漢方掲載記事−昌平クリニック院長・鍋谷欣市−
この記事は 「壮快」2006年2月号別冊(マキノ出版)「尿の悩み一発解消事典」に掲載されました

名医が処方!膀胱炎から前立腺肥大まで男女の排尿困難をピタリと治す
   漢方薬
昌平クリニック院長・杏林大学名誉教授  鍋谷 欣市

体内の水と血をコントロールする
 頻尿や排尿困難には、さまざまな原因が考えられます。西洋医学では、それらの原因である膀胱炎を抗生物質で治療したり、前立腺肥大症(尿道を取り巻く前立腺という臓器が肥大する病気)には手術をしたりして尿の悩みを解決します。
  しかし東洋医学では、漢方薬を用いて体内の水と血液の流れをコントロールしたり、膀胱の内壁の力を強化したりして、尿のトラブルを改善するのです。
  排尿障害で使用される漢方薬を、具体的に挙げていきましょう。
  まず膀胱炎の薬で有名なのが、猪苓湯 (ちょれいとう)です。頻尿・血尿・排尿痛といった、細菌性・非細菌性、いずれの膀胱炎にもよく効きます。この薬は実証(体力が充実していること)と虚証(体力が虚弱なこと)のほぼ中間の証の人に処方されます。
  同じ中間証でも、胃腸が弱く、精神的に不安定で神経質な人には、清心蓮子飲(せいしんれんしいん)がいいでしょう。
  実証タイプで、もっと体力があるという人には、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)がいいでしょう。がっしりとした体格で、顔色が浅黒く、便秘ぎみといった人には、こちらのほうが効果的です。

中年女性にも高齢男性にも奏功
  一方、顔色が青白く、筋肉の締まりもなく、舌には白い苔がつき、へその下がふにゃふにゃしていて、下肢に力が入らず、脱力感があり、脈もあまり強くないといった虚証タイプの人には、六味丸(ろくみがん)八味丸(はちみがん)[八味地黄丸と同じ]、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などがよく使われます。
  また、特に夜間頻尿が激しい、排尿時に尿がボタボタと落ちる、あるいはだらだらと出るといった症状や、細菌検査では陰性だけれども、排尿にまつわる不快症状が続くような膀胱炎に適しています。
  一般的には、八味丸が使われます。滋養強壮作用があり、老化防止の漢方薬として有名な八味丸ですが、八味丸に含まれる附子(ぶし・キンポウゲ科のトリカブトの根を煮沸して減毒処理したもの)が胃に刺激を与えることがあるため、胃腸の弱いかたには、この附子桂枝(けいし・クスノキ科のニッケイの若枝)を除いた六味丸を処方します。
  牛車腎気丸は、八味丸に、水はけをよくする生薬(漢方薬を構成する草根木皮)と、筋肉を補強する生薬が加わっています。そのため、頻尿に加え、むくみや、尿の出しぶりが強い人に使われるのです。
  これらの漢方薬で排尿障害が改善した実例を紹介しましょう。
  49歳の女性は、急に頻尿になったということで来院されました。下腹部がモヤモヤするような不快感に悩まされ、夜間頻尿もありました。過去に数度、膀胱炎になったことがあるということでした。
  中太りで一見実証タイプなのですが、下腹部がやわらかく力が足りなかったことから、猪苓湯を朝と晩に、牛車腎気丸を昼に服用してもらいました。
  その結果、頻尿は、1ヵ月で改善し、2ヵ月後には下腹部の不快感もきれいに消えたということでした。
  また、7年前に来院した80歳の男性は、排尿困難と夜間頻尿があるとのことで来院しました。尿の出が悪く、少量しか出ないうえに、夜間にも4回ほど尿意を催して目が覚めるということでした。このかたは、足にむくみが出ていたので、八味丸を処方しました。
  朝晩の服用を続けたところ、1ヵ月で足のむくみが取れ、1回の排尿量もふえました。夜間頻尿も改善して、夜ぐっすり眠れると喜んでおられました。現在もときどきお会いしますが、聞いたところでは体調はよく、87歳になった今もプールで泳いでいるそうです。
  このように、急性的な症状も、慢性的な症状も、漢方薬でうまくコントロールすることができます。
  一般に、排尿の回数は1日5〜10回といわれます。寒い季節になれば、もう少しふえるでしょう。
  ただ、排尿回数がふたんより明らかにふえたり、残尿感や排尿痛があったりするときには、病気を疑ったほうがいいかもしれません。
  女性の場合、尿道が短いために膀胱炎になりやすく、50代以降の男性なら前立腺肥大症が考えられますので、早めの受診をお勧めします。

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