鍋谷院長のこの漢方薬が効く!

以下は健康雑誌「壮快」2002年2月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事を要約したものです。


小柴胡湯(しょうさいことう)

二日酔いや悪酔いにも幅広く使える
年末年始の、お酒とごちそうの取りすぎがたたり、正月明けは二日酔いに苦しんだり、肝臓を傷めてしまう人がいます。
そんなときの二日酔いや肝臓の不調から、もう少し本格的な肝臓の病気の治療まで、幅広く使えるのが小柴胡湯という処方です。
小柴胡湯はどんな人に適しているのか、漢方の考え方を説明しましょう。
漢方では、病気は体の表から中に入っていくと考えます。体の表は「表」、体の中は「裏」と表現します。表とは表面にある皮膚のこと、裏とは体の中にある胃腸などの臓器のことです。
また、表と裏の中間、つまり横隔膜(体内で胸部と腹部を区切る膜状の筋肉)あたりでくすぶっている段階があります。ここを半表半裏といいます。
  病気の進行段階を細かく見ると、一般的には表の次にすぐ 裏にすすむのではなく、表と裏の中間(半表半裏)を通って裏に進むのです。しかし、まれには表からいきなり裏に進む病気もあります。
そしてそれぞれの進行段階で、表にあるときは太陽病(たいようびょう)、半表半裏にあるときは少陽病(しょうようびょう)、裏の初期は陽明病(ようみょうびょう)と呼んでいます。
小柴胡湯は、病気が半表半裏にあるとき、つまり少陽病に用いられる薬です。病院を訪れる患者さんで最も多いのは実は少陽病の段階の人たちです。それだけに、小柴胡湯の応用範囲も非常に広いのです。
小柴胡湯は、
柴胡(さいこ・セリ科の多年草ミシマサイコの根)、
半夏(はんげ・サトイモ科の多年草カラスビシャクの根茎)、
生姜(しょうきょう・ショウガ科の多年草ショウガの根茎)、
黄岑(おうごん・シソ科の多年草コガネバナの根)、
大棗(たいそう・クロウメモドキ科の落葉高木ナツメの成熟した果実)、
人参(にんじん・ウコギ科の宿根草チョウセンニンジンの根)、
甘草(かんぞう・マメ科の多年草カンゾウの根)
の7種類の生薬(漢方薬の原材料となる草根木皮)で構成されています。
柴胡は、解熱鎮痛作用を持っています。
半夏は、吐き気を止めます。
黄岑は、炎症をおさえて熱を冷まします。
大棗人参は、滋養強壮効果があり、胃を丈夫にします。
生姜甘草は、消化管を丈夫にして痛みを止め、薬の作用を穏やかにします。

柴胡剤の使用目標は胸脇苦満だ
小柴胡湯には、柴胡が含まれているのが大きな特徴です。
柴胡が含まれた漢方処方のことを柴胡剤と呼びますが、主な柴胡剤にはほかに大柴胡湯(だいさいことう)柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)などがあります。これらの柴胡剤の最大の使用目標となるのは、胸脇苦満という症状です。
これは、肋骨の下の季肋部が張って重苦しく、押すと抵抗と圧痛(押すと感じる痛み)があるという独特の腹部症状です。先ほど、病の進行段階の話をしましたが、病が表と裏の中間の半表半裏にあるときの特徴的な症状が胸脇苦満です。
漢方薬は、患者さんの体力に応じて使い分けられますが、先に紹介した柴胡剤のうち、実証(体力が充実していること)の人に用いられるのは大柴胡湯です。
小柴胡湯は、やや実証から中間証あたりまでの人に用いられます。
  中間証からやや虚証寄りの人には 柴胡桂枝湯、もっと虚証の人には柴胡桂枝乾姜湯が用いられます。
つまり小柴胡湯は、体力がやや実証寄りから中間証までの間で、病が半表半裏にあることを示す胸脇苦満を呈する人に用いられるというわけです。
従来、用いられきた病名はいろいろな熱病、カゼ、インフルエンザ、扁桃炎、耳下腺炎、肺炎、胸膜炎、気管支炎、リンパ腺結核、肝炎、胃腸炎などです。
このうち、今回、特に多くの皆さんに当てはまるのではないかと考えた症状が 肝臓の不調です。
飲みすぎ、食べすぎなどで二日酔いになると、体はまさに病が半表半裏にある状態を呈します。具体的には、頭や顔がのぼせて熱っぽく、吐き気がして、食欲は減退し、そして何よりも胸脇苦満が現れます。

正しく使えば副作用の心配なし
胸脇苦満を自分で診断する方法があります。あおむけに寝て体の力を抜き、手の指先を季肋部に当て、肋骨の下のほうへ押してみてください。正常なときは、手の指が少し中まで入り込み、抵抗や圧痛も感じません。
しかし、指先が入りにくく、だるいような圧痛を感じるときは、胸脇苦満の状態といえます。小柴胡湯は、こうした二日酔いや一時的な肝臓の不調を改善するのに役立ちます。もちろん、使用目標が一致すれば、肝機能障害や肝炎などの改善にも活躍します。
小柴胡湯は、別名を三禁湯(さんきんとう)とも呼ばれます。
これは、汗(かん・汗をかいているとき)、吐(と・吐いているとき)、下(げ・下痢をしているとき)の三つの症状のうちのどれかがあるときは、投与してはならないという意味です。
最近、小柴胡湯の副作用が報告され、あたかも小柴胡湯が危険な薬剤であるかのような報道が行われました。
しかし、実際には、これほど応用範囲が広く、優れた処方もほかにはありません。
使い方さえ間違えなければ、副作用の心配はないのです。どんな人に適しているのか、どんなときに使ってはいけないのか、よく知ったうえでお使いになることをお勧めします。
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  必ず専門の医師にご相談ください。

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