アルファ・クラブ掲載記事

以下は、ALPHA CLUB 364号(10/'2012)【後遺症対策・温故知新 Dr.コメント・ダイジェスト
掲載された記事です

flower1 後遺症への工夫と「漢方薬」(1)
■腹部膨満感
  胃手術後の腹部の膨満感は、腸の癒着、あるいは腸の運動機能の低下などで起こりますが、なかなか厄介な後遺症です。
  「散歩」は、足を丈夫にするだけでなく、手も振りますし、目や耳で周囲に気配りをするなど、全身運動になります。当然、腸も動きますので、膨満感にはもってこいの対策です。
  「おなか擦り」は昔から按腹とも呼ばれている素晴らしい工夫です。へその周りにはお血(血の滞り、ふる血ともいう)のツボがあり、温かい手で擦ると腸のほうに刺激が伝わり、腸の動きも良くなって膨満感が取れるものです。何事も経験の中には真理があるものです。
  膨満感に効く漢方薬の一つに、「大建中湯(だいけんちゅうとう)」があります。

■腹痛
  胃手術後の腹痛に共通する原因は、とにかく胃がないか、胃の大きさが3分の2から4分の1に小さくなっている点です。ここに普通の食事量を入れたのでは、残った胃袋に強い圧力が加わって、当然、痛みが出るはずです。残胃は、年数を経ても拡張するものではありません。
  1日6〜7回の「分割食」にしてよく噛むことは対策の基本です。
  「ヨガ」は全身の体力、免疫力をつけ、残った胃や腸の働きも高めますので、消化、吸収が良くなります。
  「おなかマッサージ」も刺激を与えて胃腸運動を整えます。消化には牛乳より乳酸菌食品のヨーグルトのほうが良いです。
  腹痛のときに役立つ漢方薬には、「小建中湯(しょうけんちゅうとう)」や「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」があります。また、食事や生活の簡単な日記をつけることをお勧めします。後遺症対策に必ず役立ちます。

■腸閉塞
  胃手術後の後遺症の中で、特に厄介なのが腸閉塞です。天災のように突然激しい腹痛が起こって、腸内のガスが出なくなるのです。多くは、小腸癒着による単純性腸閉塞と呼ばれるものです。
  やはり、食べ過ぎ、早食いなど、食事のとり方の注意が第一です。このほか、心身の過労、冷え性による場合が多いものです。
  ちなみに腸閉塞のときには、腹壁の温度は低くなっているのです。そこで「大建中湯(だいけんちゅうとう)」を投与しますと、30分くらいで血流が改善され、温度が上昇して腸が動き出すのです。したがって、腸の保温も良いことです。
繰り返し腸閉塞を起こす方は、腸管の痙れんを抑える薬(商品名ブスコパン錠)を携行して、すぐ服用するのも一法ですが、主治医の診察を受けるようにお勧めします。

■食欲不振
  胃手術後の食欲不振は、胃そのものの働きが低下して起こりますが、気力、気分も大いに関係しています。「口と体を動かすこと」「心の余裕」は、食欲不振を改善する原則といえましょう。何事にも原則と応用があるもので、応用は人によって異なる工夫です。
  私は胃手術後でも、好物を食べることを勧めます。お酒も少量であれば、たいていは大丈夫です。
このほか、食欲は五感に関係深く、料理が見た目に美しく、香りが良く、歯触り、味も良く、さらに会話があれば最高です。
  食欲不振を改善する漢方薬には、「六君子湯(りっくんしとう)」「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」などがあり、それぞれに適応があります。野菜が不足しがちなときには、カゴメの野菜ジュース「オールベジ」なども、手軽に野菜の栄養がとれる優れものです。

■便秘
  便秘は、便に含まれる水分が乏しく、排便量が少なく、排便回数も少ない状態をいいます。胃腸手術後の便秘では、腸の癒着、狭窄、腫瘍による圧迫など、重大な病変が隠れていることがありますので、時々は検査をすることが必要です。対策には生活様式の改革や、薬もありますが、自分に適したものを選ぶことです。
  漢方薬の用語で、実証の人(病毒に対抗する体力が強い)の便は太く長く、虚証の人(病毒に対抗する体力が弱い)の便は小さくコロコロ便であるとされ、実証の便秘には大黄芒硝、虚症には地黄、人参、当帰の入った薬を用います。「大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)」 はどちらにも用いられる幅広い薬の一つです。
  歩くことは健康の基本で、ビールも便秘に良いです。「カスピ海ヨーグルト」もお勧めです。

(鍋谷欣市先生、会報259〜262、265号バックナンバーより)

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