女性のための漢方ノート

以下は健康雑誌「ゆほびか」2004年4月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。

花粉症 - 連載第12回 -

漢方薬は体質から根本的に治す
  花粉症とは、特定の植物の花粉にアレルギー反応が起こって現れるさまざまな症状です。鼻水や鼻づまり、涙目が最もよく見られる症状で、そのほかにクシャミ、目の充血、目・のどのかゆみ、だるさなども現れます。
  花粉症を引き起こす代表的な植物が、スギです。2〜4月に花粉がたくさん飛散し、ほかの植物と比べて強いアレルギー反応が現れます。そのほか、3〜4月にはヒノキ、5〜6月にはカモガヤ、8〜10月にはブタクサの花粉が飛散し、花粉症の原因となります。
  西洋医学では、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、局所ステロイド薬など、アレルギー反応をおさえる薬を花粉症に用います。こうした薬には即効性があります。しかし、症状を一時的に止める効果しかないので、なかなか花粉症の根本的な治療にはなりません。さらに、抗ヒスタミン薬には、眠気、抗アレルギー薬には、眠気と鼻へのツーンとした刺激などの副作用があります。
  一方、漢方では、体質を重視します。つまり、体が花粉に反応しやすい状態であることが問題なのです。例えば、水毒(すいどく・体の中の水はけが悪い状態)やお血(おけつ・血液の流れが滞った状態)など、気血水(体を循環して生命を維持するもの)のアンバランスが、花粉症を引き起こすと考えられています。
  ですから、漢方薬は、症状をおさえるだけでなく、同時に気血水のアンバランスを改善して、花粉症を根本から治すために用います。西洋薬と比べて副作用は少ないのですが、効果が現れるのはやや遅い傾向にあります。
  漢方治療では、証に合わせて薬を選ぶことが重要です。証とは、自覚症状と他覚症状、体力、体質による漢方的な総合診断です。体力がある実証、体力が弱い虚証、実証より弱く虚証より強い中間証という分類も、証の診断の一部分です。

証が合えば1週間で効果が現れる
  花粉症には、症状をおさえる薬と、体質改善が目的の薬と、そのどちらにも効果的な薬があります。
  症状をおさえる漢方薬は、証が合えば効果がすぐに現れます。ですから、薬を1〜2週間服用して、その人に適しているかどうかを見極めます。症状が変わらなければ、ほかの薬に替えます。効果がよくわからないのに、ダラダラと飲み続ける薬ではありません。
  すでに花粉症が現れている状態に対し、よく用いる漢方薬が、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)です。実証に近い中間証に適しています。小青竜湯は水毒を改善するので、クシャミ、鼻水、胃内停水など水に関する症状がある場合に用います。胃内停水とは、胃に水毒がある状態をいい、みずおちの下を指で軽くたたいたときにポシャポシャと水の揺れる音が聞こえます。
  小青竜湯を1〜2週間服用して効果が現れない場合、証に合わせて薬を替えましょう。
  実証の人には、麻黄湯 (まおうとう)葛根湯 (かっこんとう)辛夷清肺湯 (しんいせいはいとう)を使います。
麻黄湯 鼻づまりがあり、体の節々が痛い人に適している
葛根湯 頭痛・肩こりの人に適している
辛夷清肺湯 蓄膿症のように鼻づまりがひどい人に適している
虚証の人には、 麦門冬湯 (ばくもんどうとう)麻黄附子細辛湯 (まおうぶしさいしんとう)苓甘姜味辛夏仁湯 (りょうかんきょうみしんげにんとう)を使います。
麦門冬湯 のどにへばりつくような濃厚なタンが出て、のどが乾き、乾いたセキが出る人に適している
麻黄附子細辛湯  冷え症で、のどがチクチクと痛む人に適している
苓甘姜味辛夏仁湯 むくみがちで、タンやセキが出る人に適している
  小青竜湯麻黄湯葛根湯麻黄附子細辛湯には、麻黄という生薬が含まれています。麻黄を飲むと心臓や胃腸などに負担がかかる人もいるので、注意が必要です。また、麻黄を含む漢方薬は、長時間服用しないようにしましょう。
 漢方薬には、症状をおさえると同時に、体質の改善にも役立つものがあります。
  小青竜湯では症状が止まらなかった場合、中間証の人には柴胡桂枝湯 (さいこけいしとう)荊芥連翹湯 (けいがいれんぎょうとう)、虚証の人には、柴胡桂枝乾姜湯 (さいこけいしかんきょうとう)を使います。
柴胡桂枝湯 口に中が苦いと感じる人に適している
荊芥連翹湯 肌の色が黒い人に適している
柴胡桂枝乾姜湯 疲れやすく、不眠症の人に適している
  また、体質改善が目的の場合、実証の人には大柴胡湯 (だいさいことう)、中間証の人には小柴胡湯(しょうさいことう)を使います。
  大柴胡湯小柴胡湯柴胡桂枝湯荊芥連翹湯柴胡桂枝乾姜湯など、体質を改善させる漢方薬は、花粉症が現れる時期の3ヵ月前から飲むと、症状の予防や軽減に役立ちます。
 では、漢方薬で花粉症が改善した39歳の女性の例を紹介しましょう。
  この女性は、身長が156cm、体重が43kgで、やや虚弱体質でした。そして、スギ、カモガヤ、ブタクサなどの花粉と、ハウスダスト(室内のほこり)に、20年前からアレルギー反応を起こしていました。1年じゅう、鼻水や鼻づまり、タンなどに悩まされ抗アレルギー薬を服用していました。
  私が最初に診断したときには、彼女の舌に歯痕がありました。歯痕とは、舌のわきにできたギザギザで、水分代謝が悪くなっているときに現れます(代謝とは、体内での物質の利用と排せつ)。また、、胃内停水は水毒を、へそ周りの圧痛はお血を示しています。そこで、虚証に近い中間証と診断しました。
  まず処方した漢方薬は、小青竜湯立君子湯(りっくんしとう)です。ところが、小青竜湯に含まれている麻黄にアレルギー反応を起こし、吐き気や胃のむかつきが現れました。
  そこで、小青竜湯立君子湯をやめ、麦門冬湯補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を処方しました。補中益気湯は、虚証で体力が衰えている人に使う漢方薬です。
  すると1ヵ月で、のどの乾燥感とタン、鼻づまりが取れてきて、花粉症が全般的に改善してきました。
  このように、長年続いた花粉症でも漢方薬は効果を発揮しますが、やはり日常生活での花粉対策が大切です。花粉が飛散する時期になったら、特に気温が高く風が強い日には、外出時に目や鼻に花粉が入らないよう、マスクと眼鏡を装着しましょう。そして帰宅後には、顔を水でよく洗うように心がけてください。




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