鍋谷院長の漢方なんでも相談室

以下は健康雑誌「壮快」2000年9月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された 記事を要約したものです

尋常性乾癬に悩む私に合う漢方薬はなんでしょうか
 私は現在71歳になる男性で、身長は163 センチ、体重は74キロです。1年半ほど前から尋常性乾癬で通院していますが、薬を飲んでも症状がちっともよくなりません。 特にひどいのが足です。両足のひざと足の甲にプツプツとした赤いものができていて、その部分の皮膚は、かさかさして少し盛り上がっています。
また、ひじや頭の髪の生え際にプツプツと出ることもあります。塗り薬もつけていますが、効かないようです。
今のところ、血圧や血糖値は正常で特に心配はないそうですが、医師からは体重を落とすように注意されています。尿の出は普通で、便通は毎日あります。手足の冷えは全くありませんが、肩や首がこったと感じることはあります。私に合う漢方薬を教えてください。 (71歳/男性/匿名希望)


季節による変化も念頭に置いて判定
 乾癬は皮膚からわずかに盛り上がったさまざまな大きさの紅疹が、ひじやひざ、足の甲、顔などに、しばしば左右対称に現れる病気です。ガンなどのように悪性ではありませんが、非常に治療の難しい病気です。
この病気の原因はよくわかっていませんが、遺伝的な素因が関連しているようです。現代医学的にはステロイド(炎症をおさえるホルモン剤)の軟こうやビタミンDの軟こうの塗布、紫外線照射などが行われますが、ほとんど効果は期待できないのが実情です。
非常に慢性的に経過する病気で、症状は長く続き、いったん治ったかのように見えても、何度も再発をくり返し、現代医学でも漢方でも治療の難しい皮膚病の1つですが、他人に伝染する病気ではありません。
漢方では、乾癬の症状を血熱(けつねつ)とお血(おけつ)としてとらえます。血熱とは、血液が熱を持った状態、お血とは血液が滞った状態を意味します。そこで、血熱を冷ますための
清熱剤、お血を改善するための駆お血剤を用いると、現代医学で反応しなかった紅疹が薄らいで、良好な結果が得られることが少なくありません。
主な清熱剤としては、
温清飲(うんせいいん)消風散(しょうふうさん)が用いられます。皮膚がかさかさしているときは温清飲 、それよりもジクジクしているようなときは消風散、のどが乾く人のときは白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)などが用いられます。駆お血剤としては、体力が充実した実証タイプには桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、体力中程度の人には桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、体力が衰えた虚証タイプには当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を用います。
あなたにはどの処方が適しているかですが、体格は身長163センチで74キロですから、肥満体といっていいでしょう。 肩や首がこった感じがする、手足の冷えは全くないといっています。これらから、体力の充実した実証タイプと思われます。髪の生え際、左右のひざ、ひじ、足の甲に、かさかさした紅疹ができているということです。
これらのことから、第一選択として、
清熱剤としては温清飲あるいは消風散、駆お血剤としては桂枝茯苓丸をお勧めします。 紅疹の部分の皮膚はかさかさしているということなので、温清飲が適応すると思いますが、くずれて汁が出たり、血がにじんだり、かゆみが強かったりする人なら温清飲ではなく消風散を用いることになります。便秘症なら駆お血剤として桃核承気湯を用いますが、便通が毎日あるそうなので、桂枝茯苓丸でよいでしょう。
第二選択としては、体重をへらすよう指導されているということなので、肥満を解消して体質を改善する
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)を勧めます。
まず初めに、
温清飲桂枝茯苓丸を3ヶ月服用してみてください。次に、消風散桂枝茯苓丸を服用してみます。温清飲消風散のどちらがよく効くかは、実際に試してみないとわからないでしょう。これらの処方が効かない場合は、第二選択の防風通聖散を試してください。
もし、症状が改善しそうな感触が得られたら、それを半年から1年は続けて服用してください。 これまでの経験から、乾癬が改善する兆しとして、紅疹が薄らいで、紅疹の境目があまり鮮明でなくなると、その後、ぐんぐんよくなることがあります。いくら飲み続けても、この変化が出ないときは、効果はないと考えていいでしょう。
乾癬は季節によって症状が軽快したり悪化したりすることがあります。ですから、その季節による変化を念頭に置きながら、漢方薬の効果を判定することが大切です。漢方薬を飲んで悪化したけれども、実はそれは季節による変化だったということもあります。
温清飲あるいは消風散桂枝茯苓丸を飲むときは、2つの漢方薬を同時に飲んでもかまいません。
また、朝と夜に
温清飲あるいは消風散を飲み、昼に桂枝茯苓丸を飲むという方法もあります。


漢方治療はその時のその人に合った薬を微調整するオーダーメイド処方です。
  必ず専門の医師にご相談ください。
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