アルファ・クラブ掲載記事

以下は、ALPHA CLUB 384号(6/'2014)【ヘルス春秋に掲載された記事です

ひまわり 漢方薬で夏を乗り切る
  昌平クリニック院長 鍋谷 欣市

  最初に漢方薬を使うときの最も基本的な方針を述べます。漢方では、薬を処方する患者の体質、体調を含めた症状(漢方では証という)を厳しく検討し、その証にしたがって処方を決めます。いわゆる随証治療です。西洋医学でも個人の症状を詳しく検査しますが、漢方における望診、聞診、問診、切診(触診)に比べれば、簡素化されています。
  証は、実証と虚証に大別され、実証は体力が充実した頑健型を表し、虚証は体力が低下した虚弱型を表します。この中間に位置するのが、間証と呼ばれています。証は固定されたものではなく、個人の疾病、不摂生によっても容易に変動し、好転あるいは悪化するものです。

flower2 夏と漢方薬

  夏を迎えての漢方薬の使い方は、まず汗をいかに取り扱うかです。汗の量、汗のかき方によって桂枝(クスノキ科の樹皮)の入った処方をいろいろ工夫するのです。桂枝湯(ケイシトウ)は、体力が低下していて汗をかく人に効く薬で、夏かぜにかかったといっても汗をかかない人には投薬できません。汗をかかない体力がある人には葛根湯(カッコントウ)を投与します。桂枝湯は虚証で、葛根湯は実証です。汗をかく虚証の人は、冷たい飲み物よりも温かい日本茶、酢の物を食べ、なま物はあまりとらないのが良いとされています。
  次は口渇で水を飲みたがる証です。これは実証で、五苓散(ゴレイサン)、猪苓湯(チョレイトウ)などを投与します。似たような症状で口燥という、口は乾くが水はあまり飲みたくない人には虚証の柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)を投与します。
  めまい、立ちくらみも夏場によく見られますが、この症状には苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)が良く、回転性のめまいには、真武湯(シンブトウ)が効きます。


flower2 胃切除者と漢方薬
  胃の手術には、胃の部分切除と胃の全摘出手術があり、胃癌の部位、進行程度などによってその切除範囲が違い、再建術式も異なってきます。いずれにしても術前のような胃の分泌機能や消化機能は著しく低下していると考えられます。
  幸いに術後、代用されている腸機能の作用によって、術前にさほど劣らない消化機能を発揮している方もおられます。しかし、術後の機能低下で障害を残している方がおられ、体験が本誌にも掲載されているのが現状です。
  術後の対策としては、第一に残胃が小さいか、またはないのですから、小食、多回食、消化の良い食事など、胃の手術直後から管理が必要です。これも人によって個人差がありますので、他山の石として経験を学び、自分の術後の胃に適した食養を見出すことが好ましいことです。
  その補助的薬物療法の一つとして漢方薬があり、よく経験を重ねて自分に適した処方を見出すことが良いでしょう。体力の低下した人では、六君子湯(リックンシトウ)真武湯啓脾湯(ケイヒトウ)などがお勧めです。よく噛んで食べると、薬なしで対応の方もおられます。

■ 症状と処方される主な漢方薬
症 状
漢 方 薬
足冷え 当帰四逆加呉茱萸生姜湯 (トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)
汗かき 桂枝湯 (ケイシトウ)
頭痛 呉茱萸湯 (ゴシュユトウ)
喘息 小青竜湯 (ショウセイリュウトウ)
口渇 五苓散 (ゴレイサン)
回転性めまい 真武湯 (シンブトウ)
便秘 大黄甘草湯 (ダイオウカンゾウトウ)
腹痛 大建中湯 (ダイケンチュウトウ)
立ちくらみ 苓桂朮甘湯 (リョウケイジュツカントウ)
黄疸

蒿湯 (インチンコウトウ)


【Q&A】
Q 市販の漢方薬と病院で処方される漢方薬の違いはありますか?
 病院処方薬は、原則として保険適用の漢方薬で約150処方あります。これ以外にも、症状による適応が若干拡大されつつあります。

Q 漢方薬に副作用はありますか?
 どんな薬でも、副作用があり、漢方薬も例外ではありません。漢方薬も患者さんの病態によって、適合しない場合は副作用が発生します。そのような症状が出たらすぐに医師に相談してください。

Q 西洋薬と漢方薬を同時に服用しても大丈夫でしょうか?
 服用する西洋薬と漢方薬の種類によっては、副作用などが起こる可能性がありますので、あらかじめ、医師に服用中の薬をチェックしてもらってください。服用時間をずらすことも検討すると良いでしょう。

Q 漢方薬との食べ合わせが忌避される食物は?
 食物アレルギーを起こしやすい食物は、動物性では鶏卵、エビ、カニ、サバなどが、植物性ではソバ、ナス、タケノコ、山草などがあります。初期の症状には嘔気、嘔吐があり、その後、腹痛、下痢をきたし、吸収されて蕁麻疹、喘息、片頭痛、浮腫などを起こす場合があるので注意が必要です。



→ 「胃を切除した人の後遺症対策」トップへ

Copyright(C)昌平クリニック.記事の無断転載を禁じます