鍋谷院長のこの漢方薬が効く!

以下は健康雑誌「壮快」2001年6月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された 記事を要約したものです。


防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

身体の中の余分な毒を排出させる
防風通聖散は、1172年に中国の劉河間(りゅうかかん)によって著された『宣明論(せんめいろん)』に記された薬です。つまり、今から800年余り前に考案された漢方薬なのです。800年前の古い薬ですが、実はこれほど現代人にぴったりと合った漢方薬もありません。
現代の特に我が国では、過食と運動不足による栄養過剰、あるいは栄養バランスの乱れ、肥満症、高脂血症(血液中の脂肪が異常に多い状態)、それらに伴う動脈硬化、高血圧症、糖尿病などの生活習慣病が多くの人の健康を脅かしています。
従来、日本人は肉や脂肪は控えめで、適当な量の魚、野菜、ダイズ製品、海藻類、キノコ類などを偏りなく食べていました。しかし最近は、エネルギー過剰となり、脂肪や砂糖を取りすぎて、必要なビタミンやミネラルが不足しがちです。
身体の中に余分なエネルギーが入りすぎ、あり余った状態になっています。その結果、動脈硬化、高血圧症、糖尿病、通風(手や足の関節が腫れて、激しく痛む病気)、高脂血症、肥満症などが起こっています。
漢方ではこれらの病気を、体の中に過剰に入った栄養が毒素となり、たくさんの毒がたまったために起こる病気、つまり過多の病気を考えています。
そこで、体の中にたまった余分な毒を体の外に排出するためにつくられたのが、この防風通聖散という漢方薬なのです。
栄養や体力が充満しすぎて不調が起こるわけですが、その体内の余分なエネルギーや毒素を外に出すことを「瀉(しゃ)する」といい、そうした性質を持つ薬を瀉剤と呼びます。反対に、栄養や体力が不足して体調が悪い人に栄養やエネルギーを補うことは「補する」といい、そのような薬を補剤と呼びます。防風通聖散は代表的な瀉剤です。


肥満や糖尿病を防ぎ治す名薬
漢方には表と裏の概念があります。病が表にあるというのは、カゼのひき始めなどで頭痛、寒気、発熱などがある状態をいいます。病が裏にあるというのは、病気が消化器や腹部に進行した状態をいいます。防風通聖散は、裏、つまり腹部にたまった毒を攻め下すのです。
そのために、防風通聖散は18種類の生薬(漢方薬の原材料となる草根木皮)から構成されています。このうち、主成分は
大黄(だいおう・タデ科の大形草木ダイオウ属植物の根茎)
芒硝(ぼうしょう・天然の硫酸ナトリウム)
甘草(かんぞう・マメ科の多年草カンゾウ類の根)
の3つです。 大黄は、便秘を解消して炎症を改善します。芒硝も便秘を解消する薬で、大黄との組み合わせでさらに威力を発揮します。

さらに、皮膚の毒を出すための
麻黄(まおう・マオウ科のシナマオウおよび同属植物の茎)
防風
(ぼうふう・セリ科のボウフウの根)
荊芥
(けいがい・シソ科のケイガイアリタソウの全草)
が含まれ、これらは解熱、解毒の役割を果たします。 尿をどんどん出すために、
白朮
(びゃくじゅつ・キク科のオケラの根茎)
滑石(かっせき・含水珪酸マグネシウムを主成分とするやわらかい鉱物)
も含まれています。
これらの働きで、食毒(食事による毒)、水毒(水の偏在による毒)、風毒(カゼなどの毒)などあらゆる毒を体の外に排出するのです。

とはいえ、18種類全部が毒を発散させる薬ではなく、バランスを取るために、
当帰(とうき・セリ科のトウキおよびホッカイトウキの根)
川きゅう
(せんきゅう・セリ科のマルバトウキの類の根茎)
芍薬(しゃくやく・ボタン科のシャクヤクの根を乾燥、または蒸乾させたもの)
などの補剤も含まれています。
これらは料理でいえば隠し味のように働いて、体の毒を出す作用を強めます。

この防風通聖散が適応するのは、食べ過ぎのために栄養があり余り、腹の中に毒素を持て余している人です。具体的には、体力が充実していて、腹が膨れ上がっているような、色白で肥満した人です。そういう人のあらゆる症状に効果を発揮します。
肥満、糖尿病、腎炎、脚気、脳卒中の予防などのほか、治りにくい湿疹面疔(顔にできる悪性の腫れ物)、蓄膿症などにも使われます。また、防風通聖散が適応するタイプの人は、体の中に脂肪が充満していて、動脈硬化が進みやすくなります。防風通聖散は高脂血症をおさえて動脈硬化を予防する働きも期待できます。
この薬を飲むと、解毒作用の一つとして、下痢をすることがあります。しかし、それも長くは続きません。下痢のあとは便秘も解消し、適切に便通が起こって、体が整えられていきます。腹部の毒だけでなく、血管の中や皮膚の毒なども排出されていくので、だんだんと肥満も解消されていきます。
このように、過食と飽食の現代人にぴったりの薬が、約800年前の中国で考えられたわけですが、なぜそんな時代にこの薬がつくられたのでしょうか。当時の宮廷につかえていた高官にも、食べすぎで体に毒を充満させていた飽食の徒がいて、彼らのために考えられた薬だったのかもしれません。
 防風通聖散で体調を改善した実例を紹介しましょう。
Aさん(57歳の主婦)は、コレステロールが306ミリグラム、中性脂肪(肥満の原因となる脂肪)が245ミリグラムで、肝機能もよくないと指摘されたそうです。そこで、防風通聖散桂枝茯苓丸を服用してもらったところ、だんだんと検査値は改善し、1年ほどでコレステロールも中性脂肪も正常値に戻りました。
Bさん(63歳の男性)は中性脂肪が190ミリグラムもありました。 防風通聖散を飲んだところ、少しずつ改善し、4年ほどかかって正常値に回復し、78キロの体重が73キロにへりました。
このように、 防風通聖散を飲んでも、コレステロールなどの検査値がよくなるまではいくらか時間がかかります。しかし、逆に何年も飲みつづけても副作用の心配もなく、体調を良好に維持することができます。
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