アルファ・クラブ掲載記事

以下はALPHA CLUB 321号(3/'09)【患者の疑問 そこが知りたい!】に掲載された記事です

flower1 坐骨神経痛を漢方薬で治すことができますか 
男性 (58歳)
  胃を全摘後10年です。尾てい骨から、左足の太ももの裏側を通り足首まで痛みがあり、坐骨神経痛と診断されました。痛み止めの薬を飲むと一時的に治まるのですが、冷えると痛みます。慢性的な痛みには漢方薬が良いと聞きましたが、漢方薬で改善できるのでしょうか。教えてください。
 
【回答者】  昌平クリニック院長 鍋谷 欣市
flower2 坐骨神経痛とは
  坐骨神経は、脊髄の第九胸椎から第二腰椎の間にある腰仙髄というところから出ている神経が集まって形成された、人体の中でも最大の末梢神経です。臀部から足先までの広い範囲の知覚神経を支配しています。この神経の支配領域、つまり、神経の枝に沿って痛みを感じる症状を、坐骨神経痛と呼びます。原因としては、椎間板ヘルニア、変形性腰椎症、脊髄すべり症などから起こることが多く、これらの原因を除く対策が第一です。しかし、原因の明らかでない場合もあります。冷え性で血液循環が悪くなると、坐骨神経痛を起こす場合も少なくないのです。

flower2 坐骨神経痛と冷え性
  漢方では、気、血、水の調和をはかることが治療の原則とされていますが、坐骨神経痛には、特に血と水の流れを調和し、冷えを改善する薬が用いられます。対象となる患者の状態(漢方では証という)を把握し、適合する薬を選ぶことが必要です。
  私のクリニックでは、問診、触診などの一般診察のほか、瞬間皮膚温度計を用いて手指や足のかかとまでにいたる全身の温度を測定し、どのような冷え性かを分類しています。全般に体力のやや低下した人(虚証)が坐骨神経痛に悩まされています。

flower2 処方される主な漢方薬の種類
  ●当帰四逆加呉茱萸生姜湯 (とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
   懐炉湯と呼ばれる当帰四逆湯に呉茱萸と生姜を加え、体を温める作用を増強した薬方です。特に腰から下肢が冷えて痛む坐骨神経痛によく効き、冷え性の体質改善薬の代表です。
  ●苓姜朮甘湯 (りょうきょうじゅつかんとう)
   特に体が冷えて重く感じ、昔から水中に座っているようなとか、腰に五千銭を帯びているように非常に重い感じなどと表現され、冷えて頻尿が多い坐骨神経痛の方に用います。
  ●五積散 (ごしゃくさん)
   体中の気、血、水、寒、食の五つの停滞を改善するといわれ、特に頭はのぼせるが足は冷える、という症状を持つ坐骨神経痛の方に効きます。
  ●疎経活血湯 (そけいかっけつとう)
   体が冷えて、むくみ(水毒)やうっ血(お血)などがある坐骨神経痛の方に用いますが、特に夜間に痛みがある場合によく効きます。
  ●芍薬甘草湯 (しゃくやくかんぞうとう)
   こむら返りなどの筋肉の痙攣を柔らげる作用があり、即効性で頓服にも用いられます。
  このほか、八味地黄丸(はちみじおうがん)牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などがあります。特に高齢で、頻尿、夜間尿、口渇がある場合の坐骨神経痛の方に用いられます。
  患者さんの中には半年から1年ほど服用を続けているうちに体質が改善され、いつの間にか冷えと痛みがとれたという例も少なくありません。ご質問者も、一度、ご自分の冷え症状に合った漢方薬を試されてみてはいかがでしょう。

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