鍋谷院長の漢方なんでも相談室

以下は健康雑誌「壮快」2000年11月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された 記事を要約したものです

10年以上も悩まされている頻尿をなんとか治したい
 私は現在47歳になる男性です。もう10年以上前から、尿が近くて困っています。30分から1時間くらいに1回はトイレに立つ毎日なのです。症状としては、尿が近いものの出にくく、最後の切れが悪いのです。
 泌尿器科の病院に行って検査をしてもらいましたが、特に異常なしといわれました。興奮・心配を鎮める薬、手の震え・筋肉のこわばりを改善する薬、精神的緊張や不安を和らげる薬、の三種類の薬を処方されて飲んではいますが、症状は全く変わりません。
その代わり、夜は、寝ると朝まで尿は全く出ません。私は酒は飲まず、ジュースなら1日2本くらい飲みます。 私の身長は170センチ、体重は80キロです。
どうか私に合う漢方薬を教えてください。         (47歳/男性/匿名希望)


体力や気力も充実させる
 健康な人の排尿の回数は、日中に5〜7回、夜間は若い人で0回、年を取ると1、2回以上ですが、これよりも回数が多くなったものが頻尿です。
頻尿の原因になる病気として考えられるのは、前立腺肥大(膀胱の下面にあるクリの実
 大の男性生殖器である前立腺が肥大する病気)、膀胱や腎臓の異常などです。
その中で実際に多いのは膀胱炎、女性の妊娠や子宮筋腫(子宮に良性の腫瘍ができる病気)が原因の膀胱の圧迫、糖尿病が原因の多尿、手術後などに膀胱の神経が刺激されて起こる頻尿などです。
こうした病気による異常がないにもかかわらず、頻尿が起こる場合は、心因性の頻尿が疑われます。
あなたは、泌尿器科で検査を受けて、特に異常なしといわれたそうです。このことから、心因性の頻尿の可能性が高いと考えられます。
そして、ほぼ間違いなく心因性の頻尿であろうと判断できる材料は、「夜は、寝ると朝まで尿は全く出ません」とおっしゃっている点です。
というのも、心因性の頻尿の最大の特徴は、夜間は頻尿の症状が治まる点にあるからです。したがって、あなたの場合は、心因性の頻尿と考えてよさそうです。
健康な人の場合、膀胱の中に300〜400ミリリットルの尿がたまると尿意を催しますが、心因性の頻尿の場合は、150ミリリットルほどで尿意を催す人が少なくありません。膀胱の神経が過敏になっているためのようですが、その原因はまだよくわかっていません。
あなたは尿の切れが悪いようだと訴えていますが、それは尿量が少ないために、尿の切れが悪く感じられているのではないかと思います。
心因性の頻尿に対して、漢方薬は期待にたがわぬ効果を示してくれます。
漢方では、心因性の頻尿には、尿の出をよくする利水剤といわれる種類の薬が用いられます。利水剤とは、体内の水(すい・水分)のバランスをよくして、体の水を巡らせる薬です。
あなたの体の特徴を見ると、身長170センチで、体重80キロですから、体は肥満しているほうでしょう。
肥満している人は一般的に、実証(体力が充実していること)タイプと考えます。まれには、肥満していても、虚証(体力が虚弱なこと)タイプの場合もあるのですが、あなたはとりあえず、実証から中間証(実証と虚証タイプの中間)タイプと考えておきます。
そこで、あなたに適した第一選択薬は
五淋散(ごりんさん)です。これは11種類の生薬(漢方薬の原材料)を組み合わせた薬で、そのうち3種類は利水作用を持っています。この処方は、体力が中等度で、のどの渇きはそれほど強くない人に適しています。頻尿、排尿痛、残尿感などが伴う膀胱炎、尿道炎、尿路結石とともに心因性の頻尿にもしばしば用いられ、弱りがちな体力や気力も充実させるのです。
第ニ選択薬は
猪苓湯(ちょれいとう)です。これは、のどが渇く人に適していて、頻尿、排尿痛、血尿、排尿時の不快感、残尿感などを伴う尿道炎、尿路結石、腎結石、腎炎などに用いられます。
肥満している人でも、水太りでやや虚弱タイプの場合には、これによく似た
清心蓮子飲(せいしんれんしいん)という処方にします。これらの薬を1ヶ月ほどは飲み続けてください。
なお、あなたは、病院から処方されている薬の名前を、具体的に教えてくださいました(編集部注:相談内容からは割愛させていただきました)。それらは、精神病薬、パーキンソン病(手足の震えを起こす病気)治療薬、抗不安薬に分類されるもので、私にはあなたに適した処方とは思えません。
長く飲み続けると習慣性がつくおそれがあり、好ましい薬剤ではないので、1日おき、2日おきというふうに服用回数をへらし、最終的には中止するべきだと考えます。


漢方治療はその時のその人に合った薬を微調整するオーダーメイド処方です。
  必ず専門の医師にご相談ください。
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