鍋谷院長のこの漢方薬が効く!

以下は健康雑誌「壮快」2002年1月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された 記事を要約したものです。


漢方と西洋医学の違い教えます

漢方も西洋医学も長所・短所がある
今回は、漢方の歴史と特色を簡単にご説明しましょう。
中国からの医学が伝わる以前、我が国には「倭法」と呼ばれる固有の医学がありました。大国主命は、ワニに毛をはぎ取られたウサギに、清水で身を洗い、ガマの穂を敷いて寝るように教えて救いました。この神話が『古事記』(現存する我が国最古の歴史書)にも伝えられています。
漢方は三世紀ごろから朝鮮半島を経由して徐々に伝わったと考えられます。その後、仏教伝来とともに、また遣唐使によって、本格的に伝わりました。その後、日本的によく消化され、国土に適した漢方として発展しました。
江戸時代にはオランダ医学が取り入れられ、漢方に対して蘭法と呼ばれます。明治になり、医学はドイツ医学が主流となるとともに、医師免許法が公布され、漢方は衰退しましたが、一部の医師によって受け継がれてきました。
そして、世界的に東洋医学への関心が高まり、我が国でも漢方が見直されます。1976年には漢方薬の保険適用が認められ、今日に至っています。
漢方の最大の特色は、患者さん一人ひとりをよく観察して、心身の不調和を起こしたところを改善する点にあります。そのあたりは、西洋医学と比べるとよくわかります。
下痢をしている人がいると、漢方では、胃腸の働きを調和させて、適切な便通の状態に回復させます。しかし、西洋医学では、下痢の治療をしたら便秘になってしまうことがしばしばあります。
西洋医学と漢方は、それぞれに長所と短所があります。今日、我が国が世界で最長寿国になれたのは、西洋医学の発展のおかげでしょう。しかし、最近の西洋医学では、患者さんの体を診たり、訴えを聞いたりすることが不十分で、検査データや画像だけを重視しがちです。
それに対して、漢方は一人ひとりの患者さんをしっかりと観察します。西洋医学では治療できないような自覚症状を漢方は改善することがあります。とはいえ、、画像診断や生化学的な検査が行われないため、隠れた病気を見逃す危険もあります。
このように、漢方も西洋医学も、それぞれに長所と欠点を持っており、うまく併用することが大切だと私は考えています。

患者の状態で薬を撰ぶ
それでは、漢方の診断法について説明しましょう。前述のように、漢方では徹底的に患者さんの状態を観察します。そのために、望診(ぼうしん)、聞診(ぶんしん)、問診(もんしん)、切診(せつしん)の四診を行います。
望診とは、肉眼で観察することです。
聞診とは、患者さんの声、セキ、腹鳴、振水音(胃の中でポチャポチャと水の音が鳴ること)などを聞き、体臭や排泄物などのにおいをかぐことです。
問診は患者さんからの訴えやこれまでの経過などを聞くことです。
切診は、患者さんに手をふれて、脈診や腹診をすることです。
こうした四診に基づいて、患者さんの状態を診断します。それは、陰陽虚実寒熱表裏(き)・(けつ)・(すい)といった見方です。
陽は病気が活動的で外部に現れていることで、陰は病気が静的で内部に隠れていることをいい、病気の経過を表します。
虚実とは、患者さんの体力が衰弱している(虚)か、充実している(実)かを表します。寒熱とは、冷えが現れている(寒)か、ほてりなどの熱が現れている(熱)かを示します。
表裏とは、病気の部位を示します。つまり、病気は体の表面(表)から消化器に(裏)に向かってだんだんと進んでいくわけです。
気・血・水は、体の健康を守る大切な三つの要素です。健康を維持したり病気を治したりするには、気力(気)が必要です。さらに、血液(血)や体液(水)のバランスがとれていることが必要です。気・血・水の流れが悪くなると、病気の原因になることがあります。
気の流れをよくする漢方薬は順気剤と呼ばれています。
血の流れが滞った状態はお血(おけつ)と呼ばれ、漢方では非常に重視されています。お血を示すのは、腹部のへその周囲にある圧痛(押すと感じる痛み)です。あおむけに寝て、手の指で軽く腹部を押してみて、しこりや圧痛がある人は、お血の可能性があります。漢方には、お血を改善するための駆お血剤が多数用意されています。
むくみなど、体の水はけが悪くなった状態は水毒と呼ばれますが、水の流れをよくする漢方薬は利水剤と呼ばれます。
このように、患者さんを四診でしっかりと観察し、陰陽、虚実、寒熱、表裏、気・血・水などで診断して、漢方の処方を決定します。西洋医学なら、カゼのときは解熱剤、セキ止めなどが処方されます。
しかし、漢方では、同じカゼでも、患者さんの状態に応じて、葛根湯(かっこんとう)麻黄湯(まおうとう)桂枝湯(けいしとう)麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)香蘇散(こうそさん)小柴胡湯(しょうさいことう)小青龍湯(しょうせいりゅうとう)などが選択されます。
ところで、漢方にも副作用がある、危険な場合があると一時期騒がれました。残念なことですが、漢方についての知識や経験が少なく、安易に漢方薬を扱うと、そうした事態を招く場合もあります。
ですから、患者さんが自分で漢方薬を試すときも、専門家の意見をよく理解して、副作用や危険なことのないように注意していただきたいものです。


漢方治療はその時のその人に合った薬を微調整するオーダーメイド処方です。
  必ず専門の医師にご相談ください。

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