鍋谷院長の漢方なんでも相談室

以下は健康雑誌「壮快」2000年4月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事を要約したものです

体じゅうの湿しんと黒ずみが治らず痔でも悩んでいる
私は21歳になる女性ですが、今、二つの大きな悩みがあります。一つ目は昔からの悩みで、体じゅうの湿しんと黒ずみで、これは一年中治りません。顔、首、胸もと、背中、腕に湿しんができているのです。
それがすぐにシミになってしまったり、ホクロのようになってしまったりすることもあります。目の周り、ひじ、ひざ、胸、太ももの内側、くるぶしの下、わきに黒ずみがあります。目の下にできたシミは特に色が濃くなってしまいました。エステに行くなどいろいろ試しましたが、治りませんでした。さらに、毛穴が赤くなってしまったのですが、これは肌のむだ毛をそるためなのでしょうか。
二つ目は、痔かもしれないということです。排便をする際に切れたような感覚があって、少量の出血がありました。病院には行っていません。
私は、身長が146センチで体重は47キロです。腰も悪く椎間板ヘルニアなのですが、特に肌の湿しんと排便時の出血で悩んでいます。この二つに効く漢方薬を教えて下さい。                (21歳女性/匿名希望)


清熱剤と駆お血剤(くおけつざい:血液の滞りを改善する事)を組み合わせる
昔から体じゅうの湿しんと黒ずみに悩んでいるということから、子供の頃からアトピー性皮膚炎にかかっていたのではないかと考えられます。アトピー性皮膚炎は何度も慢性の湿しんをくり返し皮膚がかさかさに乾燥し、ひどいかゆみに悩まされる病気です。
以前は、乳幼児期にアトピー性皮膚炎が発病しても、成長すれば治るケースが多く見られました。しかし、最近は、アトピー性皮膚炎が成人後も続き、しかも重症化するケースが増加してきました。このようなタイプを成人型アトピー性皮膚炎と呼んでいます。あなたの訴えている黒ずみ、シミはこれに当たるのではないかと思われます。ただし、皮膚科で診断を受け、この黒ずみやシミが、太陽光線や内臓の異常に関係する肝斑やリール黒皮症などでないことを確認しておく必要があります。
アトピー 性皮膚炎に対する漢方治療の原則は、清熱剤と駆お血剤の二つを組み合わせて使用することです。清熱剤とは、熱や炎症を取り去る薬で 、患部の炎症や熱、かゆみを解消します。お血(おけつ)とは、血液が滞ることですが、そのお血を改善するのが駆お血剤です。アトピー 性皮膚炎の患者さんを診察すると、お血を示す腹部のへその周囲の圧痛(押すと感じる痛み)と抵抗がしばしば認められます。
アトピー 性皮膚炎に用いられる代表的な清熱剤には
白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう) 治頭瘡一方(ぢずそういっぽう) 黄連解毒湯(おうれんげどくとう) 温清飲(うんせいいん) 消風散(しょうふうさん) 柴胡清肝湯(さいこせいかんとう) などがあり、同じくお血剤には 桃核承気湯(とうかくじょうきとう) 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) 加味逍遥散(かみしょうようさん) 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などがあり、患部がじくじくしているかどうか、落屑がどのくらいか、便秘をしているかどうか、体力はどうかなどに応じて使い分けられます。
あなたの場合、体力は中等度でシミが残るほどの湿しんなので、患部はある程度じくじくとしていると推測します。そこで、清熱剤としては
治頭瘡一方を、駆お血剤としては桂枝茯苓丸ハトムギを加えたものを第一選択として勧めます。ハトムギには皮膚をつるつるにする作用があるのです。
患部のじくじくの状態がもっとひどく、かゆくて、浸出液が出ているようなら、
治頭瘡一方の代わりに 消風散 、あまりじくじくしておらず乾燥しているときは、白虎加人参湯温清飲、あるいは 黄連解毒湯を用います。いずれも桂枝茯苓丸加ハトムギを併用してください。
もう一つの訴えとして痔をあげています。一般的な切れ痔、イボ痔の場合、漢方ではお血によるものと考えます。肛門痔静脈という細い血管が密集したところで血液がうっ滞した結果、痔が起こるのです。桂枝茯苓丸はお血を解消し、痔も改善する効果が期待できます。
痔には便秘が関連していることがよくあります。ひどい便秘で、痔が改善しないときは、代わりに
乙字湯(おつじとう)を用いてみましょう。 アトピー 性皮膚炎の 治療の場合、半年から一年ほど服用を続けないと、漢方薬の効果は得られにくいものです。また、生活リズムを守り、食事では脂っこいものをたべすぎない、野菜は加熱して食べるなどの注意も必要です。エステに通ったそうですが、無理に肌の毛を剃ると皮膚の表面を傷つけて皮膚炎を悪化させることがあります。


漢方治療はその時のその人に合った薬を微調整するオーダーメイド処方です。
  必ず専門の医師にご相談ください。
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