女性のための漢方ノート

以下は健康雑誌「ゆほびか」2005年3月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。

アトピー性皮膚炎 - 連載第23回 -

体質を診断し漢方薬を選ぶ
  アトピー性皮膚炎はアレルギー疾患の一つです。アレルギー性鼻炎や花粉症、気管支ぜんそくなどと同じ仲間で、こうした症状がアトピー性皮膚炎と同時に起こることも少なくありません。
  アレルギーは免疫(病原体を退けて体を守るしくみ)の異常で、特定の物質に対して過敏に反応し、健康に不利益な症状が現れます。
  アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴う湿疹が主症状です。そして、症状は体の左右対称に現れ、首の両側、ひじのくぼみ、ひざの裏側など柔らかいところによく見られます。また、いったん症状が治まっても、しばらくすると繰り返し起こります。
  もともとの過敏な体質に加え、ホコリやダニ、化学物質、化粧品、衣服の繊維、食品などが刺激となって、アトピー性皮膚炎が現れます。また、ストレスも大きく影響しているようです。
  多くは子どものときに発症し、成人すると治りますが、成人後も治らなかったり、成人後に発症したりする場合もあります。
  症状の現れ方は、年齢によって変わります。一般に、子どものころはジュクジュクしていますが、成人するにしたがってカサカサに乾燥して、赤くなってきます。いずれの場合も強いかゆみを伴います。
  アトピー性皮膚炎は原因を特定しにくいので、西洋医学では、アレルギーをおさえる抗ヒスタミン剤や、炎症をおさえるステロイド剤など、対症療法が主流です。
  一方、漢方では、体質そのものを改善します。
  アトピー性皮膚炎は、水の流れが悪い水毒や、血が滞っているお血(おけつ)の人に起こると考えます(水・血とも漢方の概念で、水は体液、血は血液を指す)。そして、体力が弱い虚証より、頑健な実証や比較的体力のある中間証の人に多く見られます。
  実証の人は炎症が強く、患部が赤くなり、化膿してジュクジュクする傾向があります。のぼせやすく、のどが渇き、便秘も見られます。虚証の場合は、患部が乾燥しがちで、胃腸の調子も悪く、手足の冷えがあります。
  漢方薬は、体質によって選ぶことが重要です。
  実証の大人で、患部がジュクジュクして赤みがあり、かゆみが強い場合には消風散(しょうふうさん)を用います。似たタイプで、化膿がひどければ十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)を使うことがあります。
  実証に使う漢方薬は、ほかにもあります。便秘傾向で、患部が非常にかゆく、ジュクジュクし、かさぶたができている場合は治頭瘡一方(じずそういっぽう)が適しています。
  患部が赤くなってかゆく、のどの渇きを訴えているときは、石膏を配合している白虎加桂枝湯(びゃっこかけいしとう)白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)を用います。石膏は炎症をおさえる作用がすぐれています。のぼせやすい場合は白虎加桂枝湯を、みずおちにつかえがある場合は白虎加人参湯を選びます。
  中間証で、汗をかきやすく、尿が出にくくて、のども渇き、患部の炎症が強く、多少ジュクジュクし、はれぼったい場合は越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)が適しています。水毒が強く、冷えやむくみがあり、はれもひどい場合は越婢加朮附湯(えっぴかじゅつぶとう)にします。
  温清飲(うんせいいん)は、猛烈にかゆくて、体が少し熱っぽいときによく用います。
  また、筋肉質で、肌が浅黒く、よく手足に汗をかく場合は、体質改善を目的に荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)を処方します。
  虚証に用いる代表的な漢方薬が当帰飲子(とうきいんし)です。高齢で、患部が乾燥してカサカサし、強いかゆみを伴う場合が適用です。子どもや若い人には桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)を用います。

2週間の服用でかゆみが取れてきた
  今回紹介する症例は、21歳のOLです。生後1ヵ月でアトピー性皮膚炎を発症し、そのときから外用のステロイド剤を使ってきたそうです。小児ぜんそくもありました。大人になっても治らず、悪化したり軽くなったりを繰り返してきました。
  平成16年3月8日にステロイド剤の使用をやめたら、一気に症状がひどくなり、その2週間後に来院しました。これを機に、ステロイド剤に頼ることなく根治させたいとのことです。
  炎症は全身に及び、赤くはれていて、肌がポロポロとむけている箇所もありました。顔は赤くないのですが、むくんでいて、目の周りがヒリヒリすると訴えていました。
  診断すると、舌の縁にギザギザとした歯痕と、白苔(白っぽい舌のコケ)がありました。これらは水毒の現れです。冷え症で、よく汗をかくと言います。お血はありません。
  身長164cm、体重48kgで、血圧は正常でした。
  以上を踏まえて、彼女を中間証と診断しました。
  3月下旬に血液検査をしたところ、白血球の一種である好酸球が多いとわかりました。健康な人では、好酸球が白血球の0〜7%ですが、彼女の場合は28%でした。
  アトピー性皮膚炎については、体内でIgE(免疫グロブリンE)というたんぱく質ができて、炎症やかゆみが起こると考えられています。また、症状が現れるときは、好酸球が体内でふえているのです。
  そこで、白虎加桂枝湯荊芥連翹湯温清飲の3つの漢方薬を処方しました。白虎加桂枝湯は、顔のほてりや口の渇きを取り、水毒にも効きます。
  この3つの漢方薬を服用し始めたら、2週間でかゆみが取れてきて、1ヵ月後には赤みもかなり薄くなっています。
  ただ、まだ体がほてると言うので、3ヵ月目に白虎加桂枝湯の石膏の量を少しふやしました。すると、赤みはほとんど消え、背中に少し出ている程度になりました。
  4ヵ月半が経過した時点で、乾燥肌が残っていたので、白虎加桂枝湯をやめて、荊芥連翹湯温清飲の2つの漢方薬を続けてもらいました。
  8月に血液検査をしたところ、好酸球の割合が18%にへっていて、アレルギー反応が軽くなったことが確認できました。
  11月末で、肌がまだ乾燥していて、のどが多少渇くと言うので、白虎加桂枝湯温清飲を服用してもらい、経過を見ています。




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