漢方・掲載記事

以下は健康雑誌「安心」2007年12月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。

clover 緑内障の治療に有効と眼科医がすすめる漢方薬 「苓桂朮甘湯」と「五苓散」

昌平クリニック医師  菅原 万喜
体内の水の流れをよくするのが目標
  緑内障はなんらかの原因で視神経が障害され、視野が狭くなっていく病気で、主な原因は眼圧にあるといわれています。
  目の中には、房水という液体が流れています。目の形は房水の圧力によって保たれていて、これを眼圧と呼びます。
  房水が多くなると目が圧迫されて、眼圧が上がります。すると、視神経が圧迫されて痛み、視野が狭くなるのです。
  従来、正常眼圧は10〜21mmHgとされ、それを超えると緑内障が疑われていました。しかし、最近では、眼圧がこの範囲でも緑内障になる、正常眼圧緑内障のほうが多いと考えられています。数値はどうであれ、その人にとって眼圧が高すぎれば、緑内障が発生するおそれがあるのです。
  急激に眼圧が上がる急性緑内障では、目の痛みや吐き気などの自覚症状があります。しかし、正常眼圧緑内障をはじめとする慢性の緑内障では、自覚症状はほとんどありません。
  視野が狭くなった、欠けたと自覚できるのは、かなり症状が進んでからです。ですから、40歳を過ぎたら、定期的に眼科検診を受けるとよいでしょう。
  治療には、主に目薬を使います。房水の産生量を抑え、流れをよくすることによって眼圧を下げ、その状態を維持していくのです。
  目薬だけでは不十分と考えられた場合、内服薬やレーザー治療、手術という方法もあります。いずれにしても、眼圧をきちんとコントロールできれば、失明に至るリスクをへらすことができます。

進行が止まりめまいも解消
  東洋医学でも、緑内障は体内の水の流れが悪くなることによって起こる病気(水毒)だと考えられています。
  治療には体内の水はけをよくする薬(利水剤)を使います。漢方薬には血液をよくする働きがあり、その結果、視神経を保護し、丈夫にする効果も期待できます。
  緑内障で最もよく使われる漢方薬は「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」です。首から上の水分の滞りに効果的で、耳鳴りやめまい、頭重感、頭痛のある人におすすめの薬です。
  お小水が遠いなど、全身の水はけが悪い人には、「五苓散(ごれいさん)」もいいでしょう。
  五苓散は、私も子供のころ、薬剤師の母によく飲ませてもらいました。私はむくみやすく、お小水が遠く、ささいなことで下痢をしやすい、水はけの悪い体質だったのです。
  では、患者さんの例をご紹介しましょう。
  ある40歳代の、女性の場合は、眼圧は正常でしたが、健診で緑内障とわかりました。目薬で治療していたのですが、副作用を心配して漢方治療を希望されたのです。
  私は、緑内障の治療に目薬は必要不可欠だと考えています。目薬の使用と並行して、漢方薬の使用をすすめました。
  彼女は、暗点という見えない部分は出ていたものの、まだ視野の欠損が自覚できるほど、病気は進んでいませんでした。
  お話を伺うと、ときどき朝起きたときにめまいがしたり、ふらついたりすることがあるそうです。これは東洋医学的に見て、首から上の水分の滞りを疑わせる症状でした。
  そこで、苓桂朮甘湯を処方したところ、めまいやふらつきがなくなって体調がよくなったのです。眼圧は10mmHg台前半を維持し、現在も緑内障の進行は抑えられています。
  また、ある60歳代の女性は緑内障になり、目薬で眼圧をコントロールしていました。しかし、別の病気になってステロイド剤を飲み始めたら、顔や体がむくみ、眼圧も上がってしまったのです。
  この方には五苓散を処方しました。すると、むくみが取れて眼圧も下がったのです。
  その後、病気の回復とともにステロイド剤の使用をへらし、再び目薬だけで眼圧が下がるようになりました。漢方薬は、こんな使い方もできます。
  なお、緑内障の人は、下を向いた状態での作業を長く続けないようにしましょう。下向きの姿勢で水晶体が下がると、房水の出口が圧迫されて、流れにくくなるからです。
  そのほか、眼球を押さない、刺激物を控える、目が疲れたら冷やすより温める。日常生活では、以上のことに気をつけるといいでしょう。



漢方治療は、その時のその人に合った薬を微調整するオーダーメイド処方です。
当クリニックでは、経験豊富な漢方医があなたに合った治療を提案します。お気軽にご相談ください。



Copyright(C)昌平クリニック.記事の無断転載を禁じます