漢方・掲載記事
この記事は、「安心」2002年2月号の『あきらめてた視力が戻る最強の<視力回復法>』に掲載されました。

  【白 内 障】

八味丸は若返りの妙薬で「目の老人病」といわれる白内障の進行防止に役立つ
腎を強化して目の機能を回復
 Aさんは66歳の男性です。老人性白内障で、来院したときの視力は右0.8、左0.5でした。そこで私は、八味丸(はちみがん)を毎日飲んでもらうようにしたところ、3年たっても右0.6、左0.7と視力を維持していました。
 その後もずっと八味丸を飲み続け、5年たったいまでも視力は右0.4、左0.5と日常生活に不自由のない程度に保たれています。
 このように、老人性の白内障に効果がある漢方薬として、広く使用されているのが八味丸です。
 白内障は、目の中でレンズの役割を果たしている水晶体が、白くにごってくる病気です。目の中に光をとり込めないので、物がかすんで見え、しだいに視力が落ちていきます。
 水晶体は一度にごると元に戻りませんが、手術によってにごった水晶体を交換すれば、視力を取り戻すことができます。現在では、白内障の手術は安全性が高く、安心して受けることができます。
 けれども、糖尿病などのために手術ができない人、または、どうしても手術は気が進まないという人、片方の目だけ手術してみたが、術後の見え方が気に入らないので、もう手術はしないなどという人もいます。
 そういう人たちにおすすめしたいのが、八味丸です。冒頭でご紹介したように、八味丸の服用により、かなりの割合で白内障の進行を食い止め、視力を維持、あるいは回復させることができるからです。
 水晶体がにごるのは、多くの場合は老化現象なので、白内障はいわば「目の老人病」です。ならば若返りを図ればよいということになります。
 年をとると、目が弱り、耳が遠くなり、白髪がでます。足腰も衰えて腹に力が入らなくなり、精力も減退します。これらはすべて老化現象ですが、漢方ではこれを腎が衰弱した状態、すなわち腎虚ととらえています。
 漢方でいう腎とは、生命力の源のように考えられています。当然、腎が弱ると老化が進むわけですが、逆に腎を強めてやれば若返るともいえます。
 その腎虚の治療薬の筆頭が、八味丸です。8種類の生薬(漢方薬の原材料)からできているので八味丸と呼ばれますが、主原料が地黄(じおう・ゴマノハグサ科アカヤジオウの根)であるところから、八味地黄丸(はちみじおうがん)とも呼ばれます。
 八味丸が老人性白内障の改善に役立つことは、故藤平健先生の研究でも明らかになっています。昭和60年に386人の老人性白内障患者を調査した結果、漢方薬治療で視力の向上した例が42.7%、現状維持が26.2%、効果なしが31.1%となりました。昭和42年のデータとともに、表にしましたので、参照してください。
 なお、八味丸が効果を発揮する体質の大きな特徴(証=診断目標)として、おなかに力がなくフニャフニャしている(臍下不仁)ことが挙げられます。40歳を過ぎると、たいていの人は程度の差はあれ、これに当てはまるので、八味丸で効果を得られるはずです。
八味丸による白内障治療成績
調査年度
視力経過
上昇
維持
効果なし
昭和42年
310人
(54.6%)
152人
(26.8%)
106人
(18.6%)
588人
(100%)
昭和60年
165人
(42.7%)
101人
(26.2%)
120人
(31.1%)
386人
(100%)
藤平健『漢方臨床ノート・治験篇』創元社p432の表2を改編

 ただし、白内障ならすべて八味丸を使うのではなく、尿の出が悪い人には八味丸の利尿効果を高めた牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、胃腸の弱い人には八味丸から2種類の生薬を抜いて胃腸にやさしくした六味丸(ろくみがん)を使うこともあります。

手術をしなくてすむこともある
 最後にもう一例、八味丸が白内障に著効を示した例をご紹介しましょう。
 Mさんは、72歳の女性です。白内障とわかってから3年目に視力が右目0.6、左目0.4まで下がり、手術をすすめられました。ところが本人は手術をいやがり、漢方治療を希望して私のところへきました。Mさんには、八味丸とともに、慢性の胃炎や足の冷えがあったので、四逆散(しぎゃくさん)真武湯(しんぶとう)も処方しました。
 すると、ほどなく胃炎がおさまり、足の冷えや立ちくらみは消えました。その後も八味丸は飲み続けてもらったところ、約1年後には左目の視力が0.5に上がりました。右目は0.6のままですが、これなら手術をしなくても日常生活に支障はありません。
 Mさんは、その後も八味丸を飲み続けていますが、白内障は進行せず、視力も低下していません。長く飲み続けることができるのも、八味丸の特徴です。
 これらは、決して特殊な例ではありません。八味丸を用いればかなりの確立で白内障の手術を先延ばしにできるのです。人によっては手術をしなくてすむこともあります。なかには、八味丸を飲んで3ヶ月で、視力が0.3から0.7にあがった人もいます。白内障の進行防止に、ぜひ八味丸を役立ててください。



漢方治療は、その時のその人に合った薬を微調整するオーダーメイド処方です。
当クリニックでは、経験豊富な漢方医があなたに合った治療を提案します。お気軽にご相談ください。



Copyright(C)昌平クリニック.記事の無断転載を禁じます