鍋谷院長のこの漢方薬が効く!

以下は健康雑誌「壮快」2001年9月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された 記事を要約したものです。


桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

全身の血の巡りをよくする名薬
漢方は、気(き)・血(けつ)・水(すい)の医学と呼ばれてきました。
大まかにいって、気というのは一種の生命エネルギー、血は血液、水は水分のことです。
この三つの要素が体の中を順調に流れることによって、心身の健康が維持されるのですが、それらの流れが停滞すると様々な不調を起こすのです。漢方薬は、この気・血・水の滞りをよくして病気を改善します。
三つの要素のうち、血の流れが滞ったものはお血(おけつ)と呼ばれ、お血は非常に多くの病気や不調と関係していると考えられています。このお血を改善する漢方薬のことを駆お血剤といいますが、その代表格が桂枝茯苓丸というわけです。
ちなみに気の流れが滞ることを気滞と呼び、気を巡らせる順気剤が用いられます。水の流れが滞ることを水滞、または水毒と呼び、利水剤が用いられます。
お血は、昔は体の中の血液が古くなると、うまく流れなくなり、それが体のあちこちにたまり、いろいろな症状が出ると考えられ、「ふる血の滞り」などともいわれたことがあります。現代的には、血液の粘稠度亢進、末梢循環障害、動脈硬化などがお血と呼ばれる概念と考えられるようになりました。
桂枝茯苓丸は、広範な人に適合し、実に多くの症状を改善する優秀な駆お血剤なのです。
お血を示すいちばんの目標となるのは、お血塊と呼ばれる腹部の抵抗と圧痛(押すと感じる痛み)です。へその左または右、あるいはへその下を手で押すと、独特の抵抗と圧痛が感じられるのです。このようなお血を示す腹証(腹部の目標)が認められ、お血と考えられる症状がある場合には、桂枝茯苓丸が大活躍するわけです。
桂枝茯苓丸は、体力が中等度の人に適合します。中等度といっても、虚証(体力が衰弱していること)から実証(体力が充実していること)までの間の幅広い範囲に使われます。
やや虚証の人や、やや実証の人にも問題なく使える場合が少なくありません。
ただし、かなりの虚証になると、桂枝茯苓丸ではなくて、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)が、かなりの実証になると桃格承気湯(とうかくじょうきとう)が駆お血剤として使用されています。

いわゆる婦人病全般によく効く
桂枝茯苓丸は、以下の五つの生薬(漢方薬の原材料)から構成されています。
桂枝(けいし) クスノキ科ニッケイの枝の皮からコルク層を除いたもの
茯苓(ぶくりょう) アカマツまたはクロマツの切り株の根の周りの土中に生えるサルノコシカケ科マツホドの菌体から外層を取り除いたもの
牡丹皮(ぼたんぴ) ボタン科ボタンの根皮
桃仁(とうにん) バラ科モモの種
芍薬(しゃくやく) ボタン科シャクヤクの根
桂枝、茯苓、牡丹皮の三つの生薬が主薬として働き、桂枝牡丹皮は気と血を巡らせ、茯苓は水をめぐらせて、みずおちの動悸を鎮めます。桃仁も血を巡らせ、芍薬は血を巡らせて痛みやけいれんを取り除きます。五つの生薬すべてが、下腹部の血のうっ滞を和らげ、炎症を取り除いて痛みを緩和させる働きを持っています。
お血の概念は広く、桂枝茯苓丸の適応症も広範囲に及んでいます。例えば、いすなどの角にぶつけてできた足の青あざもお血です。赤い色の強いニキビ、唇や歯茎の暗紫色が強い状態も血の滞りと考えます。
女性の生殖器の異常、月経の不調、更年期障害なども、生殖器に血がうっ滞しているお血と考えます。じんましん、湿しん、ニキビ、シミ、しもやけなどの皮膚病、痔、目の病気などもお血の症状と考えられます。
ですから、桂枝茯苓丸の適応となる病気は、まずは女性の月経の異常や、それに伴う諸症状です。血の道症と呼ばれる更年期障害にも用いられます。不妊症、子宮や卵巣の炎症、卵巣嚢腫、女性ホルモンに関連する乳腺症にも使われたりすることがあります。
お血による腹痛、赤ら顔、ニキビ、シミ、肌のかさかさ、静脈瘤(静脈の一部が詰まって血が滞ってしまう病気)、出血傾向、打ち身、冷え性、痔、睾丸炎、網膜色素変性症(目をカメラにたとえたときにフィルムに相当する網膜に異常が生じる病気)などの目の病気に使われることもあります。

男性にも卓効を示す
それでは、桂枝茯苓丸が奏功した実例を紹介しましょう。
13歳の女子のAさんです。Aさんはニキビとアトピー性皮膚炎を訴えていました。
Aさんは身長154センチで体重57キロと肥満しています。顔にはニキビなのかアトピー性皮膚炎の症状なのか、判然としないブツブツとした赤みがあり、腹部やひざの裏なども赤くなっていました。。
腹診(腹部の症状を診察すること)を行うと、へその周囲に非常に強い圧痛があり、お血症状を示していました。
そこで、桂枝茯苓丸とかゆみとのぼせを取るために温清飲(うんせいいん)を併用してもらいました。すると、約4ヶ月で顔のニキビと、それが化膿した状態はほぼ消失し、わずかに残るだけになりました。
また、へその周囲やひざの裏の赤みもかなりよくなってきました。かゆみもなくなって、楽になったといっていました。腹部の圧痛も弱まり、ひとまず小康を得ているところです。
なお、桂枝茯苓丸というと、もっぱら女性の薬と考えがちですが、そうとはかぎりません。
この処方が適合する女性が多いのも確かですが、お血症状があり、体力が中等度であれば、男性にも卓効を示すことは珍しくありません。
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