鍋谷院長のこの漢方薬が効く!

以下は健康雑誌「壮快」2002年4月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。


清心蓮子飲(せいしんれんしいん)

頻尿によく効く漢方の名薬
清心蓮子飲は、今から1000年ほど前に著された漢方の古典『和剤局方』に記されている処方で、頻尿などの排尿障害の改善にしばしば卓効を現します。
頻尿・血尿の薬といえば、猪苓湯(ちょれいとう)が有名なのですが、猪苓湯は元気な人、漢方でいう実証(体力が充実していること)タイプに適しています。
一方の清心蓮子飲は、実証よりも体力が弱い虚証(体力が虚弱なこと)タイプに適しており、しかも頻尿だけでなく、ほかのいろいろな不快症状に悩まされているような場合によく効きます。
清心蓮子飲は、そもそも四君子湯(しくんしとう)という処方を基礎に作られたもので、その四君子湯は胃腸虚弱を改善する薬です。したがって、それをもとに作られた清心蓮子飲も虚証向けというわけです。
   その 四君子湯は、
茯苓(ぶくりょう・アカマツまたはクロマツの切り株の根の周りに生えるサルノコシカケ科のマツホドの菌体から外層を除いたもの)、
人参(にんじん・ウコギ科の宿根草オタネニンジンの根)
甘草(かんぞう・マメ科の多年草カンゾウの根)
白朮(びゃくじゅつ・キク科の多年草オケラの根茎)
の四つの生薬(漢方薬の原材料となる草根木皮)からできています。
これらの生薬は、胃にたまっていた水を取り去って胃腸を整え、気力を充実させるように働く薬です。
この四つの生薬から白朮を除き、
蓮肉(れんにく・スイレン科の多年草ハスの果肉)、
麦門冬(ばくもんどう・ユリ科の多年草ジャノヒゲの塊根)、
車前子(しゃぜんし・オオバコ科の多年草オオバコの種子)、
黄岑(おうごん・シソ科の多年草コガネバナの根)、
黄耆(おうぎ・マメ科の多年草カラオウギの根を天日乾燥させたもの)、
地骨皮(じこつぴ・ナス科の落葉低木クコの根皮)という六つの生薬を加えた9種類から構成されています。

残尿感に悩む人もこの薬が合う
蓮肉麦門冬は、肺や心臓の熱を冷まします。
体力が虚弱で頻尿などに悩まされている人は、体の上のほうに熱が上昇して動悸が打ったりする一方で、下半身は冷えて体力が落ち込んでいることが多いはずです。
そこでこれらの生薬は、肺や心臓の周りの熱を冷まし、その熱を下半身に巡らせて下半身の冷えを取り除きます。
さらに車前子地骨皮も、心の熱を冷まして水の流れを整え、尿の出をよくしてくれます。人参黄耆は肺の熱を冷まし、汗をコントロールしながら、体力をつけ腎臓の力をつけてくれます。
このように、上半身の熱を冷ましながら、下半身の腎臓や泌尿器を丈夫にする生薬から構成されているわけです。
清心蓮子飲は頻尿を改善する薬と申し上げましたが、目標になるのは頻尿だけではありません。
たびたび尿意を催しながら、尿が出にくいという排尿困難や排尿痛も適応症です。尿をもらしてしまったり、排尿後の残尿感に悩まされたりするのも清心蓮子飲の適応です。
女性の場合は、まるで米のとぎ汁のようなおりものが大量に出ると訴えることがあります。こうした尿路系全般の不調和を取り除くのにも、この薬は大活躍します。
清心蓮子飲はどちらかといえば虚証向けの薬であるといいましたが、これらの下半身の排尿に関する不愉快な諸症状は、冷え性で体が弱っているときに出るものです。
排尿時に尿がボタボタと落ちる、あるいはだらだらと出る、というようなときは、八味丸(はちみがん)牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などの処方が使われることがありますが、これらは胃腸が丈夫な人向けの薬で、胃弱の人には清心蓮子飲が好適です。
また、細菌検査では陰性だけれども、いろいろな不快症状がだらだらと続くような膀胱炎に適しています。

症状が出たら飲めばいい
現代社会で生活していると、運動不足や食べすぎになりがちです。よほど意識していないと、体を鍛える機会もあまりありませんし、精神的な悩みやストレスも多いのではないでしょうか。
さらに、リラックスできる環境も少ないので、胃腸をはじめ全身が衰弱し、それに伴って頻尿など、尿路系の不調に悩まされる虚証タイプの人がふえる傾向にあります。
尿路系のいろいろな症状とともに、のどの渇きや口の中が苦く感じるなどの症状が現れることもあります。外来で診察をしていると、最近は男性でも女性でも、清心蓮子飲が合うような患者さんがふえているような気がします。。
頻尿といっても、高熱をともなうようなものにはあまり効果がありません。顔色が青白く、筋肉の締まりもなく、舌には白い苔がつき、腹部もふにゃふにゃして、脈もあまり強くないような人に向いています。
また、神経質そうな人にもよく効きます。こうしたタイプの人で、前述したような頻尿をはじめとした症状のある人なら、男女を問わず清心蓮子飲が効果を発揮するはずです。
この薬は、あらかじめ予防的に飲んでおく、という使い方をすることはありません。頻尿などの症状が出てきたら、飲み始めましょう。
しかし、症状が改善して、もう大丈夫だなと思ったら、服用を中止してかまいません。かといって、しばらく飲み続けても、副作用などの心配は何もありません。
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