鍋谷院長の漢方なんでも相談室

以下は健康雑誌「壮快」2000年1月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。

ときおり強く痛む腎結石や体力の衰えに悩んでいる
  私は、現在、71歳になる男性です。身長は158センチ、体重は57キロあります。
  1年半ほど前から通院して、腎結石(尿中の物質が腎臓の中で固まって石となる病気)の治療を受けています。結石が動くときでしょうか。ときどき両方のわき腹から背中の両側に
かけて、ひどい違和感を覚えます。たまに下腹部が強く痛むときもあるのです。いずれも、しばらくたつと消えます。
  前立腺肥大症(膀胱の下面にあるクリの実大の臓器、前立腺が肥大する病気)もあります。トイレが近くなり、夜中に3、4回は起きてしまうのです。
  最近は、全身が疲れやすく、食欲も以前ほどなくなりました。何をやるにしても、活力がわいてこないといいますか、やる気が出てこないようです。衰えてきた体力を回復させたいとも思っています。私の症状に合った漢方薬はあるでしょうか。  (71歳/男性/匿名希望)


第一に猪苓湯が選択される
  腎結石は、石はどのくらいの大きさか、石がどこにあるのか、石がどんな成分なのか、などによって治療法が異なります。
  まず、一般に7ミリ以下の大きさなら自然に流れ出る可能性が大きくなりますが、10ミリ
を超えると出にくいといわれています。次に、石がどこにあるか、です。腎臓から膀胱までの尿の通路を尿管、膀胱から尿道口までの間の通路を尿道と呼びます。石が腎臓の中にある場合は下がりにくく、尿管や尿道まで下りている石は比較的流れ落ちやすいと考えられています。
  石の種類は、シュウ酸塩とリン酸塩の混合した結石、尿酸あるいは尿酸塩による結石、システィン結石などがあり、尿酸あるいは尿酸塩石は溶けやすく、システィン石は溶けにくいなど、種類によって性質も異なることがわかっています。
  これらの状態を診たうえで、主に4つの治療法が行われます。非手術的な方法として、(1)薬で溶かす、(2)薬で排出させる、があり、自然に排出させるために、スイカを食べる、水を取る、番茶やビールを飲む、とんとん飛び跳ねる、階段を上がり下りするなどが勧められています。しかし、溶かしたり自然排出させたりするのが難しいときは、(3)衝撃波を体外から当て、石を粉々にして流れ出させる、体外衝撃波結石破砕術が行われますが、以上の3つがうまくいかない場合や、適応しない場合は、(4)手術となります。
  あなたは1年前から通院して治療を受けているそうなので、ひどい痛みに悩まされたり、石が尿路をふさいで尿が出なくなる尿閉を起こしたりはしておらず、非手術的な治療を行いながら経過を診ているのではないかと思われます。
  漢方治療は、自然に石を流れ出させるときに有効なケースがしばしば見られます。漢方で腎結石や尿路結石のときに、基本的に用いられるのは、尿の出をよくする利尿剤(利水剤)ですが、そのなかで第一に選択されるのは猪苓湯 (ちょれいとう)です。
  この処方は猪苓(ブナなどの根に寄生するサルノコシカケ科チョレイマイタケの菌核)、茯苓(アカマツまたはクロマツの切り株の根の周りに生えるサルノコシカケ科マツホドの菌体の外層を除いたもの)、滑石(天然の滑石=タルク)、沢瀉(淡水の中に自生するオモダカ科の多年草サジオモダカの根茎からヒゲ根を除いたもの)、阿膠(牛や馬などの動物の皮と骨から作ったニカワ質)の五種類の生薬(漢方薬の原材料)から構成され、いずれも強い利尿作用を持ち、同時に膀胱や尿道の内面を滑らかにして、石を流れ出やすくします。
  一般に尿路結石が尿路のどこかに引っかかると、尿路の走行に沿った激しい痛み(疝痛)が起こります。このときは、筋肉の緊張をほぐして痛みを取り除く芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう) が使われます。
  結石による痛みにしばしば悩まされる人には、猪苓湯芍薬甘草湯を併せた猪苓湯合芍薬甘草湯(ちょれいとうごうしゃくやくかんぞうとう)を勧めます。朝と晩、あるいは、朝、昼、晩に猪苓湯芍薬甘草湯をいっしょに服用します。ほとんどの人は猪苓湯が適していますが、胃腸の弱い人では胃に障ることがあります。その場合は、猪苓湯の代わりに清心蓮子飲(せいしんれんしいん)が適しています。痛みが起こるときは、清心蓮子飲芍薬甘草湯を併用します。
  また、この人は71歳で体力が落ち込んで活力もわいてこないといっています。さらに、前立腺肥大もあります。そこで、老化予防の名薬といわれる八味丸(はちみがん)を併用すれば、頻尿をおさえて夜間尿をへらし、活力を引き出す効果が期待できます。
  朝、晩あるいは、朝、昼、晩は猪苓湯合芍薬甘草湯(または清心蓮子飲芍薬甘草湯)を飲み、夜寝る前に八味丸を飲みます。尿量が少なく、むくみがある場合は、八味丸に利尿作用の強い牛膝車前子を加えた 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん) を飲むのがいいでしょう。
  なお、尿が出なくなる尿閉が起こったときは、手術も必要になるので、ただちに現代医学的な治療を受けてください。
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  必ず専門の医師にご相談ください。
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