漢方掲載記事 『安心』 漢方で病気を治す

以下は、健康雑誌『安心』2012年7月号(マキノ出版)に掲載された記事です。

clover 連載第9回 口臭
昌平クリニック院長  鍋谷 欣市

clover 漢方ではまず舌に注目する
  歯磨きをしているにもかかわらず、口臭が気になる。清潔志向の高まりとともに、最近そんな人が増えています。
  本来、生き物である人間の吐く息には、においがあって当然です。それが不衛生な状態や病的な状態から引き起こされる異常なものでない限り、息がにおうのは自然なことだといえるでしょう。
  とはいえ、本当に口から不快なにおいがしていたら、人から嫌がられて困ります。また、においのように感覚でとらえるものは、人によって感じ方がまちまちなのも、やっかいな点です。ある人にとっては気にならないにおいを、ある人は不快に感じることもあるので、判断が難しいところもあるからです。
  そんなことを踏まえた上で、口臭の原因を挙げると、
(1)歯磨きなどによる口内清掃が不十分なため起こる口腔内の不衛生や、虫歯、歯周病、口内
  炎など口腔内の病気
(2)逆流性食道炎、食道ガン、慢性胃炎など、食道や胃腸の病気
(3)蓄膿症など鼻の病気
(4)慢性咽頭炎や肺膿瘍など肺や気管の病気
(5)糖尿病、白血病など全身の病気
(6)タバコ、酒、香辛料、タマネギ、ニラ、ニンニクなど、においの強い嗜好品や食品の摂取
  などになります。実際には、口臭の原因の9割は、(1)の口腔内の不衛生および病気と、(2)の胃腸の病気によるものです。
  まずは、虫歯や歯周病があれば治療し、専門家の指導のもと、歯磨きを行うなど、口内の清潔を保ちましょう。
  胃腸の病気をはじめ、口臭の原因となる病気があるなら、速やかに治療します。そして、強いにおいのする嗜好品や食品の摂取を控えれば、口臭は解消するはずです。
  しかし、においのような感覚的な問題には、心理的な要因がからんでくることもあります。その代表的なものが「自己臭症」で、実際にはない口臭を、あると思い込む病気です。
  そんな簡単なようで難しい口臭の問題を扱うとき、漢方ではまず舌に注目します。舌診(ぜつしん)というのですが、舌の色や形状、舌苔(舌の表面に付着した白っぽい苔のようなもの)の厚さなど、いろんな変化を見るのです。一般に、口臭がある人は舌苔が厚い傾向があります。
  舌苔は口臭の一因であり、これを除去することも勧められていますが、ブラッシングなどで、舌苔をこすり落とせばいいのかといえば、そうではありません。無理にこすり落とせば、かえって厚くなりやすくなります。また、舌苔がまだら状になることもあり、それが原因で、さらに口臭が強まる場合もあるのです。
  やはり体調を整えて、舌苔がつかないようにしていくことが望ましいでしょう。
  次に、全身の体調に注目し、おなかや脈を見ながら、病気が原因の口臭なのかどうかを調べていきます。近距離で問診すれば、実際に病的な口臭があるかどうかの判断もつきます。
  病気があれば、それを治して口臭の解消へと導きます。急性胃カタルなど、胃腸病が原因のときは半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、みずおちに突っ張り感があるときは小柴胡湯(しょうさいことう)、胃の辺りからポチャポチャという音(振水音)がするようなら六君子湯(りっくんしとう)といったところが、よく使われる漢方薬です。  

clover 口臭を気にし過ぎる人にも漢方が効く!
  では、実際の例を見ていきましょう。
  Kさんは24歳の女性。4年ほど前から口の中に酸っぱい水が上がってきて、歯磨きをしても、口の中から苦さとにおいが消えないということでした。舌は縁がギザギザ(歯痕)で、みずおちに振水音がします。胃の調子の悪さが原因の口臭と見て六君子湯桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を出しました。
  すると、2週間で胃の具合、口臭ともかなり軽減。1ヵ月後には、口臭の悩みから解放されたのです。
  Aさんは20歳の男性。3年ほど悩んだ後に、大学病院の口腔科から紹介されてやってきました。舌には厚く舌苔がこびりつき、みずおちには動悸が感じられます。また、話を聞いてみると、どうも周囲の人との折り合いがよくないようで、心因性のものもあると見ました。
  そこで、半夏瀉心湯と、大黄を除いた柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) を飲んでもらったところ、1ヵ月程度で胃の具合がよくなり、舌苔も取れて、口臭がしなくなったのです。しかし、本人は「まだにおう」というので、 柴胡加竜骨牡蠣湯のみ、1年半ほど続けてもらいました。
  その結果、晴れて悩みから解放されて、人づきあいを控えることもなくなり、大学進学を果たしたのです。
  自分にはわからないのが口臭の困ったところですが、気にし過ぎて体調を悪くし、それが口臭を招くようなところもあります。そんな「気」を晴らす薬があるのも、漢方のよいところといえます。一人で悩まずに、一度、専門医に相談してみてはいかがでしょうか。


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