アルファ・クラブ掲載記事

以下はALPHA CLUB 396号(6/'15)【患者の疑問 そこが知りたい!】に掲載された記事です

ひまわり 手足がつりますが、漢方薬で改善できますか?
  【回答者】 昌平クリニック院長 鍋谷 欣市

  胃を全摘してから5年たちました。食事量は少なく、水分もあまりとれません。最近、箸が持てないほど手指がつったり、昼夜を問わず、ふくらはぎにこむら返りが起こったりします。胃を全摘したことと関係があるのでしょうか。こむら返りに漢方薬が効くと聞きましたが、改善できますか。

(女性・65歳)

flower2 胃切除術と胃全摘術
  胃切除術と胃全摘術の違いは、前者は胃の一部が残り、後者は胃の全部が切除されて、全く残らない手術法です。癌の進行度により、胃を少し残しても癌を切除できる場合は、胃切除術を選びますが、癌の進行度が高く、胃を残したのでは完全に癌を切除できないと思われる場合は、全摘術を選びます。その際、所属するリンパ節に癌の転移が疑われる限り、そこをすべて摘出するように努めます。もしも、肝臓、脾臓、膵臓にも転移があれば、そこも切除します。
  さて、胃の本来の役目は、口から嚥下した食物をしばらくとどめて、胃液と混ぜ合わせて粥状にし、これを十二指腸に送ることです。しかし、その胃が全摘出された場合は、空腸(小腸)に食物の通路がつくられますので、それまで胃内から分泌されていた塩酸、ペプシンなどの消化液の働きが全くなくなり、無胃性症候群の状態になります。

flower2 無胃性症候群の症状とは

  胃を全摘することで、糖代謝障害による後期ダンピング症状、たん白代謝障害による低たん白血症と浮腫、脂肪代謝障害による下痢、鉄欠乏による低色素性貧血、ビタミンB12欠乏による悪性貧血など、無胃性症候群が見られます。これらへの対応には現代医学的治療も行ないますが、漢方治療では、可能な限り、直接、患者さんを四診(望診、聞診、問診、切診)して、処方を決定することを原則としています。

  ご質問には、胃全摘後の再建法の記載がありませんが、胃の代用となる空腸で形成手術をされているかと思います。また、日々の食事や水分摂取量もわかりませんが、再発もなく、5年経過したことはすばらしいことです。
  しかし、最近、手足のつりがひどくなり、こむら返りで悩まされているとのこと。水分や食事量など栄養バランスが悪いことも原因の一つかと思います。現在の服用中の薬を拝見しなければ処方薬を決定できませんが、漢方薬としては、筋肉のけいれん性疼痛には、芍薬甘草湯(シャクヤク

漢方薬

カンゾウトウ)、または芍薬甘草附子湯(シャクヤクカンゾウブシトウ)をお勧めします。また、食事量や水分の不足には、補中益気湯(ホチュウエッキトウ)十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)が良いでしょう。なお、腹診でみぞおちに動悸を感じる場合は、補中益気湯お勧めします。



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