漢方掲載記事 『安心』 漢方で病気を治す

以下は、健康雑誌『安心』2012年3月号(マキノ出版)に掲載された記事です。

clover 連載第5回 白内障
昌平クリニック院長  鍋谷 欣市

clover 進行を止めた例や視力の改善例は多い
  白内障は、眼の水晶体という、カメラでいえばレンズに当たる部分が、白く濁る病気です。加齢によって起こることが多いのですが、アトピー性皮膚炎、結膜炎、糖尿病といった病気や外傷、遺伝などによって起こることもあります。
  いずれにしても、西洋医学では、いったん濁った水晶体が透明に戻ることはないとされています。そのため、治療といえば手術となり、「メガネなどで矯正しても、得られる視力が0.4以下になったら」というのが手術を勧める一つの基準になっています。
  白内障の手術は濁った水晶体を取り除き、代わりに眼内レンズを入れる方法が一般的です。手術の方法も眼内レンズの品質も、近年、飛躍的に進歩しています。極めて安全性が高い手術だといえるので、むやみに嫌がる必要はないと思います。
  しかし一方で、目の手術に怖さを感じる人も、やはり多いようです。また、手術したわりに、思ったほど見えるようにならなかったという経験者の感想を耳にして、不安をかき立てられることもあるでしょう。
  そこで、漢方治療にスポットが当たってきます。西洋医学の世界では、薬では治らないとされている白内障ですが、東洋医学の世界には、漢方薬で白内障を治療してきた数々の実績があります。
  特に、水晶体が周辺部から濁ってくる、加齢による白内障に対しては有効性が高く、進行を止めた例や視力が改善した例が数多くあるのです。
  このタイプの白内障に効果を発揮する漢方薬の代表は、八味丸(はちみがん)[八味地黄丸はちみじおうがん)]です。これは老化の防止に役立つ薬で、体内の血液や水分の流れをよくして細胞の活性化を図ることで、ズバリ、原因である加齢に働きかけます。
  胃腸の弱い人には、八味丸を構成する8種類の生薬(漢方薬の原材料となる動植物、鉱物などの天然物)の中から刺激の強い2種類を抜いた六味丸(ろくみがん)を、糖尿病の人には、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)を用いることもあります。

clover 手術を受けずに済むケースもある
  改善例を紹介しましょう。
  58歳のSさん(女性)は、白内障のため、両目とも視力が0.3まで低下。眼科で手術を勧められました。しかし、手術に抵抗があり、漢方治療を試すことにしたのです。
  おなかは、フニャフニャと柔らかく、力がない感じです。これは漢方で小腹不仁(しょうふくふじん)や臍下不仁(さいかふじん)と呼ぶ症状で、Sさんの白内障に八味丸が適していることの決め手となります。八味丸を飲んでもらったところ、1年後には右目が0.4、左目が0.5に、2年後には両目とも0.6に回復。3年たった現在も、その視力を維持しています。
  白内障では、半年から1年、漢方薬を飲んで効果が出てくる人が多いのですが、3ヵ月で、右目が0.3から0.7に、左目が0.2から0.3になった66歳の女性など、効き目が早く表れる人もいます。ちなみに、専門家が処方する体質に合った漢方薬なら、長期間、服用を続けても問題はありません。
  72歳のMさん(女性)は、白内障と診断されて3年後、右目が0.6、左目が0.4になって八味丸を飲み始めました。漢方治療に踏み切ったのは、さらなる視力の低下を防いで、手術を避けたかったからです。
  Mさんには慢性胃炎と手足の冷えもあったので、四逆散(しぎゃくさん)真武湯(しんぶとう)も一緒に飲んでもらいました。すると、ほどなく胃炎と冷えが解消。1年後、右目の視力はそのままでしたが、左目の視力は0.5に上がりました。
  四逆散真武湯の投薬は途中で終了。八味丸のみ現在も服用を続けて、視力の維持と白内障の進行を抑えています。この調子なら、希望どおり手術をしないで済みそうです。ただし、八味丸が白内障の進行を抑える有効率は、これまでの発表成績から見て、大体7割前後というのが実情です。すべての白内障に有効というわけにはいきません。そのときは、手術を受けることをお勧めします。
  さて、Mさんには胃炎や冷えの対策に、別に漢方薬を処方しましたが、八味丸だけを飲んでいて、眼のかすみや、しょぼつき、夜間頻尿や腰痛、ひざ痛などが解消した例もあります。
  なぜ、そうしたことが起こるのかといえば、八味丸は気血水(体内を循環する一種の生命エネルギーと血液と水分)の巡りをよくして、体を元気にする薬だからです。漢方では、体内に気血水という3つの流れがあり、体の不調や病気の背景には、それらの流れの滞りや乱れがあるとされます。そこで、その流れを整えることが治療の基本になるのです。
  八味丸には、気に働きかける桂枝(けいし)、血に働きかける地黄(じおう)、牡丹皮(ぼたんぴ)、山茱萸(さんしゅゆ)、附子(ぶし)、水に働きかける茯苓(ぶくりょう)、沢瀉(たくしゃ)のほか、滋養・強壮効果のある山薬(さんやく)が配合されていて、加齢によって衰えた体力をバランスよく、かつ強力に底上げしてくれます。
  その結果、老化による各種の不調が改善されます。八味丸が白内障に効果を発揮するのは、そういうわけなのです。


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