鍋谷院長のこの漢方薬が効く!

以下は健康雑誌「壮快」2002年7月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。


補中益気湯(ほちゅうえっきとう) -白髪・骨粗鬆症-

体力を補う「補剤」の代表的な処方
補中益気湯は、13世紀の中国の有名な漢方医、季東垣(りとうえん)が著した『内外傷弁惑論』に記された処方です。
もともと体力が弱々しい人、あるいは体力が極度に衰えた人の体力を補い、回復させる代表的な体力増強剤で、別名を「医王湯(いおうとう)とも呼ばれます。漢方では、体力を補う薬を補剤といいますが、「補剤の雄」ともいわれます。
この処方は、ちょうど10種類の生薬(漢方薬を構成する草根木皮)から構成されています。その中で、主薬として働くのは、人参(にんじん・ウコギ科の宿根草オタネニンジンの根または細根)と黄耆(おうぎ・マメ科の多年草カラオウギの根を水洗いして天日乾燥させたもの)の2つです。
漢方の補剤のほとんどには、これら2つの生薬が配合されており、人参黄耆が含まれた補剤は参耆剤(じんぎざい)と便宜的に呼ばれることもあります。
補中益気湯は、中(胃腸)の働きを補って丈夫にして元気を増す、という意味です。
胃腸は、外からの栄養を体の中に取り入れるために、なくてはならない重要な臓器ですが、それを強化して体力増強をはかる漢方薬と位置づけられています。
もともと、人参黄耆も、汗かきや寝汗を治す生薬です。人参甘草(かんぞう・マメ科の多年草カンゾウの根)、白朮(びゃくじゅつ・キク科の多年草オケラの根茎のヒゲ根を除いたもの)、陳皮(ちんぴ・ミカン科の常緑小高木ミカンの成熟した果実の果皮)も胃を丈夫にします。
当帰(とうき・セリ科の多年草トウキの根)は貧血を補う生薬で、婦人病に広く用いられます。柴胡(さいこ・セリ科の多年草ミシマサイコの根)は解熱作用を持つ生薬です。これらは、いずれも弱々しい虚弱体質を改善します。

この補中益気湯について、江戸時代の漢方医津田玄仙は、8つの使用目標を決めました。
(1) 手足がだるい
(2) 言葉に元気がない
(3) 目にも勢いがない
(4) 口の中に白沫(白い泡)が出る
(5) 食べるものの味を感じない
(6) 冷たいものを嫌い、熱い湯茶や食べ物を好む
(7) ヘソのところに動悸がある
(8) 脈に力がない
以上の8項目です。
これらのうち、1つか2つでも当てはまる症状が見つかったら、補中益気湯を使用してよいと記しています。

円形脱毛症の改善にも効果
これらの8つの使用目標を見ると、現代でいうところの慢性疲労症候群が思い起こされます。体力が低下して、慢性的に疲労し、全身的に体調が悪化している人に、補中益気湯は卓効を現すといわれています。
補中益気湯にはいろいろな応用法が考えられますが、今回、私がお勧めしたいのは、白髪と骨粗鬆症(骨からカルシウムが溶け出し、スが入ったようにもろくなる病気)です。
人はだれでも年をとると老化しますが、それは肉体という形態の部分でも、気力という精神的部分でも起こります。補中益気湯は肉体・気力のいずれの老化現象も補います。
白髪は、家族的な遺伝性も見られますが、よく目立つ老化現象です。肉体的な老化でも現れますが、大きなショックや心配事で瞬く間に白髪がふえることがあるように、気力の衰えでも現れます。
骨粗鬆症は、体の中で進む老化現象で、女性では特に閉経後に目立ちます。骨がもろくなり、容易に骨折するようになります。
補中益気湯は、衰弱した体力と気力を補って増強しますが、老化による衰えにも効果を現して、その代表的な症状である白髪や骨粗鬆症にも効果を発揮するのです。
白髪がふえた人が補中益気湯を飲むと、体の衰えや精神的な衰えを補い、新陳代謝が活発になります。白髪を元どおりの黒髪に戻すのは難しいにしても、白髪の進行が止まったり、ある程度の回復効果が得られたりすることがあります。また、円形脱毛症が改善することもあります。
骨粗鬆症も老化現象の1つです。私たちの体では、新しい骨が作られる骨形成と、古い骨が処理される骨吸収のバランスで骨の量が保たれています。
しかし、年をとると骨吸収の働きのほうが強くなり、骨粗鬆症の主な原因になります。
骨粗鬆症が進むと、腰痛に悩まされるようになり、骨折しやすくなります。現代医学では、ビタミンDとカルシウム剤が投与され、牛乳も推奨されます。
最近、ビタミンやカルシウムとともに、補中益気湯を併用すると、骨形成が促されて骨吸収が抑制されることが判明し、骨粗鬆症の改善に有効と報告されました。
このように、代表的な老化現象である白髪や骨粗鬆症を改善し、老化予防、老化の遅延、一定の若返りを期待できる薬です。
高齢者だけではなく、年齢を問わず、慢性疲労症候群の改善にも用いられます。例えば、精液中の精子の数が少なかったり、精子の運動量が低かったりすることが原因で起こる、男性不妊の改善にも用いられます。
白髪や骨粗鬆症などに効果を得ようと思えば、補中益気湯は3ヵ月から6ヵ月は、飲み続ける必要があります。それ以上飲み続けても特に副作用の心配はありません。
白髪の効果は目で見てわかります。骨の状態がよくなれば、腰痛が軽快するほか、X線(レントゲン)撮影での骨の変化も認められるはずです。
すでに骨粗鬆症が進行した高齢者が骨折した場合、補中益気湯を併用すると回復しやすくなる効果も期待できます。

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