鍋谷院長のこの漢方薬が効く!

以下は健康雑誌「壮快」2月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された 記事を要約したものです。


葛根湯 (かっこんとう)

どんな病人にも葛根湯を出した!?
葛根湯は、カゼの妙薬として有名な漢方薬です。また、漢方薬としても最も有名といっていいかもしれません。
 葛根湯
は、約2000年前に中国で著された漢方の古典『傷寒論(しょうかんろん)』ですでに記述されています。
 我が国では特になじみ深く、江戸時代には「葛根湯医者」などという言葉もあったほどです。どんな病人にも葛根湯を出す医者のことをいったのですが、そこそこ繁盛していたそうです。葛根湯はそのくらい適応範囲が広く、よく効く薬だということでしょう。
 葛根湯
は優れたカゼ薬として威力を発揮します。カゼは万病のもとといわれ、実際、軽視できない危険をはらんだ病気といえます。葛根湯は、そんなカゼを着実におさえてくれるのです。
 葛根湯が得意とするのは、特に初期カゼです。漢方では体の表面を「表」、奥のほうを「裏」と呼び、病気も表から裏に進むと考えます。病気がまだ裏に進まず、表にある段階のカゼに葛根湯は最も強く効果を発揮します。
 この状態を現代医学的にいうと、初期免疫(後述)といいます。つまり、非常に微細な病原体のウイルスが体内に侵入して増加すると、まず初めにウイルスに対抗するナチュラルキラー細胞(NK細胞)が出てきて、ウイルスを撃退しようとします。これが病気に対抗する体に備わったしくみで、このしくみを免疫といいます。そして、しばらく後から本格的な免疫が作動して、キラーT細胞などが働き始めます。
 葛根湯
は、キラーT細胞などの免疫機構が働く前の、NK細胞が働く初期の段階で時期を失せずに使用すると、みごとな効果を現すのです。
 葛根湯
がよく効く症状の目安は次のようなものです。
 
カゼの初期の頭痛、発熱、寒気があり、「汗をかいていないこと」が重要なポイントです。なぜかというと、体力のある実証と呼ばれるタイプの人は一般に汗をかきにくいものです。このタイプの人は、病気と闘っているときも、なかなか汗をかきません。葛根湯は、こうした実証の人向けの薬なのです。
 そして、葛根湯が適合するのに、首筋のうなじの筋肉が非常にこって硬くなっている症状が挙げられます。頭痛、発熱、寒気があり、発汗がなく、こりのために首と肩をすぼめた様子を、漢方の古典では「今にも飛び立とうとしている鳥の姿」と表記し、このような状態に葛根湯は奏功すると述べています。
 ちなみに、もし、頭痛、発熱、寒気とともに汗をかいている人は、やや体力の弱い虚証タイプなので、桂枝湯(けいしとう)を使うことになります。カゼの初期で汗をかいている虚証向けの桂枝湯と、カゼの初期で汗をかいていない実証向けの葛根湯は、実はよく似た薬なのです。

必ず熱めの湯で飲むのがコツ
 桂枝湯
は、桂枝(クスノキ科のケイおよびニッケイ類の枝皮。のぼせ、頭痛を治す)、芍薬(ボタン科のシャクヤクの根を乾燥、または蒸乾させたもの。筋肉のけいれんと痛みを治す)、大棗(クロウメモドキ科のナツメの果実。血のめぐりをよくして全身を潤す)、甘草(マメ科のカンゾウ類の根。調和させ栄養を与える)、生姜(ショウガ科のショウガの根茎。一種の生命エネルギーである気や水をめぐらせる)の5つの生薬からできていますが、これに葛根(マメ科のクズの根の外皮を削り乾かしたもの)と麻黄(マオウ科のシナマオウおよび同族植物の茎)を加えたものが葛根湯なのです。
 
葛根の成分には、筋肉のけいれんやこりを取るパパベリンが含まれ、麻黄の主成分は、セキをとめるエフェドリンです。桂枝湯にこの2つを加えるだけで、虚証向けの薬から実証向けのカゼの薬になるわけです。
 葛根湯
は即効性があり、服用して30分もすると体が温まり、じわりと汗ばんで、それまで突っ張っていた筋肉のこりが取れていきます。そして、そのまま布団をかぶり、体を冷やさないようにして一晩休めば、翌朝にはひきかけのカゼはどこかに吹き飛んでいるのです。
 さきほど、江戸時代の葛根湯医者の話をしましたが、実際に葛根湯は非常に広い応用範囲を持っています。
 カゼの初期が第一の効用だとすると、第二は肩こり、五十肩、蓄膿症、中耳炎など、こりや炎症を鎮めて充血を取り去る作用です。
 第三に、化膿止めの作用があります。面疔(顔にできる腫れ物)、リンパ節炎(病原菌から体を守るのに大きな役割を果たすリンパ節の炎症)、湿しん、皮膚炎に応用されます。
 第四に、カゼで下痢をしたときに使うと、カゼとともに下痢も止めることができます。まだ抗生物質がなかったころ、急性の大腸炎や赤痢に葛根湯を使い、効果があったと記録されています。
 そういう点で、ウイルスや細菌性の病気にも葛根湯は一定の効果があります。
 実は私も葛根湯は日ごろからよく服用して健康維持に役立てています。カゼの初期はもちろんですが、カゼでなくても、体が疲れて調子が悪いときに飲むと体調がよくなりますし、勉強疲れで頭がぼんやりしたときなどに飲むと肩のこりがとれてすっきりとします。
 カゼの初期に葛根湯を飲むときには、コツがあります。
 必ず、熱めのお湯で飲むことです。カゼの初期にはウイルスとの戦いによる闘病反応で、熱がでます。体が温まっていたほうが血液の循環もよく、体の防衛機構もよく働くので、体を冷やすべきではありません。その意味で、葛根湯も熱めのお湯でに溶かして飲むほうがよく効きます。
 なお、体が弱々しい人、胃腸が弱い人には葛根湯は使えません。そういう人たちには、桂枝湯香蘇散(こうそさん)などの処方が適合するでしょう。

line

● 漢方治療は、その時のその人に合った薬を微調整するオーダーメイド処方です。
当クリニックでは、経験豊富な漢方医があなたに合った治療を提案します。お気軽にご相談ください。



Copyright(C)昌平クリニック.記事の無断転載を禁じます