漢方掲載記事 『安心』 漢方で病気を治す

以下は、健康雑誌『安心』2012年1月号(マキノ出版)に掲載された記事です。

clover 連載第3回 膀胱炎
昌平クリニック院長  鍋谷 欣市

clover 膀胱炎の治りが早く再発の防止にも役立つ
  寒くなるとかかりやすい病気の一つに、膀胱炎があります。膀胱炎には細菌感染によって起こる細菌性のものと、そうでない非細菌性のものとがあり、多く見受けられるのは前者です。
  細菌性の膀胱炎は、「膀胱のカゼ」といわれることもあるほど、発症することの多い病気です。膀胱炎にかかると、尿の回数が増える(頻尿)、排尿時に痛みや不快感がある、尿がスッキリと出きらない感じ(残尿感)がする、尿が濁るなどの症状が表れます。
  膀胱には、細菌に対する抵抗力や自浄機能があるので、普通は多少の菌が入ってきても問題はありません。
  しかし、冷えや過労などによって細菌に対する抵抗力が落ちたり、長時間、排尿を我慢したりすることによって自浄機能が低下したときに、大量の菌が入ってくると耐えきれず膀胱炎になってしまうのです。
  体の構造上、女性のほうがかかりやすい傾向がありますが、男性でもかかる人は少なくないので油断はできません。
  「膀胱炎かな?」と思ったら、検査を受けることが大切。検査で細菌性か、非細菌性かを見分け、細菌性であれば原因となっている菌の種類を特定します。今は、どの薬が、どの菌に効くかがハッキリしていますから、それによって治療の効率が高まります。
  抗生物質(細菌を殺し、増殖を抑える薬)を飲めば数日で症状が治まりますが、そこで薬をやめると菌の勢いが盛り返すこともありますので、指示された期間、きちんと薬を飲み続けることが大切です。
  非細菌性の膀胱炎は、前立腺肥大(膀胱の下にある前立腺が肥大して尿の出が悪くなる病気)、尿路結石、糖尿病など、ほかになんらかの病気があるために起こります。こちらは症状を抑えつつ、原因となる病気を治療する必要があります。
  漢方のいいところは、いずれの膀胱炎にも効果を発揮することです。細菌性の膀胱炎では、抗生物質と漢方薬を併用すると治りが早くなる上、再発の防止にも役立ちます。膀胱炎はくり返しかかる人が多いので、この点は注目に値するでしょう。
  また、抗生物質は何度も使ううちに、だんだんと効かなくなってくる場合があります。しかし、漢方薬は何度用いても、変わらぬ効果を発揮するのが頼もしいところです。非細菌性の膀胱炎では、原因となる病気の治療を終えるまでの間、症状を和らげるのに有効です。
  膀胱炎の治療で最も多く使われる漢方薬は、猪苓湯(ちょれいとう)です。下腹部の熱を冷まして尿の出をよくする働きがあり、口の渇きや、出血も止めてくれます。頻尿、排尿痛、残尿感、血尿などのある人に最適で、尿路結石の人にも使います。
  体力がない人には、体を温める作用もある五淋散(ごりんさん)が適しています。胃腸が弱く、神経質で冷えの強い人には、清心蓮子飲(せいしんれんしいん)がお勧めです。
  膀胱炎と紛らわしい、冷えや神経的な原因によって起こる頻尿を改善する当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)四物湯(しもつとう)真武湯(しんぶとう)といった漢方薬もあります。
  では、漢方薬が膀胱炎によく効いた例をご紹介します。

clover 症状がピタリと治まり再発しなくなった!
  Aさん(女性)が42歳で当院にいらしたのは、2度目の膀胱炎にかかったときのことでした。その2年前、初めて膀胱炎にかかったときは、抗生物質を飲んで治療しましたが、薬による胃もたれや不快感があって、薬を飲むのがつらかったそうです。
  2度目の膀胱炎のときの症状ですが、排尿回数は1日に10回以上あり、夜もトイレに起きていました。1回に出る尿の量が少なく、残尿感があるとのことだったのです。体が冷える、めまいがするという訴えもありました。
  そこで、猪苓湯に加えて、冷えとめまいを取る真武湯、体内の水分の巡りをよくする苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)を飲んでもらったところ、1ヵ月で頻尿が、3ヵ月後にはほかの症状も解消し、それ以降、再発していません。
  Eさん(女性)は、何度も膀胱炎をくり返した揚げ句、最初に処方された抗生物質の効き目が悪くなり、別の強い薬を服用するようになりました。それで心配になって、70歳のときに漢方治療を希望されたのです。
  血圧は高めで冷えが強く、舌のふちが歯痕のためにギザギザになるなど、水の巡りの悪さが見て取れました。五淋散を飲んでもらうと、3ヵ月で膀胱炎の症状がピタリと治まりました。
  特筆すべきは、膀胱炎の再発がなくなったことです。「それがいちばんうれしい。私には漢方薬が劇的に効いたんですね」と喜んでいただけました。
  ほかにも、膀胱ガンの手術後、血尿が出る膀胱炎に悩まされるようになった男性が、猪苓湯芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)でよくなった例など、症状や体質別に薬を使い分けることで、漢方は大きな力になり得ます。
  膀胱炎になりやすい人は、体、特に足腰を冷やさないようにしましょう。冷えは体内の血液や水分の巡りを悪くし、抵抗力を低下させます。足の指を動かしたり、もんだり、入浴で全身を温めたりするなど、血行の促進に努めるといいでしょう。
  細菌性の膀胱炎では、トイレが近くなることを嫌って、水分摂取を控えるのは逆効果です。むしろ、たっぷり水を飲んで尿を出し、膀胱の細菌を洗い流すことをお勧めします。


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