漢方掲載記事−昌平クリニック院長・鍋谷欣市−

以下は健康雑誌「安心」1997年1月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。

   【東洋医学ガイド9】
慢性関節リウマチを免疫力を高めて根本から治す東洋医学療法

もみじ リウマチの原因は免疫の異常にある
  手足の指や、ひじ、ひざなどの関節が腫れて痛み、しだいに変形してくる病気を、慢性関節リウマチといいます。慢性関節リウマチは、病気の発生しやすい部位から、一見、関節や骨の病気のように思えますが、実は全身性炎症性の疾患です。
  男性より女性のほうに多く発症する傾向があり、加齢に伴い発症率が高くなります。日本には現在、30万人くらいのリウマチ患者がいますが、高齢化社会を迎え、さらに患者数がふえることが予測されています。
  慢性関節リウマチの原因と病気の進行に、大きく関係しているのは免疫力の異常です。免疫力とは病気に対する抵抗力のことで、ウイルスなどの異物が体内に入ってきたとき、これを排除して体を守る働きをしています。
  免疫のシステムに異常が起こり、自分の体の細胞やたんぱく質などを異物と間違えて攻撃してしまうと、自己免疫性疾患と呼ばれる病気が起こります。
  慢性関節リウマチは、根底にこの自己免疫性の疾患もあり、自分の体を痛めつけている悪者もまた自分の体であるため、治療がむずかしいのです。
  そのうえ全身性炎症性の疾患ですから、放置すると血管に変化が起こり、指が壊死(体の組織や細胞が局部的に死ぬこと)したり、心筋梗塞を起こしたりすることもあります。そうなると、生命の危険を伴うこともあるため、悪性関節リウマチと呼ばれ、厚生省により難病に指定されています。したがって、早めに発見して適切な治療を受け、病気の進行を止めることが大切です。
  慢性関節リウマチの最初の自覚症状は、朝起きたときに感じる手足のこわばりです。それに続いて、手足の指の関節が腫れる、痛む、熱を持つなどの症状が対称性(両側)で出たら、ただちに医師の診察を受けてください。病気が進むと、次は、ひじ、ひざなどの大きな関節が痛み始めます。
  慢性関節リウマチとわかったら、患部を温めて血行をよくする温熱療法やリハビリテーション(機能回復訓練)を含めた運動療法を受けながら、痛み止めや抗炎症剤を服用することになります。
  しかし現実には、完治せず再発をくり返し、徐々に症状が進行していくケースが多いため、適切な治療法の選択は、なかなか困難です。症状が進行すると、外科で関節を再建するなどの手術をしますが、慢性関節リウマチの手術は、ある時期を逃すと、うまくいかないことが多いのです。
  このことを考えても、やはり慢性関節リウマチは、早い時期に病気の進行を止めなければなりません。そこで、治療の一つとして上手に利用してもらいたいのが漢方薬です。

もみじ 痛む部位だけでなく全身の血行を促進
  東洋医学では、まず血液の循環と水分の停滞を改善することが、慢性関節リウマチの治療には大切だと考えています。これは、気(一種の生命エネルギー)・血(血液)・水(水分)の調和を図るという、漢方薬のもっとも得意な分野です。しかも痛む部位だけでなく、全身の血液と水分の流れをよくするので、全身性の病気である慢性関節リウマチに、より効果的です。
  また、東洋医学では、慢性関節リウマチの治療には免疫力を高めることが大切だと考えます。
  漢方薬には免疫力を高める働きがあります。最近では科学的にもそれが証明され、ガンの手術のあとに漢方薬を服用して、体力の回復を図るなど、西洋医学の治療現場でも役立てられています。
  同じ慢性関節リウマチであっても、個々の患者さんの体質・体調によって用いる漢方薬は異なります。体力があって胃腸が丈夫なら、鎮痛効果の高い麻黄を含む越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう) 、高齢者や体力がない人、冷えの強い人には、痛みを鎮めるとともに体を温めて血行をよくする効果のある附子を含む桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)というようにです。
  慢性関節リウマチに用いられる漢方薬には、ほかにもヨクイ仁湯(よくいにんとう)大防風湯(だいぼうふうとう)防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)桂芍知母湯(けいしゃくちもうとう)、四物湯(しもつとう)などがあり、ときにはそれらを組み合わせながら、その人の体質にあった薬を処方します。
  ただし、症状が重く病気の進行が著しく早い場合は、とりあえず西洋薬で治療する必要があります。

もみじ 5ヵ月で痛みが完全に消えた
  それでは、実際に漢方薬で慢性関節リウマチが改善した人の症例を紹介しましょう。
  68歳の女性Tさんは、10年前に慢性関節リウマチと診断され、いくつもの病院を転々としましたが、思うような効果が得られず、最後の手段として漢方薬を選び、当クリニックへ来院されたのです。
  両手と右足の指の関節の痛みを訴えてきましたが、指はすでに腫れぼったく、変形も始まっていました。おなかはフニャフニャで力のない状態です。
  そこで、桂枝加朮附湯八味地黄丸(はちみぢおうがん)を処方しました。八味地黄丸は、病歴が長いため体力が消耗していることを考慮しての処方です。
  その年の9月に飲み始めて以来、指の痛みは徐々におさまり、2ヵ月後の11月には、かなりらくになったといいます。年が明けた1月には痛みが完全になくなり、便秘も解消したと、非常に喜んでくれました。わずか5ヵ月で、10年間以上続いた痛みから解放されたのですから、それはうれしかったことでしょう。
  Tさんに限らず、慢性関節リウマチで当クリニックを訪れる人は、すっかり痛みを慢性化させてしまった人が多いのです。早めに来てくれれば、それだけ早く苦痛から解放されるのにと、いつも思います。
  前述したように、慢性関節リウマチは血液と水分のめぐりの悪いところに発生します。したがって、冷えや過労は大敵です。ふだんから適度な運動を行い、栄養バランスのよい食事をとって、常に血液と水分の循環をよくするよう心がけてください。
  高齢者で冷え性の人は、冬場に体を温める作用のある漢方薬を服用するのも、慢性関節リウマチの予防に有効です。


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もみじ 漢方治療はその時のその人に合った薬を微調整するオーダーメイド処方です。
   必ず専門の医師にご相談ください。

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