アルファ・クラブ掲載記事

以下はALPHA CLUB 306号(12/'07)【患者の疑問 そこが知りたい!】に掲載された記事です

flower1 漢方薬で体質改善ができるでしょうか 
女性 (65歳)
  胃を切除後10年が過ぎました。いまだに食事量が少なく、栄養もあまりとれません。最近、特に体力がなく、疲れやすくなり、すぐに風邪を引いてしまいます。栄養剤やサプリメントを飲んでも改善しません。体質改善するには漢方薬が良いと聞きましたが、私に合う薬はあるでしょうか。
 
【回答者】  昌平クリニック院長 鍋谷 欣市
flower2 正しい漢方診察法を受ける
  胃を切除後、10年を経過されたとのこと、おめでとうございます。
  ご質問に合う漢方薬は、術後の体力を補い、食欲を増進させる補剤と呼ばれる十全大補湯(じゅうぜんたいほとう) か補中益気湯(ほちゅうえっきとう)のいずれかが適していると思われますが、術後で体力がない、疲れやすいなどの訴えだけではわかりません。正しい漢方の診察法は、少なくとも望聞問切という四診(望診、聞診、問診、切診)と、現代医学的な検査成績を合わせて検討し、その方の「証」というものを把握したうえで、適切な処方を決定するものです。
  望診とは目で診る診察です。胃切除後には、鉄欠乏性貧血がよく起こるので、皮膚、爪、舌などをチェックします。聞診は、息のにおい、声、咳の状態などを診ます。問診は胃切除後の食事量、疲れやすさ、風邪の引きやすさ、便通、睡眠などあらゆる自覚症状を問います。切診は脈の状態を診る脈診と、腹部の筋肉の緊張状態、しこり、どうきなどを手で触れて診る腹診があります。体力がない状態を虚証(体力のある人は実証)といいますが、虚証のときは腹部大動脈の拍動(ドキンドキンという音)がへその周りで感じられます。ご質問者も音が感じられるのではないでしょうか。また、手足の冷えもあると推定されます。

flower2 十全大補湯か補中益気湯
  四診の結果を診なければわかりませんが、ご質問者はおそらく虚証と察せられます。虚証の方には人参、黄耆、地黄などを含み、虚のエネルギーを補う補剤を処方します。補剤はいくつかありますが、人参と黄耆の入った参耆剤が多く、十全大補湯補中益気湯はその代表といわれる物です。両方とも10種類の生薬が含まれていますが、その中の5種類は共通した成分です。
  十全大補湯は、気虚(倦怠感があり元気がない)と血虚(貧血と同じ症状)の薬とされ、免疫力の低下を伴うような体力の低下、疲労倦怠感、食欲不振、貧血、寝汗、皮膚乾燥などを認める場合に適します。補中益気湯は気虚の薬とされ、前述より軽い体力の低下、疲労倦怠感、食欲不振、寝汗、息切れ、どうき、口の中に白い生つばがたまるなどの症状を認める場合に適します。この2つのどちらかが良いでしょう。ほかにも六君子湯(りっくんしとう)、人参湯(にんじんとう)などがあります。

flower2 体質改善は気長な努力で
  体質には身体的性質と精神的性質の両方が含まれ、さらに先天的体質と後天的体質に分けられます。ご質問者は、手術による後天的マイナスの体質でしょう。しかし、術後、体力がなく海外旅行をあきらめていた患者さんが、1〜2年の漢方薬の服用後、今は元気に海外旅行を楽しんでおられる例や、貝原益軒の「養生訓」にみる長寿例もあります。どうか努力して体質を改善してください。
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