漢方掲載記事−昌平クリニック院長・鍋谷欣市−

なかなか治りにくい乾癬も漢方薬の服用でかなり改善させることが可能

以下は、「安心」2001年7月号の永久保存別冊付録「肌の悩み」解消大辞典に掲載された記事です。


患者の精神的な負担が大きい病気
  乾癬(尋常性乾癬)は、顔やひじ、ひざなどに紅斑ができる病気です。紅斑の境界線はハッキリしており、紅斑部は角化して、皮膚からやや盛り上がってきます。左右対称に紅斑が出ることが多いのも特徴で、かゆみを伴うこともあります。
 紅斑部の皮膚が、銀白に輝くフケのようなもの(鱗屑・りんせつ)でおおわれることもありますが、これははがれる場合とそうでない場合があって、はがれないものを無理にはがそうとすると、出血してしまいます。
 乾癬が発症する原因は、遺伝的なもの、免疫(体の防衛機構)の異常などといわれていますが、明確なことはわかっていません。治療にはステロイド(副腎皮質ホルモン)軟膏やビタミンD、免疫増強剤などが用いられるほか、波長の長い紫外線を当てるPUVA(プバ)治療も行われます。
 乾癬は病状が一進一退し、なかなかよくならない病気なので、治療には根気が必要とされます。さらに、人にうつることがないにもかかわらず、見た目がよくないため、患者さんの精神的な負担は非常に大きいのです。そんなことから、病院を転々としたり、治療をあきらめたりする人もいるようです。
 漢方でも、乾癬を短期間で完治させることはできませんが、長期間用いても副作用の心配のない漢方薬を使って、かなり改善させることが可能です。
 東洋医学的に乾癬を見ると、患部はたいてい熱を持ち、血液の流れが悪くなっています。ですから治療に用いるのは、熱をさましてかゆみを取る清熱剤と、血液の滞りを解消させる駆お血剤の2つが中心になります。場合によっては、これに代謝(体内での物質の変化や入れ替わり)に関係するような体質改善薬を加えていきます。
 清熱剤の第一の選択肢には、温清飲(うんせいいん)があげられます。これは鎮静・消炎効果のある黄連解毒湯(おうれんげどくとう)に、補血作用のある四物湯(しもつとう)を加えた処方で、皮膚に赤みがあり、患部の皮膚がフケ状になって落ちる、カサカサした乾癬の治療にはピッタリです。
 また、紅斑部をひっかいて皮膚がジクジクしているようなときには消風散(しょうふうさん)を、のどの渇きを訴えるような人には白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)を用います。
 駆お血剤は、その人の体質によって3種類を使い分けます。体が丈夫で体格も頑丈な人(実証)には桃核蒸気湯(とうかくじょうきとう)、体が弱く冷え性で、おなかがフニャフニャしているような人(虚証)には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、中間の体力の人(中間証)には桂子茯苓丸(けいしぶくりょうがん)が適しています。
 ちなみにおなかを診て、ヘソまわりに圧痛があれば、ほぼ確実に駆お血剤の適応になります。また肥満体の人には、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)が適しています。
 これらの清熱剤と駆お血剤を併用するのが治療の基本となりますが、乾癬の症状は季節によっても変化するうえ、人によって用いる漢方薬の種類も量も違ってくるので、それを判断するには、やはり専門家による診断が必要です。
 では、実際に漢方薬の服用で乾癬がよくなった例をあげましょう。
 Nさん(31歳・女性)は14歳のときに頭とひじ、ひざ、腰に赤い発疹ができました。18歳のときに大学病院で乾癬と診断され、ステロイド軟膏での治療を続けていましたが、治ったと思うと再発し、なかなか完治には至りませんでした。長期使用に不安を感じたため、ステロイド軟膏は26歳のときに使うのをやめたそうです。
 31歳で私のところに来院したときには、両ひじに手のひら大、両ひざにげんこつ大、首と両太もものつけ根、尾骨部、両足首に親指大の、かゆみを伴う紫がかった紅斑が、くっきりと盛り上がっていました。
 Nさんを診断してみると、冷え性だが体の中には熱を持っている、血熱という血のめぐりの悪い状態になっていました。そこで温清飲桂子茯苓丸を処方し、さらに外用薬として、紅斑部に紫雲膏(しうんこう・ゴマ油に当帰や紫根などの生薬を加えた軟膏)を薄くぬるよう指導しました。すると、1ヶ月でかゆみが取れ、紅斑の色が薄くなってきたのです。
 途中、温清飲から四物湯を抜いて黄連解毒湯に変えるなどしながら、さらに2ヶ月すると、紅斑部の盛り上がりが消え、色もまわりから薄くなってきました。
 5ヶ月めぐらいで治り方が停滞してきたので、消風散白虎加人参湯に処方を変えたところ、8ヶ月めには、さらに紅斑が目立たなくなったのです。そして10ヶ月めには、ひざにやや赤みが残るほかは、ほぼ軽快しました。
 乾癬は再発しやすいので、Nさんの場合も、今後の経過を十分に観察する必要がありますが、この例からもわかるように、漢方薬を用いると、乾癬をほぼ完治に導くことが可能です。長引く治療にストレスを感じている人、ステロイド軟膏の長期使用に不安を感じている人は、漢方薬での治療を試してはいかがでしょうか。
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