漢方掲載記事−昌平クリニック院長・鍋谷欣市−

以下は健康雑誌「安心」2008年3月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。

clover パーキンソン病のふるえを取り病気の進行を抑える漢方の特効薬「小承気湯」

clover パーキンソン病患者は徐々にふえている
  発病の原因が不明で、決定的な治療法がない―― 一般的に、そんな病気を難病といいます。パーキンソン病もその一つです。
 自覚症状としては、手足のふるえ(振戦)、筋肉のこわばり(固縮)、動作の緩慢化(寡動)、歩幅が狭くなる(小刻み歩行)、歩き出したら止まらない(突進現象)などがあります。
  そのほか、無表情になったり、話し方が単調になったりすることもありますが、症状の現れ方は病気の進行度によって異なります(別表参照)。

  日本が長寿社会になり、高齢者がふえたため、パーキンソン病患者の割合はふえています。パーキンソン病患者は、中脳の黒質と呼ばれる部分にある神経細胞が変性・脱落して、神経間の情報伝達物質であるドーパミンが少なくなってしまいます。
  神経細胞の変性や脱落がなぜ起こるのかは、まだ明らかにされていません。原因としては、遺伝、環境、ストレスなどがあげられていま
パーキンソン病の重症度分類
 
症  状
体の片側だけの振戦、固縮
II
体の両側の振戦、固縮、寡動、無動
III
不安定な方向転換、突進現象
IV
起立や歩行など、日常動作の著しい低下
介助による車イス移動、または寝たきり
す。
  もう一つ、パーキンソン病がやっかいなのは、血液検査、CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像)などの検査をしても、明確な変化が見てとれないことです。
  それでも、パーキンソン病の疑いがあれば、検査をすることが大切です。パーキンソン病によく似た症状を示す、パーキンソン症候群と呼ばれる病気がいくつか存在するので、それらと混同しないためです。
  パーキンソン病は、現代医学では不足したドーパミンと似た働きをする物質を補う、薬物療法を中心に治療が行われています。これは効果がある一方、長期間薬を服用すると副作用が出たり、薬の効きが悪くなったりすることもあります。
  そこで、薬の使用を最小限にとどめ、長く円滑な日常生活を送るために、漢方薬の併用をおすすめしたいのです。

clover めまいも消えてふるえも取れた

  漢方では、パーキンソン病には厚朴、大黄、枳実をあわせた小承気湯(しょうじょうきとう)を使います。厚朴はホオノキの樹皮で、けいれんを抑え、筋肉の緊張をゆるめる作用があります。
  私の経験からいうと、患者さんの症状や体質によって厚朴の量を3〜5倍にふやすと効きがよいようです。
  筋肉の緊張と弛緩を調整する芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)や、神経の興奮を抑え、不安・不眠、ひきつけなどを除く抑肝散(よくかんさん)を、組み合わせて使っても効果的です。
  では、漢方治療が功を奏している例をご紹介しましょう。
  Yさん(男性)は69歳のときに、すり足で歩くようになって、神経内科でパーキンソン病と診断されました。病院の薬(西洋薬)の使用を最小限にしたいため、漢方薬との併用を希望されたのです。
  拝見すると、おなかの筋肉、皮膚ともに緊張してつっぱり感が強く、薬を飲んでいても手足に軽いふるえがあります。血圧は基準値の範囲内でした。
  そこで、厚朴を通常の4倍にふやした小承気湯芍薬甘草湯を飲んでもらったら、1ヵ月でおなかの緊張が取れ、2ヵ月後にはふるえが取れました。
  夜中にトイレに起きるので困るというので、途中で抑肝散を追加。それで調子がよくなり、1年間は西洋薬を半分にへらして、病気の進行を止めることに成功していました。
  2年目には西洋薬を元の量に戻しましたが、それからも漢方薬を続け、3年間近く良好な状態を維持。その後、帯状疱疹になったのをきっかけに、左足の運びが悪くなりましたが、4年目のいまも西洋薬の量は発症時のままで、病気の進行もステージIIで踏みとどまっています。
  Oさん(女性)は56歳のときにパーキンソン病になりました。西洋薬を飲んでも手足のふるえが止まらず、食欲不振、便秘などがあって、漢方治療を併用することになりました。
  この方は血圧が高めで、めまいもあります。そこで、小承気湯芍薬甘草湯のほか、体力を補う漢方薬もあわせて飲んでもらうと、2ヵ月後にはめまいが消え、ふるえが取れました。
  食欲が回復し、体力がついて体を動かすのがおっくうではないそうです。便秘も解消し、それから2年近く、病状の大きな進行は抑えられています。
  パーキンソン病は確かに難病ですが、最新の医学と長い経験に裏打ちされた漢方療法とを駆使すれば、病気の進行を最小限にくい止めることが可能です。生活の質を高めるためにも、漢方薬を治療にとり入れることをおすすめします。

line
clover 漢方治療はその時のその人に合った薬を微調整するオーダーメイド処方です。
  必ず専門の医師にご相談ください。

このページのトップへ
Copyright(C)昌平クリニック. 記事の無断転載を禁じます