漢方掲載記事 『安心』 漢方で病気を治す

以下は、健康雑誌『安心』2012年4月号(マキノ出版)に掲載された記事です。

clover 連載第6回 潰瘍性大腸炎
昌平クリニック院長  鍋谷 欣市

clover 約7割の患者に効果を発揮!
  医学が飛躍的な進歩を遂げた現代でも、依然として治りにくく、再発しやすい、難病といわれる病気が存在します。潰瘍性大腸炎もその一つです。
  潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜が炎症を起こして、はがれ、傷つき、出血する病気です。症状が軽度から中等度になると、1日5回以上の下痢や粘血便(血液や粘液の混じった軟便)があり、頻繁にトイレに行かなくてはならないため、生活に支障を来します。重度になれば、発熱や腹痛のほか、腸管内にガスがたまって巨大結腸症という状態になったり、腸管穿孔(孔があくこと)が起こったりして、緊急手術になることもあります。
  自己免疫疾患(本来、異物を排除し、自己を守るための免疫系に異常が生じ、自分の体の正常な組織を攻撃することによって起こる病気の総称)の一つではないか、という説が有力ですが、はっきりした発症の原因はまだわかっていません。
  免疫力(病気に対する抵抗力)を上げる、逆に抑制するなどの治療が行われ、サラゾピリン、ペンタサ、アサユール、ステロイドなど、いい薬もたくさんあります。しかし、よく効く薬には深刻な副作用があるなど「痛し、かゆし」というところも。そこで、私は昔から「この病気を漢方でなんとかできないか」と考えてきたのです。
  そして、たどり着いたのが、桃黄湯(とうおうとう)です。桃黄湯は古くから伝わる桃花湯(とうかとう)黄土湯(おうどとう)という、下痢や粘血便の改善に効果のある二つの漢方薬を組み合わせて作った私独自の処方です。もう10年以上前に考案した漢方薬ですが、これが当初の予想を超えてよく効き、7割近くの患者さんに効果を発揮したのです。
  ただ、2週間から2ヵ月で下痢や粘血便などの症状が治まる人がいる一方で、3~6ヵ月かかる人もいて、もっと即効性が欲しいと思いました。そこで、目を付けたのが青黛(せいたい)という生薬(漢方薬の原材料となる動植物、鉱物などの天然物)です。キツネノゴマ科の馬藍などの植物からなる、青色色素のインディゴを含む粉末で、傷をふさぎ、黄色ブドウ球菌を抑制する効果があります。
「赤チン」といわれた赤いヨードチンキもそうですが、色素には意外な効果があるのです。

clover 出血や下痢が1日で止まった例もある
  この読みが当たり、桃黄湯青黛を合わせて飲んでもらうと、ほとんどの患者さんは、1~2週間で出血が止まり、下痢の症状も改善しました。なかには1日で止まった人もいました。
  潰瘍性大腸炎の治療の第1段階は止血、第2段階は下痢止めですから、なかなかの手ごたえです。青黛は苦いので、カプセルに詰めて飲んでもらい、ある程度よくなってきたら、少しずつ量を減らしていきます。

  これが5年ほど前のことで、現在は、桃黄湯プラス青黛の二つ重ねで治療を行っています。これまでに400人近くの患者さんが私たちのクリニックを訪れ、つらい下痢や粘血便から早期に解放されて、不自由のない日常生活を送っています。「漢方薬を飲むのをやめて5年以上たっても、再発していません」という人もたくさんいます。
  難病ですから「完治した」という表現は控えておきますが、ほぼ治ったという意味の「略治した」と言ってもいいと思っています。では、症例を紹介しましょう。
  Sさんは37歳の男性。ドロドロの粘血便が1日5~6回あ
イラスト・漢方薬で潰瘍性大腸炎が改善
り、潰瘍性大腸炎と診断されました。内視鏡写真を見ると、大腸内は炎症で真っ赤にただれています。桃黄湯青黛を飲んでもらうと、1週間目から便に混じる血の量が減り始め、便に形がついて排便回数が減ってきました。完全に出血が止まったのは1ヵ月後、排便の回数は1日2回に減少。便の状態も正常になったのです。
  体調もよく、体重も増えたというので、桃黄湯の服用はそのままに、青黛は1日3回から1回に減薬。6ヵ月後に撮影した内視鏡写真では、腸粘膜がきれいなピンク色に戻っているのを確認できたのです。もう少し様子を見て、薬の量をさらに減らしていく予定です。
  Kさんは51歳の男性。潰瘍性大腸炎になって、消化器科で治療中だが、1日5~6回の血便が止まらないとのことでした。こちらも桃黄湯青黛を飲んでもらうと、やはり1週間で便に混じる血が減少。便の状態が改善し、排便回数も減りました。出血が完全に止まり、1日1~2回の排便になったのは1ヵ月後。2ヵ月で便の状態も正常に戻りました。
  薬の量を少しずつ減らし、1年後に投薬終了の予定だったのですが、本人が薬を気に入って少量を飲み続けています。桃黄湯は、長期間服用しても副作用が見られないので、「薬なしでも大丈夫」という自信がつくまで見守るつもりです。
  人によっては桃黄湯のみでも著効があります。1日20回の血便に悩み、入院するほどだった18歳(当時)の青年は、桃黄湯でよくなり、1年後に投薬を完了。26歳になる今も再発せず、健康そのものでバリバリ働いています。この例など、略治以上ではないでしょうか。
  近年、潰瘍性大腸炎の患者数はかなり増えています。軽症、中等症はもちろん、重症になっても漢方薬は効果を発揮します。あきらめないで、ぜひ漢方治療の門をたたいてください。

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