鍋谷院長の漢方なんでも相談室

以下は健康雑誌「壮快」2000年5月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事を要約したものです

血管が浮き出て足もだるい静脈瘤を手術せずに治したい
私は埼玉県に住む66歳になる女性です。両足にできている静脈瘤(下肢静脈瘤)のことでご相談します。4年ほど前から、静脈が徐々に浮き出てきていましたが、最近は特にひどく、ひざの裏側の静脈まで症状が出てきてしまいました。
また、ちょっと遠出をして長時間歩いたり、しばらく正座をしたりしていると、非常に足が重だるくなります。静脈の腫れはとても目立つので、外出するときもズボンしかはけません。病院で相談したところ、手術を勧められましたが、それは避けたいと思います。
身長は153センチで、体重は49キロです。血圧がやや高めで、現在は弱い降圧剤(血圧を下げる薬)を服用しています。手足は夏でも冷たく感じることがあって 、汗はあまりかきません。胃腸はあまり丈夫ではなく、どちらかといえば便秘がちです。症状が少しでもよくなるような漢方薬を教えてください。(66歳女性/匿名希望)


疎経活血湯加大黄(そけいかっけつとうかだいおう)を 第一選択薬に
下肢静脈瘤は、静脈の血液が滞って起こる病気ですが、その原因は主に2つあります。静脈の血管の内部には、血液の逆流を防ぐための弁がついています。体の表面近くにある静脈の弁が遺伝的な素質、立ち仕事、妊娠、加齢(年を取ること)などが原因でうまく働か
なくなって血液をせき止め、血管の内圧が上昇して起こるのが第一のタイプです。
もう1つは、下肢の深いところにある静脈に血栓(血液の塊)ができるために流れが変わり、下肢の表面近くの静脈の内圧(血管内の圧力)が上昇してできる静脈瘤です。
下肢静脈瘤ができると、ひざの裏やふくらはぎなどにある静脈が、青黒い色に変わって太くなり、腫れるのです。痛みが出てくることもあります。痛みがひどくなると、歩行困難になる場合もありますが、下肢静脈瘤が直接、生命にかかわることはありません。男性に比べて女性の発生頻度は2倍近くも多くなっています。
こうした下肢静脈瘤に対する現代医学的な治療法は、主に3つあります。1つ目は、医療用の弾力性に富んだ
ストッキングの装用です。軽いものならこれで軽快することもあります。
2つ目は、
硬化療法で、血管をかためる薬剤を注入して、患部の血液の流れを止めます。
3つ目は、
ストリッピングといって、患部の血管を縛って止めた後に、引き抜いてしまいます。外科手術を受けるのに抵抗があるなら、漢方治療を試してみるのもいいでしょう。
漢方では、下肢静脈瘤をお血(おけつ)の病態であると考えます。お血とは、血液やリンパ液が滞った状態のことです。血液が順調に流れていると、臓器や全身の健康がたもたれます。一方、なんらかの原因で血液が滞ると、臓器の機能が低下し、病気の原因になることがあります。これがお血と呼ばれる状態です。
下肢静脈瘤はお血と考えて、お血を改善する駆お血剤(くおけつざい)を用いるのが原則です。駆お血剤は、体力に応じて実証(体力が充実していること)向けの
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、中間証向けの桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、虚証(体力が虚弱なこと)向けの疎経活血湯(そけいかっけつとう)当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などが使われます。疎経活血湯は、駆お血剤と利水剤が両方含まれていて、下肢静脈瘤の治療に大変好都合な処方です。この処方は、実に17種類もの生薬(漢方の原材料)から構成されていて、血液、リンパ液、水分を流通させるという性格を併せ持っています。
あなたの体格を見ると、少し太りぎみかもしれませんが、冷え性があり、胃腸もそれほど丈夫ではないそうなので、実証ではなくどちらかといえば虚証と考えられます。また、便秘もありますが、あなたの便秘は虚証の便秘のようです。
こうしたことから考えると、あなたの第一選択薬は
疎経活血湯大黄(だいおう)を加えた疎経活血湯加大黄 (そけいかっけつとうかだいおう)とします。大黄は便秘を解消するために加えます。 大黄は一般的に実証の便秘に用いられますが、ときには虚証の便秘にも用いられます。
第二選択薬としては、
桂枝茯苓丸大黄を加えた桂枝茯苓丸加大黄(けいしぶくりょうがんかだいおう)を勧めます。特に腹診(腹部に触る診察)をして、へその周りに、お血特有の圧痛(押すと感じる痛み)としこりが認められる場合は、よく効くものです。
この場合、
疎経活血湯桂枝茯苓丸を併用して効果を発揮することがあります。体力が中程度よりもさらに低いときは、当帰芍薬散疎経活血湯を併せて飲むと、よく効くことがあります。
漢方の効果が現れるまで、早くても、2〜3ヶ月が必要でしょう。体のほかの面でもお血の症状がでているはずですから、半年、1年と服用して、体質を整えることが大切です。夜寝るときに足をやや高くすることや、毎日軽いマッサージをすることも有効です。


漢方治療はその時のその人に合った薬を微調整するオーダーメイド処方です。
  必ず専門の医師にご相談ください。
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