鍋谷院長のこの漢方薬が効く!

以下は健康雑誌「壮快」2002年9月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された 記事です。


桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう) -精力減退-

体の表面に起こる病気を治す桂枝湯
我が国でよく使われている漢方薬は200〜300種類ほどあり、そのうちの約70種類は桂枝湯(けいしとう)が基本に使われているといわれています。
基本に使われているとは、生薬(漢方薬を構成する原材料となる草根木皮)構成の中心に桂枝湯を据えて、それにいくつかの生薬を加えるかへらして別な処方を作る、という意味です。
今回、紹介する桂枝加竜骨牡蠣湯も、桂枝湯を基本にした漢方薬です。
基本処方である桂枝湯は、
桂枝(けいし) クスノキ科の常緑高木シナニッケイの枝の皮からコルク質を除いたもの、
芍薬(しゃくやく) キンポウゲ科の多年草シャクヤクの根、
大棗(たいそう)クロウメモドキ科の落葉高木ナツメの成熟した果実、
生姜(しょうきょう)ショウガ科の多年草ショウガの根茎、
甘草(かんぞう)マメ科の多年草カンゾウの根
の5つの生薬から構成されています。
それぞれの働きを簡単に述べると、主薬の桂枝は気ののぼせを鎮めます。芍薬は血の流れをよくするとともに、緊張を和らげます。甘草は甘い味で緊張や痛みを和らげます。生姜は気を巡らせるとともに、体の中の水の流れをよくします。大棗はいろいろな煩悶や胸騒ぎを落ち着かせるとともに、栄養剤でもあります。
桂枝湯は、この5つの生薬のハーモニーによって、体の表面に起こる病気を治すとされています。
その代表的な病気は、カゼで、頭痛、発熱、寒け、自汗(じっとしていても汗が出ること)、気ののぼせといった症状を解消するのです。
桂枝加竜骨牡蠣湯は、基本処方である桂枝湯に、竜骨(りゅうこつ・ほ乳類のマンモスなど大動物が地中に埋まってできた骨の化石)と牡蠣(ぼれい・貝類カキ科の貝殻を粉末にしたもの)を加えた漢方薬です。

結果的にインポが治る例も多い
日本で用いられる漢方薬は植物性の生薬が使用されることが多いのですが、この処方には2つの動物性生薬が使われており、その点では特徴的な漢方薬といえます。
竜骨牡蠣は動物性の生薬でミネラルを豊富に含んでいます。そのため、2つとも心身の興奮を鎮める鎮静的な役目があります。
基本処方の桂枝湯も、気の上衝(一種の生命エネルギーの気は本来体を循環しているが、それが体の上部に偏ってしまう状態)によるのぼせを改善しますが、竜骨牡蠣の2つを加えると、その作用がいっそう強化されるのです。
また、この2つの動物性生薬が加わることで、へそより上方、または下方の動悸(腹部大動脈の拍動)、胸騒ぎ、失精(精液が漏れること)なども改善する働きが強まります。
桂枝加竜骨牡蠣湯はこのような特色を生かして、ストレスなどのために精神が衰えた患者さん、逆に高ぶった患者さん、異常に興奮した患者さんなどを改善します。
病名でいえば、自律神経失調症、ノイローゼ、神経質、人格異常状態、精神不安状態などに用いられます。
この処方の一般的な使用目標は、体力が衰えている虚証で、精神が衰弱あるいは興奮した状態の人。腹診(腹部を手で押す診察)をすると、腹部でドキドキと拍動があり、イライラ、のぼせ、ほてり、胸苦しさ、やる気がない、物事が手につかない、手足がだるい、もの忘れをする、などの症状が伴っている人に使用します。
そういう使い方とともに、精力減退にも使用されて、効果を発揮することがあります。
どんな精力減退にも効くわけではなく、上記のような作用によって、結果として減退していた精力を増強できるのです。
体力が虚証で、精神的に衰えているか、逆に興奮しており、仕事に集中できない、イライラ、胸苦しさ、何事もやる気が起こらない、などとともに、インポテンスが起こっているような場合、桂枝加竜骨牡蠣湯が効き目を現します。
診察を受けに来た患者さんは、最初からインポテンスを訴えることはあまりありません。
しかし、上記のような症状がある人を腹診すると、腹部大動脈の拍動をふれる例が多いのです。この拍動をふれることが、非常に大切な目標になります。
そういう患者さんに桂枝加竜骨牡蠣湯をお出しすると、何ヵ月かでとても調子がよくなります。そして後から、「実は先生、精力が減退していたのですが、あのお薬を飲んだら、あっちのほうもよくなりましたよ」と報告されるわけです。
桂枝加竜骨牡蠣湯は、当然のことですが、男性だけではなく、イライラや腹部の動悸などの使用目標さえ合致すれば、女性にも使えます。
女性の場合もイライラだけでなく、月経不順などが改善されることが少なくありません。
イライラして、精神的に衰えたり興奮したりする状態は、何年もかかって形成されるものです。したがって、それを改善するには、桂枝加竜骨牡蠣湯をしばらく飲み続ける必要があります。3ヵ月か半年単位で服用を続けたいものです。症状が改善したら、服用をやめてもかまいません。
これとよく似た名前の処方に、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)があります。これには柴胡(さいこ・セリ科の多年草ミシマサイコの根)が入っており、体力が充実した実証の人向けの薬です。
体力があって、似たような症状を示す人にはこの薬が効果を現します。
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  必ず専門の医師にご相談ください。

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