漢方掲載記事 『安心』 漢方で病気を治す

以下は、健康雑誌『安心』2011年11月号(マキノ出版)に掲載された記事です。

clover 連載第1回 パーキンソン病
昌平クリニック院長  鍋谷 欣市

clover パーキンソン病は中高年に起こりやすい
  医学が飛躍的に進歩を遂げた現代でも、依然として発病の原因が不明で、治療が困難な病気があります。いわゆる難病と呼ばれる病気で、パーキンソン病もその一つです。
  症状としては、まず安静時の手足のふるえ(振戦)と、筋肉のこわばり(固縮)が挙げられます。これは体の片側に起こりやすいという特徴があります。
  そのほか、動作が緩慢になる(無動)、小刻みに歩く、歩きだしたら止まらない(突進現象)、無表情になる、しゃべらなくなるなどもあります。これらの症状は病気の進行度によって違ってきます。(別表参照)。

  パーキンソン病は、中高年に起こりやすい病気です。パーキンソン病になる人は最近増えていて、1000人に1人ともいわれますが、それは、日本人が長寿になったからとも考えられます。
  パーキンソン病になると、中脳の黒質と呼ばれる部分の神経細胞が変性・脱落して、神経間の情報伝達物質であるドーパミンの分泌が減ります。
パーキンソン病の重症度分類
 
症  状
体の片側だけの振戦、固縮
II
体の両側の振戦、固縮、無動
III
不安定な方向転換、突進現象
IV
起立や歩行など、日常動作の著しい低下
介助による車イス移動、または寝たきり

  神経細胞の変性・脱落がなぜ起こるのかは、まだ解明されていませんが、遺伝や環境、ストレスなどが関係しているのではないかと考えられています。
  パーキンソン病が疑われた場合、血液検査、CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像)などの検査を行います。脳炎などパーキンソン病に似た症状を示す、いくつかの病気と区別するためです。それらの病気はパーキンソン症候群と呼ばれています。
  検査の結果、パーキンソン病ということになれば、現代医学では薬物療法を中心に治療を行います。不足したドーパミンと働きの似た物質を補う方法が主流ですが、近年ではドーパミンの分泌を促す方法も注目されています。
  これらの薬には効果がある一方で、パーキンソン病は短期間で治る病気ではないため、薬を長期間服用することになりがちです。そうなると、薬の効きが悪くなることもあります。
  それを防いで、1日でも長く普通の生活を送るために、私は漢方薬を併用することをお勧めします。
  漢方ではパーキンソン病に、厚朴(こうぼく)、大黄(だいおう)、枳実(きじつ)からなる小承気湯(しょうじょうきとう)を使います。ホオノキの樹皮である厚朴には、ふるえやけいれんを抑える効果があり、これが、よい働きをするのです。
  経験からいえば、患者さんの症状や体質によって厚朴の量を3〜5倍に増やすと効きがいいようです。
  神経の興奮を抑え、不眠を除く抑肝散(よくかんさん)や、筋肉の緊張と弛緩を調整する芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)を組み合わせて使っても効果的です。

clover ふるえやこわばりが改善しはしが持てる!
  漢方治療が効果を発揮している例をご紹介しましょう。
  Yさん(男性)は69歳のとき、歩くときにすり足になることから神経内科を受診し、パーキンソン病と診断されました。薬を飲んでいても手足のふるえが取れず、漢方薬との併用を希望されたのです。
  拝見すると、おなかの筋肉の緊張が強く、突っ張る感じがあります。病気の進行度はステージIIでした。
  そこで、厚朴を通常の4倍に増やした小承気湯芍薬甘草湯を飲んでもらったところ、1ヵ月後におなかの緊張が取れ、2ヵ月後には、しつこいふるえが取れたのです。
  途中、夜中トイレに起きるという訴えがあったので、抑肝散を追加。トイレの悩みも解消して、最初の1年間は薬を半分に減らして、病気の進行を食い止めていたのです。
  2年目以降は薬を元の量に戻しましたが、漢方薬を併用し続けて、3年ほど良好な状態を維持。帯状疱疹になったことがきっかけで、左足の運びが少し悪くなったものの、7年目になる今も薬の量を増やすことなく、病気の進行を抑えることに成功しています。
  Kさん(女性)は右手に力が入らず、はしも持てなくなって、54歳のときに総合病院を受診。パーキンソン病と診断されて薬を飲み始めました。
  その半年後、漢方薬を併用することで病気の進行を遅らせようと、当院を訪れたのです。動作が緩慢で、右手にふるえやこわばりがあり、ステージIIの状態でした。
  小柄で、みずおちの動悸が強く、足に冷えがあります。生活の都合上、エキス剤を希望されたので、小承気湯の主材料である厚朴抑肝散、芍薬甘草湯を飲んでもらいました。
  すると、2ヵ月で手の動きがよくなり、はしや鉛筆が持てるようになりました。3ヵ月後にはみずおちの動悸が改善し、包丁が使えるようになったのです。
  4ヵ月後には冷えが取れ、1年4ヵ月経つ今も薬の量を増やすことなく、病気の進行を抑えています。
  漢方ではパーキンソン病に限らず、舌や脈、おなかの状態などによって、同じ病気でも薬の処方が変わってきます。専門家に相談し、自分に合った漢方薬を選ぶことが、速やかな改善につながる第一歩といえるでしょう。


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