漢方掲載記事

以下は、健康雑誌『安心』2013年3月号(マキノ出版)に掲載された記事です。

clover おなかを建て直す漢方薬の原料でもある
  サンショウはガス腹やオナラによく効く
昌平クリニック院長  鍋谷 欣市

clover サンショウが主剤の漢方薬が日米で大注目
  サンショウというとかば焼きの薬味くらいしか思い浮かばない人もいるかもしれません。
  しかし、「小粒でもピリリと辛い」という言葉どおり、サンショウは見かけに似合わず、小粒ですが私たちの健康に役立つ貴重な力を秘めており、漢方では古くから活用されているのです。
  サンショウは、ミカン科の植物の果実で、漢方では山椒(さんしょう)とか蜀椒(しょくしょう)、川椒(せんしょう)とも呼ばれ、今から2000年ほど前、中国・後漢の時代に編纂された医学書『金匱要略』にも紹介されています。
  薬性は熱、薬味は辛、帰経(作用する部位)は脾・胃・肺・腎。主に次の3つの症状に用いられます。
●冷えを解消して、体を温める。
●腸内にいる回虫などの虫を駆除する。
●胃腸の動きをよくして、ガス腹や便秘を改善する。
  このサンショウの薬効や特性をメインとして処方された漢方薬の代表が、最近、日本だけではなく、アメリカでも注目を集めている大建中湯(だいけんちゅうとう)です。
  注目されている理由は、冷え腹、ガス腹で腹痛があるといった症状だけでなく、過敏性腸症候群や潰瘍性大腸炎、クローン病といった原因不明のおなかのトラブルにまで、大建中湯がとてもよく効くからです。
  ちなみに、大建中湯の「中」はおなか(胃腸)のこと。その名のとおり、「大いにおなかを建て直す薬」なのです。
  大建中湯はサンショウのほかに人参(にんじん)、乾姜(かんきょう)、膠飴(こうい)の4種類の生薬(漢方薬の原材料となる天然物)から処方されています。
  人参は新陳代謝を促す作用があり、胃腸の消化吸収を活発にします。
  乾姜は、干したヒネショウガのこと。発汗作用に優れ、冷えや嘔吐などの胃腸機能低下などに効果があります。
  膠飴は、いわゆる水あめのこと。麦芽糖から作られ、息切れなどの症状の改善や滋養強壮に働きます。

  大建中湯は、サンショウの腸管刺激作用を中心に、これらの生薬が協調して働くことで、腸内のガスの吸収を促進したり、停滞している腸の蠕動運動(腸が内容物を肛門のほうへ送る動き)を活発にします。その結果、おなかがゴロゴロしたり、ガス腹や便秘、オナラが止まらないといった腸の異常症状を改善していくのです。 生薬(漢方薬の原材料となる天然物)

 特に、腸の手術後に現われがちな腸閉塞などの異常症状の治療には顕著な効果があることが、私どもの研究でも明らかになっています。
  大建中湯がよく効くのは、「虚証(漢方独特の診断法の一つ)」といって、普段から体力が弱い人です。下腹がガスで張っているわりにはフニャフニャと柔らかい。こんな人には性別にかかわらず、大建中湯が確実に効果を発揮します。
 私ども漢方医は、この症状を「ヘビの頭足あるがごとし」と言っています。外から見たり、手で触れたりすると、柔らかい皮膚の下で腸がヘビのようにクネクネ動いているように見えるからです。総じて中年以降の女性に多い特徴ですが、時には若い女性や男性にも見られることもあります。
  逆に、「実証(虚症と同じように漢方独特の診断法の一つ)」といって、普段から元気で体力もあり、下腹の皮膚も硬いような人が、腸の調子が悪いからといって大建中湯を用いても、あまり芳しい効果は望めません。

clover サンショウはおなかを温め腸管を刺激する
  薬が必要なほどではないが、ガス腹や膨満感、オナラが気になる、あるいは慢性的に腸が弱いという人には、普段の食生活の中でサンショウを意識して取ることをお勧めします。
  サンショウの温中作用(おなかを温める)や腸管刺激作用によって、腸管の働きを常に活発に保つ効果が期待できます。
  今まで、サンショウを使うのは年に何度かウナギを食べるときぐらいだったという人は、他の料理にもスパイスとして日常的に活用してはいかがでしょうか。ただし、取り過ぎは逆効果になることもあるので、注意が必要です。
  最近は、本家である日本を尻目に、ヨーロッパではサンショウが調味料として大人気とか。一流のレストランでも、さまざまな形で料理に使われているそうです。
  確かに、あのサンショウ独特の風味を、ウナギのかば焼きだけのものにしておくのはもったいない話です。
  家庭でもサンショウをもっと工夫して活用し、料理にはハーモニーを、体には健康を招くようにしたらいかがでしょうか。


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