漢方掲載記事−昌平クリニック院長・鍋谷欣市−

   以下は、日本東洋医学会総会(2010年6月)で発表いたしました。

潰瘍性大腸炎の粘血下痢便に対する漢方処方に青黛を加えた効果について
昌平クリニック院長  鍋谷 欣市

【目的】
  潰瘍性大腸炎における粘血下痢便は、最も主な症状であり、速やかな改善が望まれる。著者らは、漢方処方として桃黄湯(桃花湯合黄土湯変方)、大桃花湯、胃風湯などの効用を、本学会においてしばしば報告してきた。今回はこれらに青黛(せいたい)を加えた処方の粘血下痢便に対する効果について報告する。

方法
  対象は、潰瘍性大腸炎患者の治療経過中、粘血下痢便の長引いた例、再燃例など11例であった。性別では、男性8例、女性3例。年齢では10歳代1例、20歳代5例、30歳代1例、50歳代2例、60歳代2例であった。炎症部位では、直腸型3例、直腸S字結腸型6例、全結腸型2例であった。青黛は原則として、1日量6g(2例のみ初回の1週10g)を分2とし、煎剤と同時に服用させた。

結果
  1〜2週で粘血下痢便の改善をみた著効例は5例あり、中には1日で止血した1例もあった。4週間位で改善した4例を加えると、11例中9例82%の有効率であった。一般にまず血便が消失し、それに伴って便も泥状から有形便となり、回数も減少している。一方、不変の1例は、2週間で著変ないことから青黛の中止を希望したものであり、悪化した例は、服用1日目に腹満腹痛で中止した副作用例であった。青黛の投与期間は、粘血下痢便の改善する4〜6週間としたが、1例は患者の希望で12週間投与した例もあった。

考察
  青黛は、藍(タデ科)からの生成が起源と思われるが、市場においては馬藍(キツネノマゴ科)、松藍(アブラナ科)など数種類が用いられている。今回の青黛は、中国産馬藍より製したものである。本草綱目などにも、解毒、解熱、止血、殺菌作用などが述べられているが、最近では、ウイルス感染を抑制するともいわれており、潰瘍性大腸炎の誘因説のある細菌の抑制効果など、今後さらに検討したい。今回の症例数は極めて少数であるが、粘血下痢便の改善効果は著しいものと考える。

結論
  潰瘍性大腸炎の粘血下痢便に対する漢方処方として、桃黄湯、大桃花湯、胃風湯、啓脾湯などに青黛を加えた処方は有用であると思われた。



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