漢方掲載記事 『安心』 漢方で病気を治す

以下は、健康雑誌『安心』2012年10月号(マキノ出版)に掲載された記事です。

clover 連載第12回 乾癬
昌平クリニック院長  鍋谷 欣市

clover 副作用なしで皮膚をいい状態に保つ
  乾癬(尋常性乾癬)は、顔やひざ、ひじなどの皮膚に、赤い盛り上がり(紅斑)ができる病気です。多くの場合、紅斑の境界線ははっきりしていますが、なかには、多少ぼんやりしている場合もあります。
  紅斑は、両ひざや両ひじなどの外側に左右対称にできることが多く、かゆみを伴うこともあります。アトピー性皮膚炎が、ひざやひじなどの屈曲部内側にできやすいのに対し、乾癬は外側にできやすいのも特徴です。
  紅斑部の皮膚は、やがて固くなります(角化)。そして、次のような症状が、混在するようになります。
●紅斑部の皮膚が白っぽいかさぶたのようなもの(鱗屑)でおおわれる
●皮膚がはがれてポロポロ落ちる(落屑)
●赤みやかゆみが強くなる(掻痒)
●皮膚が盛り上がり、厚くなる(肥厚、浸潤)
  若者から高齢者まで、年齢にかかわらず発症し、統計上は、男性の患者数のほうが多いのですが、私たちのクリニックでは女性の患者さんのほうをより多く診ています。
  発症の原因は、免疫(病気に抵抗する働き)に関係しているとも、遺伝的なものだともいわれていますが、はっきりとはわかっていません。治療は、ステロイドやビタミンDの軟膏を使ったり、免疫抑制剤などを飲んだりするほか、紫外線を当てる光線療法も行われます。
  感染症ではないので人にうつることはないものの、治りにくく、長期にわたっての治療が必要になるやっかいな病気です。外見に症状が現れるため、身体的なつらさもさることながら、精神的な苦痛が非常に大きい病気であるともいえます。
  漢方でも、残念ながら、飲み始めてから短期間で改善させることは難しいといえます。
  しかし、長期間飲んでも副作用の出ない漢方薬を使って症状を改善し、皮膚をいい状態に保つことは可能です。
  漢方の観点から見ると、紅斑部分はたいてい熱を持ち、血液の流れが滞っています(瘀血)。そこで、熱を冷ます清熱剤と、血液の巡りをよくする駆瘀血剤を使います。
  患部がカサカサと乾燥し、 落屑があるなら、温清飲(うんせいいん)が適しています。温清飲は清熱剤で、鎮静・消炎効果のある黄連解毒湯(おうれんげどくとう)と、血液が不足した状態を補う補血効果のある四物湯(しもつとう)を組み合わせた漢方薬です。症状によっては、黄連解毒湯のみ、四物湯のみと、分けて処方することもあります。
  紅斑部分のかゆみが強く、かいて患部がジクジクしているようなら、消風散(しょうふうさん)白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)が適しています。
  駆瘀血剤は、体力が落ちているなら当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や当帰飲子(とうきいんし)がよく、体力があれば桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)桃核承気湯(とうかくじょうきとう)が適します。太った人には防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)もいいでしょう。外用として、紫雲膏(しうんこう)という漢方の軟膏を患部に塗ることもあります。
  ただ、同じように見える症状でも効く漢方薬が違ったり、季節によって症状が変化します。そこが乾癬の難しいところです。素人判断で漢方薬を購入して飲むのではなく、専門家に相談することをお勧めします。

clover 紅斑がほぼ消失し再発していない!
  漢方薬で乾癬がよくなった例にNさんという女性がいます。18歳のときから大学病院で、ステロイド(副腎皮質ホルモン)軟膏による治療を受けていました。ステロイドの長期使用に不安を抱き、漢方治療を始めたのは31歳のときです。当初は首と両方のひじ、ひざなどに、かゆみを伴う紅斑がクッキリと現れていました。

  冷え症なのに、患部は熱を持ってカサカサしています。そこで、温清飲桂枝茯苓丸紫雲膏で治療を始めました。すると約1ヵ月で紅斑全体の赤みが取れ、かゆみが軽快したのです。首の紅斑は小さくなり、数も減りました。ひじやひざなどの紅斑から盛り上がりが消え、色がさらに目立たなくなり、かゆみがすっかり消えたのは、さらに3ヵ月後のことです。
  その後も、症状や体調の変化によって漢方薬を変えながら、10ヵ月後には、ひざにやや赤みを残すだけに。とはいえ、冬になると多少

調子が悪くなることがあり、今後も経過を見て行く必要があります。
  もう一例も女性でAさん。22歳のとき前頭部(額)に鱗屑を伴う紅斑が出現し、徐々に全身に広がりました。病院で乾癬と診断され、ステロイドとビタミンDの軟膏で治療を開始したものの、思うようによくならず、26歳のときに当院に来たのです。初診時は、特に背中の紅斑の状態が悪く、強いかゆみがあって、瘀血を示す症状も見られました。
  そこで、温清飲荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)で治療を開始すると、2ヵ月で赤みとかゆみが軽快。5ヵ月後には、顔と太ももの一部に少し赤みが残るだけで、全身の紅斑が、ほぼ消失したのです。その後6年たつ今も、再発していません。
  乾癬は、よくなっても再発することがあり、完治という言葉を使いにくい病気です。それでも漢方治療では、完治に近い状態まで導くことができます。


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