漢方掲載記事−昌平クリニック院長・鍋谷欣市−

以下は健康雑誌「安心」1997年6月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。

   【東洋医学ガイド14】
頭痛持ちの人の血と水の流れを改善し頭痛の出ない体質に変える東洋医学療法

鎮痛剤の安易な使用はさけるべき
  カゼをひいて熱が出ると、頭痛の出る人は多いでしょう。また、クモ膜化出血や脳腫瘍、高血圧などの病気がある場合も、症状として頭痛が現れます。
  しかし、なにかの病気の副産物としてではない頭痛が、くり返し発生する場合もあります。
  これが慢性頭痛です。慢性頭痛には、大きく分けて偏頭痛と緊張型(筋緊張性)頭痛の2種類がありますが、頭痛持ちといわれる人の多くは、偏頭痛に該当するようです。
  偏頭痛の種類や程度は多彩です。ズキンズキン、ガンガンといった拍動性の痛みが頭の片側に起こるものが多いようですが、頭全体や前頭部が痛むこともあります。
  痛みはたいてい突然始まり、数時間から1〜2日、ときには数日続きます。頭痛に伴って吐きけや肩こりなどの随伴症状がみられることもあります。また、、頭痛が始まる前に目の前がチカチカするなどの前兆を感じる人もいます。さらに、女性に多く見られるというのも偏頭痛の特徴です。
  一方、緊張型頭痛は、頭を圧迫されるような鈍痛が多いようです。吐きけなどの随伴症状はありませんが、首の後ろや肩の筋肉に強い緊張が見られるのが特徴です。
  どちらの頭痛も疲労や寝不足、ストレスなどが引き金となって起こることが多いようです。また、女性の場合は生理によっても誘発されます。親族に頭痛持ちがいる場合も少なくないため、体質的な要素が関係しているとも考えられますが、ハッキリとした原因はまだ解明されていません。
  また、偏頭痛と緊張型頭痛の混合型の頭痛や、季節の変わり目めや夜中に、若い男性に発症することが多い群発性頭痛もあります。
  西洋医学では、頭痛の治療には、筋肉の緊張をやわらげる薬や精神安定剤、鎮痛剤などを使います。血管が過度に拡張して起こる偏頭痛では、血管を収縮させる薬を使うこともあります。薬は頭痛がピークに達するより前に飲むほうが効果的です。
  ただし、慢性頭痛はくり返す病気です。精神安定剤などは常用の習慣がつくおそれもあるので、医師の指導のもとに服用するなら問題はありませんが、市販の鎮痛剤を安易に多用することはさけたいものです。

頭痛が発生する土壌をなくす
  それでは、東洋医学では慢性頭痛に対して、どのように対処しているのでしょうか。
  東洋医学の観点からみると、頭痛には気(生命エネルギー)の変調も関係しますが、頭痛持ちには圧倒的に冷えのある人が多いという特徴があります。これは、血(血液)のめぐりが悪いことを示しています。また、同時に水(水分)の代謝(体内での物質の変化や入れ替わり)も悪くなっています。
  つまり、血と水の流れが乱れることにより頭痛が起こるのであるから、この流れを整えてやれば解消する、というのが東洋医学の考え方です。
  また、東洋医学で用いる漢方薬の長所である、正しく用いれば副作用の心配がない、習慣性がないという点は、頭痛はもちろん、慢性の病気全般の治療に適しています。
  さらに、漢方薬は適切な処方であれば、意外と即効性があるものです。頭痛なら、飲んで20〜30分もすると痛みが取れます。そのあとも一定期間続けて飲むのは、根本的な体調の乱れを整えることにより、再発を防ぐためです。
  鎮痛剤で痛みをその場だけやり過ごしても、体の状態が変わらなければ、頭痛は再び発生します。そして、また薬にたよるというくり返しでは、頭痛から解放されることはありません。
  しかし、とどこおった血や水の流れをよくし、体力を向上させた結果、頭痛が治ったのならば、もう頭痛が発生する土壌はなくなっていますから、晴れて頭痛持ちでなくなるわけです。
  慢性頭痛によく用いられる漢方処方としては、のどが渇いて尿の量が少ない人に向く五苓散(ごれいさん) 、胃腸が弱く疲れやすい人に向く桂枝人参湯(けいしにんじんとう)、冷えが強く、胃腸虚弱で吐きけのある人に向く呉茱萸湯(ごしゅゆとう) があります。また、冷えや生理不順がある人には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、めまいのある人には半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう) が適する場合もあります。
  とはいっても、同じ慢性頭痛でも人により身体の状態はさまざまです。必ず医師の診察を受け、自分に合った漢方薬を処方してもらうことが重要なのは、いうまでもありません。

心と体の息抜きもときには必要
  ここで、漢方薬により頭痛から解放された人の例をいくつかご紹介しましょう。
  45歳の女性Aさんは、忙しい仕事を持つキャリアウーマンです。やりがいもあるということで、たいへん意欲的に仕事に取り組んでいましたが、疲れると頭がズキズキ痛くなることが悩みのタネでした。
  そのたびに、頭痛持ちだからしようがないと、市販の痛み止めを飲んでしのいでいたのですが、ここ数年、だるさや疲れのほか、動悸、めまいといった症状もひどくなってきたといって来院されました。生理不順、便秘もあり、胃腸も弱く体もやせぎみでした。
  単に頭痛持ちといっても、これだけ多くの随伴症状があれば、鎮痛剤を飲むだけでは、その場しのぎにしかならないのは当然です。Aさんには、呉茱萸湯に加えて、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう) で体力をつけ、めまいを改善するように試みました。
  その結果、2ヵ月弱で頭痛は解消し、めまいや疲れも改善しました。体調を整えるために、それからも引き続き漢方薬は飲み続けていますが、頭痛の再発はありません。
  72歳の男性Kさんも長年の頭痛持ちで、市販の痛み止めを常用していました。Kさんの頭痛は、キリキリと締めつけられるような強い痛みだということでしたが、冷えが強かったので桂枝人参湯芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう) を処方したところ、3ヵ月で頭痛が起こらなくなりました。
  このように、東洋医学の治療が慢性頭痛によい効果をおさめるケースはたくさんあります。体質だから、家系だからとあきらめないで、ぜひ東洋医学の門をたたいてみてください。
  なお、頭痛を防ぐには体を冷やさない、むくみや便秘は早めに解消するといった注意が大切です。また、疲れているときは人ごみや緊張する席に出るのをさけたほうがいいでしょう。
  また、私が診てきたところでは、頭痛持ちの人には、いろいろな面で能力も意欲もある活動的な人が多いようです。そういう人には完璧主義者も多いので、ときには気を抜く、手を抜くといった、心と体の息抜きも必要かもしれません。


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