鍋谷院長のこの漢方薬が効く!

以下は健康雑誌「壮快」2001年10月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された 記事を要約したものです。


大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)

便秘の人に幅広く使える名薬
便秘と腹満(腹が張ること)の治療に、第一選択される漢方薬といえば大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)です。これは約2000年前の中国で著わされた漢方の原典『金匱要略』に記載された処方です。便秘に悩まされる人は、何千年も前からいたのでしょう。
この処方は、たった二つの生薬(漢方薬の原材料となる草根木皮)、大黄(タデ科の多年草ダイオウの根茎)と甘草(マメ科の多年草カンゾウの根)を組み合わせた簡潔な構成で、非常に広範な人に確実な効果を現すのが大きな特色です。
漢方では患者さんの体力や体質的な特徴、つまり証に基づいて処方が選択されます。そうした証の中で最初に考慮されるのは、体力が充実した実証か、それとも虚弱な虚証か、その中間の中間証であるかという点です。虚証の人に実証向けの薬を使ったり、実証の人に虚証向けの薬を使ったりすると、効果がないばかりか、体調を悪化させてしまうこともあります。
便秘を改善するための漢方薬にも、実証向けと虚証向けがあり、実証向けには大黄とともに芒硝(ぼうしょう・結晶硫酸ナトリウム)が使われ、さらに厚朴(こうぼく・モクレン科のホオノキの樹皮)や枳実(こじつ・ミカン科のダイダイまたはミカンの未熟果実)などの気剤(気を巡らせる薬)が入っているのが特徴です。また、虚証向けには体を温める地黄(じおう・ゴマノハグサ科の多年草アカヤジオウの根)や当帰(とうき・セリ科の多年草トウキの根)、人参(にんじん・ウコギ科の宿根草チョウセンニンジンの根)、附子(ぶし・キンポウゲ科トリカブトの塊根)などが使われているものです。
その点、大黄甘草湯には、実証向けに使われる大黄は入っているものの、芒硝や気剤は使われていません。緩下剤(穏やかに便通をつける薬)としての大黄と、全体を調和させる甘草の二種類だけです。そのため、大黄甘草湯は体力的な証をあまり限定せず、かなり広く使えるのです。

体力別に有効率を調べた
どちらかといえば実証から、中間証のやや虚証寄りの人まで使えますが、場合によってはかなり虚証の人にも使えることがあり、幅広く使えるというのが魅力です。私は以前、手術後の患者さんや高齢の患者さんを対象にして、体力別に大黄甘草湯の有効率を調べたことがあります。
その結果、有効率は、
●実証・・・・80%
●中間証・・83%
●虚証・・・・67%
となり、かなり幅広く使えることが数字にも現れました。ただし、虚証の人では効きすぎて下痢をする人が約30%、かなり実証の人では効き目が不十分だったという人が約25%ありました。
このように、大黄甘草湯は便秘や腹満を治療したいとき、あまり体力にこだわらずに使える漢方薬です。この処方の名前は大黄甘草湯で、本来は煎じ薬として作られました。それをさらに使いやすくしたのが、四国の讃岐の漢方医の御池平作で、彼は大黄甘草湯の丸薬、大黄甘草丸、略して大甘丸(だいかんがん)を作りました。丸薬なら、服用量の調節が簡単です。大甘丸は一粒が100ミリグラムです。一日に30粒、つまり3グラムを服用するのが基本です。しかし、先ほどのデータからもわかるように、実証の人には効き目が弱いこともあり、虚証の人には効きすぎることもあります。
そこで、効き目が弱い人には40粒(4グラム)、50粒(5グラム)、60粒(6グラム)と増量し、効き目が強すぎる人には、20粒(2グラム)、10粒(1グラム)と減量してみればいいのです。こうした使い方は丸薬だからこそ簡単にできることです。

快便になり不眠、肩こりも解消
それでは、大黄甘草湯で便秘を改善した実例を紹介しましょう。Aさん(68歳の女性)は10年前から便秘に悩まされるようになったと訴えて来院しました。23歳のときに虫垂炎(盲腸の左後壁の下部から出ている細い管状の虫垂に起こった急性の炎症)、30歳のときに子宮後屈(正常な状態では前傾・前屈である子宮が後方に屈曲している状態)の手術を受けたといいます。不眠があり、やや冷え性で、肩こりもあるそうです。身長152センチ、体重51キロと、やや太り気味でしょうか。
腹診(腹部を触診すること)をすると、へその周囲にお血(おけつ・血液が滞ること)を示す圧痛点(圧痛とは押すと感じる痛み)が著名にあり、へその下はふにゃふにゃと無力な臍下不仁という証を示していました。全般的な状態から中間証と判断し、大黄甘草湯と、お血を改善する桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を処方しました。
これらの服用を始めると、1週間後ごろから便通がよくなり、1ヶ月後にはすっかり快便になったといいます。便が毎日出るうえに、不眠と肩こりも解消するなど、全身症状も改善したのです。その後も大黄甘草湯の服用を続け、約2年後には腹部の圧痛も軽快しました。その後も服用を続けています。
大甘丸は前述のとおり量の加減が容易ですが、実際に次のような使い方ができます。便秘を訴えるBさん(50歳代の女性)はやや虚証と思われたので、大甘丸の基本量の3分の2に当たる20粒を処方しました。1週間後、便通がつきすぎて下痢をしたと訴えるので、さらに半量の10粒にしました。しかし、それでも効きすぎるので、自分で少しずつ調整し、7粒か8粒がちょうどいいことがわかったそうです。
逆にかなりの実証の人の場合、90粒程度使ってようやく効果が出ることがあります。こういう人は、実証向けの大黄芒硝、気剤の入った処方を併用するほうがより効果的です。
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● 漢方治療はその時のその人に合った薬を微調整するオーダーメイド処方です。
  必ず専門の医師にご相談ください。

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