鍋谷院長の漢方なんでも相談室

以下は健康雑誌「壮快」2000年6月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事を要約したものです

薬でもなかなか正常化しない血圧をなんとか下げたい
 私は高血圧で大変悩んでいます。現在60歳ですが、40歳を過ぎたころから血圧が高くなりました。血圧を下げる薬(血圧降下剤)を飲んではいたものの、最大血圧が160ミリ、最小血圧は100ミリと、なかなか正常値まで下がらなかったのです。
 そのうえ、一昨年10月ごろから、急に最大血圧が210ミリ、最小血圧120ミリくらいにまで上がってしまいました。そこで、今度は医大の病院で専門医に診てもらうようにしたのです。そして、1日1錠、心臓に負担のかからないようにとの配慮で薬を飲んでいますが、あまり改善しません。現在も服用中ですが、最大血圧が190ミリ、最小血圧110ミリで、最小血圧が高く、医師も頭を悩ませているのです。
身長158センチ、体重62キロで、がっちりとした体型です。食欲もあり、毎日よく眠れます。楽しみながらパート勤めをしています。どうか、よい漢方薬を教えてください。(60歳女性/匿名希望)


第一選択としては大柴胡湯(だいさいことう)を勧める
高血圧は、生活習慣病の代表で、腎臓や肝臓、血管などの病気のために血圧が上昇する二次性高血圧と、原因となる病気のない原因不明の本能性高血圧とがありますが、圧倒的に多いのは本能性高血圧です。
 高血圧の基準は一般的には、次のような分類がされています。軽度の高血圧は、最大血圧が140〜159ミリ、最小血圧が90〜99ミリ、中等度の高血圧は、最大血圧が160〜179ミリ、最小血圧が100〜109ミリ、高度の高血圧は、最大血圧が180ミリ以上、最小血圧が110ミリ以上です。
高血圧は、脳の血管が破れる脳出血の原因になったり、心臓病などを引き起こしたりすることがあります。また、頭痛、めまいが起こって日常生活が制限され、QOL(生活の質)の低下を招くこともあるのです。
高血圧を改善するには、まず、生活習慣の変更が基本です。塩分摂取の制限(1日6〜10グラム以下におさえるなど)や肥満の減量飲酒の制限など食生活に注意し、禁煙適度な運動などを行うことも大切です。それでも血圧がコントロールされないときは、薬物治療を行います。
漢方的に診断すると、高血圧の患者さんは、へその周りにお血(おけつ・血液が滞ること)を示す圧痛(押すと感じる痛みのこと)点を認めることが少なくありません。また、便秘を伴う人もいます。そこで、お血を改善する駆お血剤(くおけつざい)と便通を整える大黄(だいおう)などの下剤的な生薬(漢方の原材料)を併用するケースも多々あるのです。
一口に高血圧といっても、体力の充実した実証の人もいれば、体力の衰えた虚証の人もいるので、体力の有無と体質の見極めが求められます。
あなたは現在でも、最大血圧が190ミリ、最小血圧110ミリと、高度の高血圧を示しています。頑健で血色もよく、実証なのだろうと推測されます。おそらく、腹部を触診すれば、お血を示す圧痛と胸脇苦満(肋骨の下に抵抗と圧痛が認められる症状)もあるのではないかと思われます。
 そこで、 第一選択としては、大柴胡湯(だいさいことう)です。これに、駆お血剤としては、便秘が強ければ桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、便通がよければ桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を併用します。おなかを自分でさわってみて、腹直筋(へその両側を縦に走る筋肉)が突っ張っていて、胸脇苦満があるようなら、大柴胡湯の代わりに四逆散(しぎゃくさん)桂枝茯苓丸の併用でも効果があります。動悸があり、みぞおちをさわるとドキドキと脈を打つような人は、大柴胡湯四逆散の代わりに柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)がよく効きます。
しかし、色白で肥満している場合は、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)という処方が奏効します。見かけは太っていても冷え性で、虚証であれば、八味丸(はちみがん)七物降下湯(しちもつこうかとう)を選ぶべきなのですが、相談のお便りからは、その可能性はないと思われます。
高血圧を改善するための漢方薬は、根気よく長く飲み続ける必要があります。少なくとも、3カ月から半年以上は飲み続けないと効果は期待できません。効果が出てくると、階段を上がっても息切れしなくなるなどの効き目が自覚でき、体調もよくなります。長期間飲み続けても副作用の心配がないのが漢方薬の特徴です。
降圧剤を1日1回、漢方薬を1日2、3回服用して、効果が現れてきたら、降圧剤の方を、さらにへらしていくといいでしょう。

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