漢方・掲載記事

以下は、「安心」2001年9月号の永久保存別冊付録[ガン撃退大辞典]に掲載された記事です。

  【 ガ ン 】

ガンの増殖を抑えて弱った体の免疫力を高めてガンを撃退する「十全大補湯」

20年以上たっても転移・再発はなし
 ガンは現代社会において最も恐れられている病気の一つです。ガン発生のメカニズムは、残念なことにまだすべて解明されてはいませんが、細菌感染のようによそから原因がもたらされるものではありません。もともと人間の体内にあった正常な細胞が、なにかのきっかけで、あるときガンに変わるのです。
 それには親から受け継いだ遺伝子も関係しているでしょうし、細胞のガン化を促す環境的な要因も関係しています。たとえば、ガンになりやすい遺伝子を持った人が、不摂生な生活をしたり、化学物質の汚染にさらされたりなどしたとき、条件が整ってガンが発生するのです。
 やっかいなことに、ガンには無制限に増殖し、転移するという性質があります。このため、ほうっておくと正常な細胞がどんどんガン化し、やがて人体を侵害して、死に至らしめるのです。ですから、ガンはなるべく早く発見し、小さいうちに手術などで取り除いてしまうのが、いちばんの治療だといえます。
 ところが、ガンの種類や進行状況によっては、手術も簡単ではありません。ときにはガンを完全に取ることができないこともあります。さらに、それをやっつけようと、手術後の弱った体に放射線や抗ガン剤などで負担をかけ、余計に体力を消耗させることもあります。このように、なかなかひとすじ縄ではいかないところに、ガン治療の難しさがあるのです。
 したがって、漢方薬の出番は意外にたくさんあります。まずは、抗ガン剤や放射線治療の副作用を少なくするのに役立ちます。抗ガン剤や放射線といっしょに漢方薬を使うと、副作用が軽減されるのです。
 次に、免疫力(体内に病原体が侵入しても発病を抑える力)を高め、体力の回復を手助けするのに役立ちます。せっかく手術でガンを取り除くことができても、体力の消耗に耐えきれないのでは、元も子もありません。漢方薬の免疫賦活作用は広く認められており、弱った体を元気にするのは得意な分野です。
 三つめは、直接ガン細胞に働きかけて増殖を抑え、移転を防ぐのに役立つということです。これはネズミの実験ですが、ふだんから漢方薬を飲ませていると発ガンしにくいというデータが出ています。
 また、同様にネズミの実験でのデータですが、ガンになってからでも、漢方薬を飲ませると進行しにくくなります。さらに、肝臓に転移する性質を持つ大腸ガンを人為的につくった場合でも、漢方薬を飲ませると転移しないですむのです。動物実験の結果が必ずしも人間に当てはまるとはいえませんが、似たような効果はかなり期待できるはずです。
 では、このようにガンを不利な立場に追い込み、人体を有利な立場に導く漢方薬はなにかというと、その第一選択は十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)です。十全大補湯は免疫力を高め、全身の状態をよくするだけでなく、すぐれた抗腫瘍作用を持っています。十全大補湯は人参や黄耆など10種類の生薬(漢方薬の原材料)からできていますが、調べてみると、このうちの4種類を組み合わせた四物湯(しもつとう)に、とくに抗ガン効果があります。
 しかし、なぜか四物湯を用いるより、あと6種類の生薬をあわせて十全大補湯にしたほうが、より強力な抗ガン効果が得られるのです。昔からよいとされている処方には、まだ科学では解明できない組み合わせの妙があるということでしょう。また、肺ガンなど呼吸器系のガンなら、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)も適しています。
 では、ここで私の臨床例をご紹介しましょう。胃ガンが増殖し、49歳のときに胃と脾臓すべて、膵臓の半分と大腸の一部を切除する大手術を受けたAさん(男性)は、手術後、体力と食欲が落ちたうえに下痢が続き、一時は回復が危ぶまれたほどでした。しかし、十全大補湯を中心に、補中益気湯などを組み合わせながら飲んでもらったところ、みごとに持ち直したのです。社会復帰も果たし、手術後20年以上たついまでも、転移・再発もなく元気に暮らしています。
 ほかにも、甲状腺ガンが肺に転移したにもかかわらず、普通の生活を送り、6年目に突入した人や、縦隔(左右の肺の胸膜腔にはさまれた胸部の中央部分)に取りきれなかった腺ガンが残っているのに、再発もせず5年が過ぎた人など、漢方薬を飲みながらガンと共存している例が多くあります。また、私の友人で、肺ガンになったのに手術せず、漢方薬などを飲みながら10年くらい元気に仕事をしている医師もいます。
 このように、漢方薬はガンの治療に高い効果をあげています。ですから、ガンになってもいたずらに落ち込まず、希望を持って治療を受けましょう。そしてそのさいの選択肢として、漢方薬での治療もぜひ検討してみてください。



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