鍋谷院長のこの漢方薬が効く!

以下は健康雑誌「壮快」2002年5月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。


五苓散(ごれいさん)

ほとんどの病気に効果を現す名薬
五苓散は、その名前が示しているとおり、五種類の生薬(漢方薬の原材料となる草根木皮)から構成されている処方です。五種類のうち、四種類が水にかかわる生薬で、残りの一種類は体の表面の病を治す生薬です。
五苓散を構成する生薬のうち、水にかかわっているのは、
猪苓(ちょれい・ブナ、ナラ、モミジなどの根に寄生するサルノコシカケ科チョレイマイタケの菌核)、
茯苓(ぶくりょう・アカマツまたはクロマツの切り株の根の周りに生えるサルノコシカケ科のマツホドの菌核)、
沢寫(たくしゃ・オモダカ科の多年草サジオモダカの根茎からヒゲ根を除いたもの)、
白朮(びゃくじゅつ・キク科の多年草オケラの根茎からヒゲ根を除いたもの)
の四つの生薬です。
残りの一つで、体の表面の病に関係しているのは、
桂枝(けいし・クスノキ科の常緑高木シナニッケイの枝の皮からコルク層を除いたもの)です。香料のシナモンはスリランカ産のものです。
五種類の生薬のうち、四種類が水の新陳代謝にかかわる生薬ですから、五苓散は水の不均等、過不足などに基づく病気に卓効を現します。
人間の体の約70%は水ですから、多くの病気は水の調和の乱れが関係しています。したがって、五苓散はほとんどの病気に効果を発揮するといっても過言ではありません。さらに、桂枝だけは体の表面の病に関係しているため、いっそう応用範囲は広がっています。
五苓散が効果を発揮する病気のいちばんの目標は、水にまつわる症状です。その中でも最も重要な症状はのどの渇き、口の渇き(口渇)など、体の水はけが悪いことを示すものです。
全身の水の循環が悪くなっているために起こる小便不利(尿が出にくいこと)も重要な薬の使用目標です。それらに伴って、汗をかく、吐き気がする、下痢をする、頭痛がするなどの症状があるときも、五苓散が大活躍します。

ポチャポチャと胃で音がする
体の水はけが悪いことを示す大切な症状の一つに、上腹部振水音があります。これは、走ったり、こぶしで軽くみずおちをたたいたりしたとき、胃の中からポチャポチャと水の音が聞こえることです。
本来、水は胃の中にたまらないで、下に流れ、かつ吸収されていくはずです。ところが、体の水はけが悪いと、いつまでも胃に水がたまり、胃部不快感や吐き気などの原因になることがあります。これを胃内停水といいます。
前述したように、水はけが悪い人は、のどの渇き、口の渇きに悩まされ、水を飲みたがります。(多飲)。よく水を飲むのですが、人によっては飲むとすぐに吐いてしまうことがあります。しかし、五苓散を服用すると、水を飲んだあとのおう吐も止めることができるようになります。
こうした水の症状だけでなく、体の表面の熱っぽさがあることも、五苓散の重要な使用目標です。本来、体を循環しているはずの気(一種の生命エネルギー)がうまく回らず、上半身、特に頭に突き上げること(気の上衝)、そのために起こるのぼせなどが目安になります。
こうした症状を呈する病気は、むくみ、ネフローゼ(著しいむくみがみられる腎臓病)、二日酔い、急性胃腸炎(胃の粘膜が炎症を起こして、粘膜がはげおちる症状)、下痢、むかつき、おう吐、めまい、頭痛、尿毒症(排泄されるべき尿成分が血中にたまって起こる中毒症状)、暑気あたり、黄だん(胆汁色素が血液中や組織中に異常にふえて皮膚や粘膜が黄色くなる症状)、腎炎、膀胱炎(膀胱の粘膜が炎症を起こし粘膜がはげおちる症状)、陰のう水腫(睾丸を包んでいる膜に水がたまった状態)と非常に幅が広いのですが、特に五苓散が的中する現代の病気として応用されているのが糖尿病です。
糖尿病には、若いときから起こり、膵臓からインスリン(血液中の糖分量を減少させるホルモン)が分泌されなくなる1型と、主に中高年で起こり、インスリンは分泌されるけれども効きにくくなっており、食事や運動によってコントロールできる2型、そしてその二つの混合型があります。
五苓散は、糖尿病のタイプにこだわらず、患者さんの生活の質(QOL)を改善するために使用されて、しばしばすばらしい効果を示します。
糖尿病の患者さんは、ご存知のとおり、のどの渇き、口の渇きに悩まされ、よく水を飲みます。のぼせや体のほてりなども伴うものです。動悸、めまい、頭痛、食欲不振などにも五苓散はよく効きます。
糖尿病の患者さんの中でも、腹力が中等度、つまり体力が強すぎもせず、かといって弱すぎることもないような人には、とりわけよく効きます。
また、糖尿病の患者さんは神経痛や、傷の治りがかんばしくないなどの合併症(ある病気に伴って起こるほかの病気)が起こることがありますが、五苓散を服用すると、そうした合併症の自覚症状も改善することができます。
いうまでもありませんが、糖尿病の治療は五苓散だけでじゅうぶんというわけではなく、基本的な治療をしたうえで、五苓散がQOLの改善に役立つということです。
2型で食事療法を勧められている患者さんは、食事療法と五苓散を服用するととても効果的です。
また合併症の改善についても、自覚症状が楽になることはありますが、基本的には専門的な治療が必要です。

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