指腸液の逆流が続き、7ヵ月の入院になりました。退院後も定期的に逆流があり逆流性食道炎との闘いでした。
  対策は、リクライニングベッドを30度の角度にして寝る、甘い物は胸やけがするので控える、前かがみの作業は腸液が残胃に逆流して気分が悪くなるので姿勢には気をつける、便通を良くして胃腸の働きを整える。また、私の場合、寝る1時間前に軽く食べると胸やけが抑えられます。たまに逆流が起こりますがフオイパンとアルロイドGで対応しています。

flower2 漢方薬・西洋薬 アドバイス
  人間が逆立ちしても、胃や腸の内容物が逆流してこないのは、何と巧妙なことでしょう。その理由は、胃噴門部に括約機構、または逆流防止機構と呼ばれる仕組みがあるからです。食道下部と胃噴門部には、いくつかの括約筋があり、これを支配する自律神経が、食物が通るときは緩め、逆流しそうなときはぎゅっと締めるからです。
  ところが、胃の全摘や、噴門部切除では、これらの筋肉や神経が、多かれ少なかれ破壊されてしまうのです。そのため、手術ではこの働きを取り戻すような工夫を施した術式をおこなっています。しかし、本来の働きを完全に取り戻すことは困難で、人によっては、術後に逆流性食道炎が発生して、発赤、びらん、潰瘍などの症状が見られますが、この所見と患者さんの訴える症状とは、必ずしも一致しないものです。汚物を見ると吐き気を催すように、逆流には自律神経が深く関係しますので、気の調節も大切です。
  対策は、何よりも噴門の締まりが悪くなっているので、皆さんの体験のように、夜間は上半身を高くして寝ることと、食べ過ぎないことが予防の原則です。また、逆流してくる消化液には、酸性とアルカリ性があり、また、蛋白分解酵素も含まれているので、それぞれに応じた治療薬として、KYさんやKMさんが服用しているようなアルロイドGやフオイパンなどが用いられます。漢方薬では、気分を落ち着かせる効果がある半夏厚朴湯が適します。また、炎症を抑えるには半夏瀉心湯が用いられます。

Copyright(C) 昌平クリニック.記事の無断転載を禁じます