女性のための漢方ノート

以下は健康雑誌「ゆほびか」2005年1月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。


ニキビ - 連載第21回 -

30〜40代でも悩む人は多い
  ニキビは、毛嚢(皮膚の中で毛根を包んでいる組織)に皮脂がたまってできる皮膚の症状です。
  皮脂に細菌が感染すると、まず、ブツブツの面疱ができます。少し炎症が始まると、赤くなって盛り上がった丘疹ができます。さらに、黄色いウミがたまる膿疱へ進むこともあります。
  ニキビは、顔だけでなく、背中や胸にできることもあります。
  10代の半ばから後半にかけての思春期にニキビができやすくなるのは、性ホルモンの急激な増加によって、皮脂の分泌が活発になるためです。
  しかし、睡眠不足や月経などでホルモン分泌が乱れ、皮脂量がふえると、年代に関係なく、ニキビはできます。
  実際、最近では30〜40代の女性が、ニキビに悩まされるケースもよく見られるようになってきました。特に、肉類が好きで、胃腸の調子が悪く、便秘がちの女性に、ニキビが多いようです。
  西洋医学では、外用の抗菌・抗炎症剤と内服の抗生物質で、ニキビ治療をするのが一般的です。これは局所的な対症療法ですが、漢方はニキビができやすい体質自体を変えるように治療します。
  漢方のニキビ治療では、血液循環をよくすることに主軸を置きます。その理由は、ニキビがお血(おけつ・血液の流れが滞った状態)の現れだからです。月経不順や便秘、のぼせやすい傾向も、お血と関係があります。
  体力のある実証と体力のない虚証を比較すると、ニキビが圧倒的に多いのは実証です。
  実証の人はお血がひどく、赤ら顔で、皮膚が脂ぎっています。そして、ニキビは化膿して、先端がとがっています。
  一方、虚証の人は、お血は軽いのですが、手足が冷え、顔が青白くて皮膚は乾燥しています。ニキビはあまり化膿しないため、赤くならず、それほど盛り上がりません。
  ニキビの症状は実証のほうがひどいのですが、虚証だとかえって治りにくい傾向があります。
  実証・虚証のいずれの場合も、血行をよくし、便秘や冷えなどの症状を取るとニキビは改善します。
  実証のニキビに用いる代表的な漢方薬が、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)です。便秘がひどく、顔がやや赤黒くて、へそから骨盤にかけて圧痛点(お血点)があり、冷えのぼせ(頭はのぼせるが、手足は冷える傾向)が著しい場合が適用です。
  それから、清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)も、実証のニキビに用いる漢方薬です。ニキビの先端がとがって化膿し、便秘がちで、冷えはあまりひどくなく、腹部に圧痛点がない場合に使います。
  実証で、ニキビが赤く腫れてウミを持ち、痛みを伴う場合は、十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)が適しています。毒、つまりニキビのウミを散らす漢方薬で、顔以外に背中にニキビがある場合にも用います。
  桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) は、桃核承気湯を適用するほど赤ら顔ではなく、腹部に少しお血があって、月経の異常や便秘、のぼせ、手足の冷えが認められる場合に適用です。

漢方薬での治療で再発も防げる
  実証と虚証との中間の証に用いる漢方薬に、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)があります。
  ニキビが化膿しやすく、慢性の鼻炎を伴う場合に、体質改善のために使います。
  また、温清飲(うんせいいん)は、のぼせ傾向が少しあり、皮膚に多少かゆみがあるときに用います。
  虚証のニキビに用いる漢方薬は、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)です。ニキビの膨らみや赤みはひどくなく、どちらかといえばニキビが茶色っぽくて、貧血と冷え症が現れているときに適しています。
  以上に挙げた漢方薬は、ヨク苡仁(ハトムギ)を併用すると、効果が早く現れます。
  また、便秘がひどい場合は大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)を、胃腸が弱い人は半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)をいっしょに処方します。
  それではここで、ニキビが漢方薬で治った23歳の女性の例を紹介しましょう。
  この女性は、18歳のころから顔にニキビができ、赤く腫れて痛むようになったと言います。ニキビに悩まされる以前から、手足の冷えも感じていました。そして、子供のころからアレルギー性鼻炎だったそうです。
  初診のとき、ほおからあごの下にかけて、広範囲にニキビができていました。診察をすると、舌に歯痕(舌のわきにできたギザギザ)が見られ、水(すい・漢方の概念で、体液全体を指す)の流れが悪い水滞とわかりました。
  みずおちに軽い動悸があり、へその左右に圧痛点があります。便秘と冷え症の傾向があり、口も多少渇くことから、中間の証と診断をしました。ちなみに身長は163cmで、体重は51kgでした。
  そこで、荊芥連翹湯桂枝茯苓丸を、この女性に処方しました。桂枝茯苓丸を併用したのは、へその周囲に圧痛点が見られ、お血があると判断したからです。
  この2つの漢方薬を服用すると、2週間でニキビの赤みがだいぶ取れてきて、本人も調子がいいと言います。そこで、荊芥連翹湯清上防風湯に替えました。
  清上防風湯桂枝茯苓丸を服用するようになって4ヵ月たつと、ニキビはかなり改善してきました。同時に、お血も軽くなり、冷えが解消しました。
  そして、初診から6ヵ月たった時点では、ニキビはほとんど治り、右ほおに2ヵ所、小さな紫色の点を残すだけになったのです。
  この時点でも舌の歯痕は取れていなかったので、さらに5ヵ月間、漢方薬の服用を続けてもらいました。この期間は、ヨク苡仁も加えました。ヨク苡仁には、水の巡りを改善する効果があるからです。
  その結果、顔の状態は非常によくなり、ニキビは治癒したと私は判断しました。
  それ以降、この女性はニキビがたまに再発することがありますが、そのときは清上防風湯を短期間服用するだけで改善しています。
  ニキビの特徴は、同じ場所にいくつもでき、いったん治っても再発しやすいことです。しかし、漢方薬で体質を改善すれば、ニキビの再発も防げます。また、赤ら顔やのぼせ、ほてり、月経の異常など、ニキビに伴って現れる症状が同時に解消します。
  長期間、ニキビに悩まされている人は、漢方薬を試してみるといいでしょう。

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