漢方掲載記事−昌平クリニック院長・鍋谷欣市−

この記事は 「安心」2005年8月号別冊「ひざ痛スッキリ解消事典」(マキノ出版)に掲載されました

体内の水のめぐりをよくしてひざ痛を治し ひざに水もたまりにくくする漢方薬

ひざ痛になりやすい体質を変えていく
 ひざの痛みを引き起こす疾患はいくつかありますが、なかでも多いのが、変形性ひざ関節症です。
 変形性ひざ関節症の痛みは、ひざ関節の軟骨がすりへり、ひざの骨同士がこすれ合うことによって起こります。いわゆる老化現象ですが、漢方の観点から見ると、患者さんの体質に、ある程度の共通点が見られます。

(1)「水毒」状態である
  変形性ひざ関節症の患者さんには、「色白で、水太りの肥満である」という傾向がみられます。これは漢方でいう「水毒」の状態で、体内の水分のめぐりが悪くなっています。
  変形性ひざ関節症では、ひざに水がたまることがありますが、それを考えると、「なるほど」と納得がいくでしょう。水の代謝(体内での物質の変化や入れ替わり)がうまくいかないために、ひざに水がたまってしまうのです。
  また、変形性ひざ関節症の患者さんには、汗かき、冷え症、耳鳴り、めまいを伴う人も多く見られます。これも水毒から起こってくる症状です。

(2)「虚症」タイプである
  変形性ひざ関節症になりやすいのは、太っていても体力のない人です。こういう体質のタイプを、漢方では「虚症」といいます。
  逆に、太っていても体力があり、体格ががっちりしていて筋肉質の「実証」タイプの人は、変形性ひざ関節症になりにくいようです。

(3)血のめぐりが悪い
  変形性ひざ関節症の人は、体をどこかにぶつけると、その部分がすぐ内出血する体質の人が多くみられます。これは体内の血のめぐりが悪くなっていることを示しています。こうした状態を、漢方では「お血(おけつ)」といいます。

  変形性ひざ関節症の漢方治療では、こうした体質を改善していくための漢方薬の処方がメインとなります。
  なかでも最もよく使われる漢方薬は、防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)です。
  薬名にもなっている「防已」は、オオツヅラフジの茎と根。「黄耆」はキバナオウギの根。どちらも体内の水のめぐりをよくする利水剤です。そのほか、滋養強壮、栄養補給などの役割を果たす四種類の生薬(漢方薬の原材料)を組み合わせた処方になっています。
  防已黄耆湯は、腎炎やネフローゼ、多汗症や肥満、むくみなどにも効果があります。めまいや耳鳴りなど、水毒の症状も取り除くことができます。また、関節リウマチの腫れや痛みを取るときにも使えます。
  私は、防已黄耆湯麻黄(まおう)を加えて処方することが多いのですが、痛みによく効くとともに、腫れや熱感をも発散してくれます。ただ、人によっては胃腸をいためる場合があるので、きちんと体の具合を診て処方することが大事です。
  ほかに、体力が中等度の人には、五積散(ごしゃくさん)ヨク苡仁湯(よくいにんとう)麻杏ヨク甘湯(まきょうよくかんとう)を。もっと体力がある人には、越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)を使うこともあります。
  では、漢方治療でひざ痛が改善した症例をいくつかご紹介しましょう。

Iさん(女性・75歳)
  3年前からひざの痛みがあり、変形性ひざ関節症と診断されました。注射をしても湿布をしても痛みがとれず、杖をついて歩いていたそうです。
  身長155センチで体重65キロと太っており、舌はむくんでひび割れ、水毒の様相を呈していました。おなかもポコンとふくれ、みずおちにはつかえがあります。
  そこで、防已黄耆湯を飲んでもらったところ、約5週間で痛みがやわらぎ、室内でなら杖が手離せるようになりました。2ヵ月半後にはひざに水がたまらなくなり、半年後には痛みもらくになりました。

Uさん(女性・37歳)
  10年前から両ひざに水がたまるようになり、定期的に抜きに行っていました。この方は太ってはいませんが、関節リウマチの疑いがありました。
  それで、防已黄耆湯越婢加朮湯を半々に用いたのです。飲み始めて2ヵ月めから痛みが軽減し始め、5ヵ月で水がたまらなくなり、1年半ほどたったころには、かなりよくなりました。
  体質を改善して症状を軽減するのが漢方治療ですから、漢方薬は3ヵ月から半年は飲んだほうがよいといえます。
  また、変形性ひざ関節症を予防・改善するには、適正体重を保つことが大切です。体内の水や血の流れを悪くするといけないので、体を冷やさないように心がけてください。すでに痛みが出ている場合は、痛いほうの足を心臓より高くして寝ると、水の戻りがよくなります。




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