漢方掲載記事−昌平クリニック院長・鍋谷欣市−

以下は健康雑誌「安心」1996年6月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。

   【東洋医学ガイド2】
もみじ 藤原道長も悩んだといわれる糖尿病対策には東洋医学療法が最適

もみじ 藤原道長は糖尿病だった
  近年、非常に患者さんのふえている成人病に、糖尿病があります。
  私たちは血液中に含まれるブドウ糖(血糖)をエネルギー源として生命を維持し、活動していますが、これを利用するためには、インスリンというホルモンの助けが必要です。
  このインスリンが必要なだけ分泌されない、または分泌されても作用が弱かったりして、慢性的なインスリン不足に陥ってしまいます。インスリンが不足すると、ブドウ糖はエネルギーとして十分活用されず、血液中に多く残って、慢性の高血糖の状態になるのが糖尿病です。
  高血糖の状態が続くと、血液中のブドウ糖が尿に含まれて排泄されるようになります。糖尿病という病名は、こうして尿に糖が出ることからつけられています。
  糖尿病には、なりやすい体質というものがあります。これに後天的な原因が加わって発症に至るのですが、糖尿病になりやすい体質は、親から子へと遺伝します。
  たとえば、平安時代の藤原氏がいちばん勢いのあったときに、権勢を誇った藤原道長は、数々の文献をあたってみると、どうも糖尿病だったらしいと推測できます。藤原氏は一族全部が糖尿病だった形跡さえあります。
  そういった体質に加え、時の権力者として栄耀栄華を極めていたでしょうから、美食・過食も想像されます。半面、常に権力争いに身をさらし、強いストレスを受けていたとも考えられます。
  まさに、糖尿病になる条件をすべて満たしていたわけです。そして現代の日本をみると、食べ物は豊富で、体を動かす機会はへり、ストレスがふえ、道長のように特権階級に属していなくても生活の中に糖尿病の原因があふれています。
  しかし、糖尿病は、高血糖の初期の段階でしっかり自己管理すれば、症状もなく、別段恐ろしい病気ではありません。食事のカロリーをとりすぎないようにして、適度に運動して肥満を防ぎ、医師の指導を受けていれば、支障なく日常生活を送れます。
  もう少し病気が進んで、のどの渇きや体のだるさ、水が飲みたくなる、頻尿、多尿などの症状が現れてきても、まだ食事と運動で病状のコントロールができます。

合併症に気をつければ安心
  糖尿病で恐ろしいのは、毛細血管や細小血管という細い血管がもろくなることから起こる合併症です。目の網膜(カメラにたとえればフィルムの部分)の血管がおかされれば失明するし、肝臓の血管がおかされれば尿毒症(排出されるべき老廃物が体内に蓄積されて起こる病気)になって生死にかかわってしまいます。
  また、神経系統の変調、動脈硬化、それによる狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などにもかかりやすくなります。たとえば、昭和55年、サミット参加を目前にして心筋梗塞で命を落とした大平正芳元首相も、若いころから糖尿病をわずらっていました。
  おそらく、その職業柄と立場上、糖尿病治療の根幹をなす食事療法の徹底は不可能だったに違いありません。ストレスの少ない規則正しい生活を送ることもできなかったでしょう。
  そして、一国の首相でなくても、現代に生きる私たちには、完全に食事療法を守るのはむずかしくなっています。つき合いでごちそうを食べざるをえない場合も多々あります。
  また、運動する時間をとったり、ストレスを受けないで暮らすことも実際には困難なことです。そこで、食事や運動療法の不足分を補う最適な方法として、東洋医学療法、その中でも漢方薬を用いることをおすすめします。
  いちばんポピュラーな処方は、八味丸(はちみがん)牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)です。体を温めて血行をよくし、尿の排泄をスムーズにさせながら、体力をつけ、全身の健康状態を改善していくのです。循環障害の改善や、糖尿病の人にありがちな手足の皮膚のカサつきを解消するのにも役立ちます。
  八味丸は、精力が落ちてきたときにも有効な処方なので、単に糖尿病の健康管理のみならず、中高年の方の若返り効果をもたらすおまけもつきます。
  また、体力があり、顔がほてるタイプの人には防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)大柴胡湯(だいさいことう)などの処方もあります。ほかにも手足のしびれの有無などで処方が変わってきますから、東洋医学の知識のある医師に相談して処方を受けてください。
  糖尿病は一度発病してしまうと、たいていは生涯病気とつき合うことになります。ということは、薬の服用も長期間にわたることになりますが、漢方薬の場合、正しく使えば副作用がないのも魅力です。
  先にも述べたように、糖尿病そのものは、決して恐ろしい病気ではありません。高カロリー、高脂肪の食事を控え、バランスよく栄養をとって、健康管理に努めれば、元気に天寿を全うすることができるのです。
  そして、自分の体の状態をきちんと自覚して節制に努め、さらに健康管理の一環として漢方薬をうまく役立てれば、恐ろしい合併症の危険を避けることができます。


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もみじ 漢方治療はその時のその人に合った薬を微調整するオーダーメイド処方です。
   必ず専門の医師にご相談ください。

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