漢方・掲載記事
この記事は、「安心」2000年7月号の永久保存別冊付録(視力回復大事典)に掲載されました。

緑 内 障

緑内障の手術後に再び上がった眼圧が漢方薬の服用で下がり視力も改善
 緑内障は、「緑盲」「緑目」という名前で、東洋医学でも昔から治療の対象になってきました。
 緑内障になると、眼球内の圧力である眼圧が高くなって瞳孔が広がり、目が飛び出てきます。眼圧は、水晶体のまわりにある房水という液体によって、通常は10〜20ミリぐらいに保たれています。しかし、なんらかの理由により、排出口がふさがれてしまうと、房水が眼球内にたまって、眼圧が高くなるのです。
 排出口がふさがれる理由には、先天的なもの、外傷によるものなどがあげられますが、それ以外のケースについては、よくわかっていません。
 緑内障の症状は、徐々に進行するタイプと、急激に発症して手当てが遅れると失明するおそれのあるタイプとに分けられます。前者は目が疲れやすい、かすむ、頭が重い、電灯のまわりに虹のようなものが見えるなどの症状からはじまり、しだいに視力が衰え、視野が狭くなってきます。後者では、突然頭痛や目の痛み、吐き気などに襲われます。こちらはすぐに適切な治療を行わないと、失明するおそれがあります。
 西洋医学では、まず点眼薬を使って眼圧を下げることを試みます。それで効果が出ないときは、手術で房水の出口を調整し、眼圧を下げる治療を行います。しかし、しばらくすると再び眼圧が上がり、手術をくり返すこともあります。ここが、緑内障治療のむずかしいところです。
 さて、漢方では、緑内障を体内の水の流れが悪いために起こる病気と考えて、滞った水分を順調に流す働きのある
利水剤(りすいざい)で治療します。同時に血液の循環をよくする 駆お血剤(くおけつざい)、精神的な不安や興奮、ストレスをやわらげる気剤(きざい)を用いて、気・血・水の三つの観点から働きかけます。また、胸脇苦満と呼ばれる季肋部(みずおちの両わき)の抵抗感が見られる場合は、柴胡劑 (さいこざい・ミシマサイコの根を処方した漢方薬)を使います。
 患者それぞれのおなかと舌を診たうえで、とくに水分の滞りを解消すればよいのか、それとも胸脇苦満があるから
柴胡劑を使うのがよいのかなどを見立てて、利水剤、気剤、 駆お血剤、柴胡劑のうち、2〜3種類を組み合わせて処方します。
 
利水剤としてよく使う漢方薬は、白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)越ぴ加朮湯(えっぴかじゅつとう)大青竜湯(だいせいりゅうとう)などです。お血を散らす駆お血剤 には桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、または両者をあわせて駆お血丸などを、柴胡劑には柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などを使います。胸脇苦満がみられる場合には、柴胡湯(だいさいことう)も使います。
 とはいえ、緑内障になったら、まずは西洋医学の治療を受けることをおすすめします。すぐに手術で眼圧を下げないと、目が見えなくなるケースもあるからです。
  では、実際の症例を見てみましょう。Yさんは身長178センチ、体重85キロの体格のよい42歳の男性です。緑内障になり、1年半前に左目の手術を受けました。緑内障は両目ともなる場合が多いのですが、片方の目だけのケースもあります。
 ところが、手術して1年後、再び眼圧が22ミリまで上がってきたのです。再手術は避けたいというので、漢方薬による治療を始めました。
  Yさ
んは汗かきで、のどもよく渇くそうです。ヘソの両側にはお血を示す圧痛があり、季肋部の緊張感もありました。そこで柴胡湯、白虎加人参湯駆お血丸を処方したのです。その間、西洋医学の病院で定期的に眼圧を測ってもらっていたのですが、漢方薬を飲み始めると、眼圧が少しずつ下がってきました。そして、ときには数値が少し戻ったりしながらも、4ヵ月後にはほぼ19ミリという正常値範囲内に落ち着いたのです。
 裸眼で0.1、メガネで矯正しても0.3しかなかった左目の視力が、1年2ヵ月後には、裸眼で0.4、矯正後0.8にまで回復しました。漢方薬を飲み始めて2年になる現在は、Yさんの眼圧はすっかり安定し、視力もさらに上がって、裸眼で0.5、矯正後0.9になっています。
 このように、手術の前後に使うと漢方薬は、眼圧のコントロールにかなりの効果を発揮します。しかし、緑内障になる人は、高血圧や糖尿病など、さまざまな病気を合併していることも多いので、まず西洋医学の治療を受け、併用する形で漢方薬を使うのが望ましいでしょう。
 また、目が疲れると涙の循環が悪くなり、網膜に流れる血液の量も少なくなります。さらに、ストレスが加わると気のめぐりも悪くなって、緑内障が発症しやすい環境をつくってしまいます。ふだんから目を酷使するのはなるべく避け、ストレスをためないようにしたいものです。



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