漢方掲載記事−昌平クリニック院長・鍋谷欣市−

以下は健康雑誌「安心」1996年8月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。

   【東洋医学ガイド4】
免疫力をグンと高め<C型肝炎>を着実に改善する東洋医学療法

インターフェロンの有効率は約30%
  肝炎とは、肝臓がいろいろな原因で炎症を起こした状態のことをいいます。ほとんどがウイルス感染によって起こり、A型、B型、C型といった種類があります。A型肝炎とB型肝炎のウイルスは比較的早く発見されましたが、C型肝炎のウイルスが発見されたのは、わずか8年前、1988年のことです。
  A型肝炎は、急性肝炎を起こしたのち治癒します。B型肝炎は、予防医療が発達し、現在、キャリアー(発病しないウイルス保有者)は減少しています。
  ところがC型肝炎は、ウイルスの発見が遅れ、予防措置をとるのも遅れたため、キャリアーが増加しています。また、C型肝炎ウイルスに感染後、20〜30年で肝硬変(肝臓の細胞がこわされて肝臓全体が硬くなる病気)に、30〜40年で肝ガンになるといわれていますので、今後いっそう、予防と治療が重要視される病気の一つといえるでしょう。
  C型肝炎ウイルスは、ほとんどが輸血や血液製剤など、血液を介して感染します。そして、2週間から6ヵ月くらいの潜伏期をへて、急性肝炎を起こします。自覚症状は、倦怠感、食欲不振、発熱など比較的軽いものです。黄疸も少なく、カゼと間違えることもあります。
  そのあと、40%くらいの人が自然治癒し、残りは慢性肝炎に移行します。そして、多くは肝機能の低下と回復をくり返しつつ、徐々に悪化し、肝硬変、肝ガンへと進展するのです。
  C型肝炎の治療に、現在、最も効果的といわれているのはインターフェロン療法です。しかし残念ながら、インターフェロンが効果を発揮するのは、C型肝炎の約30%に対してだけです。インターフェロンが有効かどうかは、遺伝子の型で見分けることができ、インターフェロンに抵抗するのがI群、有効なのがII群と分類されています。
  また、インターフェロンには強い副作用があります。発熱、悪寒、全身倦怠、関節痛、筋肉痛、脱毛などです。抑うつ(気分が沈むこと)など神経症状が出たり、白血球数や血小板数が減少したりすることもあります。


肝機能を高める柴胡剤の威力

  さて、東洋医学では、長い経験に基づく治療効果の実績からみて、肝臓の病気には、免疫力(体内に病原体が進入しても発病を抑える力)を高め、肝機能を改善する効果のある柴胡剤を処方しています。よく知られている小柴胡湯(しょうさいことう)のほか、患者さんの体質、体調、症状により、大柴胡湯(だいさいことう)柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などを処方する場合もあります。
ウイルスの種類
感染経路
病 態
A型
飲料水、生ガキなど 急性肝炎
劇症肝炎(予後良好)
B型
輸血・血液製剤、注射
や医療行為など 母児
間感染 性行為
キャリアー、急性肝炎、
慢性肝炎、肝硬変、肝ガ
ン、劇症肝炎(予後不良)
C型
輸血・血液製剤、予防
注射 医療行為など
母児感染はまれ、性行
為はきわめてまれ
キャリアー、急性肝炎、
慢性肝炎、肝硬変、肝ガ
ン、劇症肝炎(予後不良)
  なお、肝硬変の患者さんを二つのグループに分け、一方のグループにだけ小柴胡湯を服用させて、5年間経過をみたら、小柴胡湯を服用したグループには、肝ガンの発生が少なかったという報告もあります。
  ちなみに、数ヵ月前に、小柴胡湯の副作用が問題になったことをご存知の人も多いでしょう。しかし、医師が患者の体質をよく見きわめ、症状を把握しながら処方すれば、まず副作用の心配はありません。ただし、小柴胡湯とインターフェロンの併用はさけるようにしてください。
  それでは、C型肝炎で当クリニックを訪れ、よい経過をたどっている症例をご紹介しましょう。
  Hさんは41歳の男性です。3年前に、めまい、ふらつき、疲労感が激しいので大学病院へ行き、検査を受けてC型肝炎であることがわかりました。ところが、血小板が減少しているため、インターフェロンが使えないといわれたそうです。
  そこで、小柴胡湯に加え、そのときどきの症状に合わせた、いくつかの漢方薬を処方して様子を見ました。すると、肝機能を表す数値であるGOT、GPTともに100単位だったのが(基準値はともに35単位以下)、1年ほどで50〜60単位に下がり、めまいなどの症状もなくなりました。柴胡剤を飲んで3年が経過したいまでは、元気に仕事を続けています。
  率直にいって、C型肝炎は難病です。漢方薬で完治するとはいえません。しかし、全身状態を回復させ、肝機能を維持して、日常生活を送れるようにもっていくことはできるでしょう。
  あとは、規則正しい生活を心がけ、良質のたんぱく質をとり、アルコールを控えることが、C型肝炎の患者さんにとって大切な養生のポイントになります。
  そして、肝機能の推移をきちんと把握しながら、漢方薬を飲んで、肝硬変、肝ガンにならないよう、肝炎をコントロールしましょう。

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