鍋谷院長のこの漢方薬が効く!

以下は健康雑誌「壮快」2001年7月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された 記事を要約したものです。


防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)

水太りタイプによく効く名薬
肥満に悩まされている人は少なくありませんが、昔も今も多く見られるのが水太りタイプの肥満です。このタイプは女性に多いのが特徴でしょう。
また、中年以降になると、変形性膝関節症などによるひざの痛みに苦しめられる女性がふえますが、そういう女性の多くが、水太りタイプでもあるのです。
防已黄耆湯は、水太りタイプの肥満や変形性膝関節症、そのほかの病気の改善に卓効を示す漢方薬です。
黄耆湯はその名前のとおり、 黄耆を主薬とする全部で6種類の生薬(漢方薬の原材料となる草根木皮)から構成された処方です。
防已(ぼうい) ツヅラフジ科の多年草オオツヅラフジのつる茎または根茎を輪切りにしたもの。体の水を巡らせて、痛みを取り去る薬です。
黄耆(おうぎ) マメ科のキバナオウギおよびナイモウオウギの根を乾燥させたもの。もともと滋養強壮剤ですが、やはり水を巡らせ、汗を止める作用があります。
蒼朮(そうじゅつ) キク科の多年草オケラの根茎のヒゲ根を除いたもの。これも体の水を巡らせる利水剤で、鎮痛作用もあります。
生姜(しょうきょう) ショウガ科の多年草ショウガの根茎。体を温めて吐き気を止め、胃腸の働きを高めます。
大棗(たいそう) クロウメモドキ科の落葉高木ナツメの成熟した果実。漢方の栄養剤です。
甘草(かんぞう) マメ科の多年草カンゾウ類の根。体のいろいろなバランスを整え、痛みやけいれんを鎮めます。
黄耆湯を構成する6つの生薬のうち、防己黄耆蒼朮の3種類が水を巡らせる利水剤です。

体内の水はけをよくして治す
漢方では、気(き)・血(けつ)・水(すい)が体の基本的な3つの要素で、これらがうまく循環することで健康が保たれていると考えます。
しかし、これらはしばしば滞りを起こし、不調の原因になります。
気が滞った状態は気滞(きたい)と呼ばれ、元気がない、生気がない、のどが詰まったような不快感、精神不安、多様な不定愁訴などの症状が引き起こされることがあります。
血が滞った状態はお血(おけつ)と呼ばれ、腹部の圧痛(押すと感じる痛み)、女性性器機能の不調、肌荒れなどの原因になることがあります。
水が滞った状態は水毒(または水滞(すいたい))と呼ばれ、関節痛、吐き気、めまい、むくみなどの原因となりますが、利水剤は水毒を改善してこれらの症状を解消するために働きます。 黄耆湯は水毒を改善する代表的な利水剤なのです。黄耆湯が適する証(漢方的な診断目標)は、色白で水太り、汗をかきやすく、どちらかというと虚症(体力が衰弱していること)です。
こうしたタイプの人の変形性膝関節症、体の節々の痛み、カゼをひいたあと発汗が止まらない、腎臓病、化膿性の面疔(顔にできる悪性の腫れ物)、カリエス(慢性の骨炎によって骨がだんだん溶け出す疾患。主に結核菌によるもの)などの治療に用いられます。そして、さまざまな不調とともに、水太りの肥満そのものも解消してしまいます。
前回の6月号で紹介した防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)にも似たところがありますが、防風通聖散は実証(体力が充実していること)であるがゆえに体の中に毒がたまるタイプが適します。黄耆湯はそれよりも虚証で、体表に水毒があるため気や血が巡らない体の不調が目標になります。

ひざの痛みもむくみも解消
黄耆湯がよく効く病気の1つが、水太りタイプのひざの痛みです。肥満や老化によってひざ関節の軟骨が変形し、痛むのが変形性膝関節症です。黄耆湯を服用すると、その利水作用によって水毒が解消され、水太り、ひざに水がたまる症状などが改善され、ひざの痛みが緩和されます。ひざ関節の変形そのものが改善されるわけではありません。
変形性膝関節症にいくらか似た症状を呈する病気に関節リウマチがありますが、この病気も黄耆湯で改善される場合がしばしばあります。リウマチは全身性の病気で、原因は不明です。リウマチは手や足などの関節に炎症、腫れ、痛みなどの症状を引き起こしますが、ひざにそうした症状が起こったとき、黄耆湯を用いると効果がある場合があります。
それでは黄耆湯で症状を改善した実例を紹介しましょう。
Aさん(76歳の男性)は、右ひざの変形性膝関節症で痛みを訴えました。関節に水がたまることもあり、排液(たまった液を取り除くこと)をしたこともあるそうです。最近は手の指のほうも腫れてきて、検査をしたところ、リウマチの反応も少し出たといいます。
Aさんの症状は水毒によるものと考えられたので、黄耆湯を服用してもらいました。すると、半年ほどで右ひざの痛みはかなり改善しました。以前は足がむくんで、靴下の跡がはっきりと足首についていたのですが、1年ほどでむくみもかなり改善しました。手の指の痛みの進行もおさえられているようです。当初、66キロだった体重は63キロにへりました。
Bさん(75歳の女性)は、事故でひざ関節の半月板を損傷して、ひざの痛みに悩まされていました。水毒体質と考えられたので、黄耆湯を服用してもらったところ、2ヶ月でひざの痛みが改善し、2泊3日の旅行にも出かけることができたと喜ばれました。このような外傷後のひざの痛みにも効果があります。

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