アルファ・クラブ掲載記事

以下はALPHA CLUB 347号(5/'11)【患者の疑問 そこが知りたい!】に掲載された記事です

flower1 繰り返す下痢と便秘を漢方薬で改善したい 
女性 (58歳)
  胃切除後2年です。食事量は少ないですが、食べるたびに下痢をします。4〜5日、下痢が止まると今度は便秘になり、便が硬くて排便時に苦労します。下剤を飲むと腹痛がひどく、下痢も止まりません。漢方薬は体に優しく、便もスムーズに出ると聞きました。私に合う薬はあるのでしょうか。
 
【回答者】  昌平クリニック院長 鍋谷 欣市
flower2 体力の型に適した漢方薬を処方
  胃を切除した後に起こる下痢と便秘の繰り返しは、胃が小さくなったために生じる胃の消化液分泌の変化や、さらに胃腸の消化吸収力の低下により起こると考えられます。漢方薬は身体に優しいといわれますが、一つの漢方薬を構成する数種類の生薬は、お互いの協調作用により効果を高め、また一方では副作用を減らすという配合になっています。
  漢方薬を投与する際には目で診る望診、息・声・咳などの状態を診る聞診、便通・睡眠・体力などの自覚症状を聞く問診、脈や腹部の状態を診る切診の「四診」を行い、患者のあらゆる身体的症状を把握し、「証」という概念で体力の型を分類します。体力の充実した型は実証、低下した型は虚証、中間の型は中間証と分類され、それぞれの型に適した作用の漢方薬を選択して投与します。
  ご質問者は胃を切除後、2年たちますが、いまだに食事量は少なく、食べるたびに下痢を起こされています。実際に身長、体重、脈、舌、腹などを診察していませんが、体力は中間証から虚証と判断されるので、準じた処方を考えてみましょう。

flower2 下痢の際の主な漢方薬
五苓散(ゴレイサン)――沢瀉(タクシャ)猪苓(チョレイ)が主薬で茯苓(ブクリョウ)白朮(ビャクジュツ)桂枝(ケイシ)が加わる。水分の巡りを改善する薬で、中間証から実証、虚証まで幅広く用いられる。口渇があり、尿の少ない人の下痢に良い。
半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)――半夏(ハンゲ)が主薬で人参(ニンジン)ゴン(オウゴン)黄連(オウレン)なども加わる。中間証の人の下痢で、みぞおちのつかえ感、悪心、嘔吐、腹鳴がある人に良い。
人参湯(ニンジントウ)――人参が主薬。血色が悪く、冷え性でみぞおちのつかえ感がある虚証の人の下痢に良い。
桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)――人参湯桂枝が加わった薬で頭痛、頭重がある人の下痢に良い。
真武湯(シンブトウ)――茯苓附子(ブシ)が主薬で芍薬(シャクヤク)白朮などが加わる。虚証でけんたい感、手足の冷え、めまいなどがある人の水様性下痢に良い。

flower2 便秘の際の主な漢方薬
桂枝加芍薬大黄湯ケイシカシャクヤクダイオウトウ――芍薬桂枝大棗(タイソウ)甘草(カンゾウ)などに大黄が加わる。中間証で腹満、腹痛のある人の便秘に良い。
大黄甘草湯(ダイオウカンゾウトウ)――主薬の大黄は腸のけいれんを緩め、中間証で常習性便秘の人に広く用いる。
麻子仁丸(マシニンガン)――麻子仁が主薬。中間証で硬いコロコロ便の便秘に良い。
■潤腸湯(ジュンチョウトウ)――地黄(ジオウ)が主薬で当帰(トウキ)麻子仁ゴンなどが加わる。体力が低下した虚証の人の便秘や、高齢者などで皮膚がかさかさし、兎糞状のコロコロ便の人に良い。

  まず下痢に人参湯真武湯を服用し、口渇があれば五苓散を、嘔気があれば半夏瀉心湯も試してください。どちらも、ひどい便秘にはなりませんが、便秘のときは潤腸湯から大黄甘草湯へと試してみてください。

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