漢方掲載記事−昌平クリニック院長・鍋谷欣市−

以下は健康雑誌「安心」1998年10月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。

   【東洋医学ガイド30】
もみじ 成人のニキビを体の内側から治し化膿した跡もきれいに消す東洋医学療法

もみじ 最近急増している成人後のニキビ
  ニキビは「青春のシンボル」などといわれるように、思春期に出やすいものです。この時期は、性ホルモンの刺激によって脂線(皮脂を分泌する器官)の働きが活発になるため、皮膚が油性に傾きやすいからです。多くは成人後、自然に治りますが、ときに「ニキビの中に顔がある」と形容されるような、重い症状を呈するケースもあります。
  こうなると自己流の手入れや手当てでは、対応がむずかしくなります。とくに、無理にニキビをつぶすと、化膿が進み、跡が残って後悔することになりかねません。早めに適切な治療を受けることが大切です。
  また、最近では、社会環境や生活様式などの変化のせいか、本来ならニキビがよくなるはずの成人後に、ニキビに悩まされるケースも少なくありません。俗に「20歳を過ぎたらニキビではなく吹き出物」などといいますが、ニキビは年齢に関係なくできるものです。成人のニキビでも、ひどい場合には早めに医師の治療を受けるほうがよいでしょう。
  ニキビは、正式には尋常性ざ瘡、または単にざ瘡といい、顔のほか、胸や背中にも発生します。毛孔につまった皮脂に細菌がついて繁殖すると、化膿した重症のニキビとなり、膿瘍をつくると、跡が残ることになります。
  ニキビができる原因には、ホルモンのアンバランス、脂肪分のとりすぎ、睡眠不足などがあげられます。女性で生理前にニキビが悪化するという人がいますが、これもホルモンのアンバランスのせいと考えられます。
  ニキビの治療の基本は、ぬるま湯で1日3回ほど石けん洗顔することです。石けんは、ごく普通の洗顔石けんを使うことをおすすめします。洗浄力や殺菌作用が強すぎるものは、逆にニキビに対する刺激となって、症状を悪化させるおそれがあるからです。
  西洋医学では、軽症ならイオウ・カンフルローションなどの外用薬で、化膿した重症のものには抗生物質や抗菌薬の内服でニキビの治療を行っています。しかしながら、できたニキビを治しても、また新しいニキビができてしまい、対応に苦慮する場合もあるようです。

もみじ 全身的な治療で再発も防ぐ
  さて、前述した生活の見直しや局所的な治療に加えて、ホルモンバランスや血行を改善したり、便通をよくしたりして、全身的な治療も行える点に、東洋医学の強みがあります。体の内側から治していけば、新たなニキビができてくるのを防ぐことができるからです。
  ニキビの治療に最もよく用いられる漢方薬は、清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)です。とくに、化膿して先のとがったニキビに効果的で、効果も比較的早く現れます。女性で生理の前にニキビが悪化するというような場合は、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)よく苡仁(種皮を取り除いたハトムギ)を加えた桂枝茯苓丸加よく苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)がよいでしょう。
  ほかに、化膿傾向のあるニキビで、実証(体力がありすぎるタイプ)で便秘がある人には桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、同じく化膿ぎみで顔以外にも膿んだニキビができるのなら排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)治頭瘡一方(じずそういっぽう)、鼻炎を伴う場合は荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)を処方します。一方、虚証(体力がないタイプ)で貧血や冷えがあるなら加味逍遥散(かみしょうようさん)当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)というように、症状、体質により、さまざまな漢方薬が対応します。

もみじ ニキビ以外の症状が治療のポイント

  それでは、実際に漢方薬でニキビがよくなった例を見てみましょう。
  29歳の男性T・Iさんが、顔一面にできるニキビに悩まされるようになったのは、20歳を過ぎたころからでした。主な訴えはニキビの悪化でしたが、問診すると、ほかに胃炎、吐きけ、寝つきの悪さ、便秘など、さまざまな体の不調を抱えていることがわかりました。
  見た目はスマート、舌には白い苔が厚くつき、ヘソのまわりにはお血(おけつ・血液のとどこおり)を示す圧痛点(押したときに痛みを感じる点)があり、ニキビ自体は化膿ぎみでした。そこで、朝には清上防風湯を、夜には桂枝茯苓丸を飲んでもらったところ、しだいに食欲が出てくるとともに化膿したニキビの膿が引き、赤みもおさまってきて、4ヵ月ほどで軽快しました。
  そのあとは、便秘解消のために清上防風湯大黄(ダイオウの根茎)を加え、胃のもたれには半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)(途中からのどの渇きに対応して白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)に変更)を処方しアフターケアとしたところ、さらに6ヵ月後には、ニキビがほとんどないきれいな肌がよみがえったのです。それだけでなく、最初に訴えていたさまざまな不快症状も一掃されていました。
  36歳の女性K・Uさんは、以前から1つ、2つと顔にニキビができることがありました。しかし、いつも自然に治っており、悩むほどのものでもなかったのです。ところが、最近になって、疲れたときや生理の前など体調が悪くなると、口のまわりや頬にたくさんニキビができて、なかなか治らないようになりました。
  ニキビのほかは、便秘と低血圧が気になる症状です。また、みずおちには軽い動悸があり、ヘソのまわりにはお血を示す圧痛点がありました。
  そこで、桂枝茯苓丸加よく苡仁を処方したところ、2週間ほどで、ニキビはほぼ治りました。しかし、薬を飲むのをやめると、またにニキビができるそうなので、しばらくは続けて飲んでもらおうと思っています。また、U・Kさんには便秘対策として大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)も出しました。
  いままでの治療例から考えると、ニキビの治療のときには、ニキビ以外の訴え、たとえば胃腸の調子が悪いとか、冷えるとか、精神的ストレスなどを考慮に入れて治療すると治りが早いようです。
  とくに、便秘とストレスはニキビの大きな憎悪要因であると考えられます。こういった症状の改善も行いながら治療に取り組めば、たいてい2〜3ヵ月でニキビはよくなっていきます。
  日常生活の注意としては、肌の清潔を心がけ、充分な睡眠をとることがいちばんです。洗顔だけでなく、肌にふれる髪や枕カバーなども清潔にしておきましょう。また、チョコレート、生クリーム、チーズなど、脂肪分の多い食品は、量を多くとらないようにします。糖分もひかえたほうがよいでしょう。
  女性の場合は化粧品を見直してみる必要もありそうです。過度に油分が多い化粧品や、肌に合わない化粧品が、ニキビの原因になることもあります。


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