漢方掲載記事−昌平クリニック院長・鍋谷欣市−
この記事は 「壮快」2009年1月号別冊(マキノ出版)「<ひざ痛一発解消>大事典」に掲載されました

中年以降の女性に多い水太りタイプのひざ痛に著効を現す漢方薬
   「防已黄耆湯」
昌平クリニック院長・杏林大学名誉教授  鍋谷 欣市

ひざ痛だけでなく肥満そのものも解消
  肥満に悩まされている人は少なくありませんが、昔も今も多いのが、水太りタイプの肥満です。このタイプは女性に多いのが特徴です。
  中年以降になると、変形性膝関節症(ひざの関節の変形によって起こる病気)などによるひざの痛みに悩まされる女性がふえてきますが、そういう女性の多くが水太りタイプでもあるのです。
  漢方では、気・血・水が体の基本的な3つの要素で、これらがうまく循環することで健康が保たれていると考えます。しかし、これらはしばしば滞り、それが体の不調の原因となります。水が滞った状態は、水毒(または水滞)と呼ばれ、関節痛、吐き気、めまい、むくみなどの原因となります。
  こうした水毒から生じるひざの痛みに対して、お勧めしたい漢方薬が、防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)です。
  防已黄耆湯は、その名前のとおり、防已黄耆を主薬として、以下にご紹介する6種類の生薬(漢方薬の原材料となる草根木皮)から構成された処方です。
  防已 ツヅラフジ科の多年草オオツヅラフジのつる茎または根茎を輪切りにしたもの。体の水を
      巡らせて、痛みを取り去る薬です。
  黄耆 マメ科キバナオウギおよびナイモウオウギの根を乾燥させたもの。もともと滋養強壮薬で
      すが、やはり水を巡らせ、汗を止める作用があります。
   キク科の多年草オケラの根茎のヒゲ根を除いたもの。体の水を巡らせる利水剤で、鎮痛
      作用もあります。
  生姜 ショウガ科多年草ショウガの根茎。体を温めて吐き気を止め、胃腸の働きを高めます。
  大棗 クロウメモドキ科の落葉樹ナツメの成熟した果実。漢方の栄養剤です。
  甘草 マメ科多年草カンゾウの根。体のバランスを整え、痛みやけいれんを鎮めます。
  この6つの生薬のうち、防已黄耆の3種類が水を巡らせる利水剤です。利水剤は、水毒によって生じた症状を改善します。
  ことに防已黄耆湯が適する証(漢方的な診断目標)は、最初にもふれたとおり水太りのかた、他の特徴としては、色白で、汗をかきやすく、どちらかというと虚証(体力が衰弱していること)タイプのかたです。
  こうしたタイプのひざの痛みに、防已黄耆湯は、大きな効果を発揮します。肥満や老化から、ひざ関節の軟骨が変形し、痛みを生じる変形性膝関節症に対しても有効です。
  優れた利水作用によって、水毒を解消し、ひざ痛だけではなく、ひざに水がたまる症状も改善しますし、水太りの肥満そのものも解消します。ただし、この漢方薬で、ひざ関節の変形そのものが改善されるわけではありません。

リウマチ痛も半月板損傷痛も改善
  また、変形性膝関節症に似た症状が現れる病気に関節リウマチがありますが、この病気も、防已黄耆湯で改善されるケースがしばしばあります。リウマチは全身性の病気で、原因は不明です。手や足などの関節に炎症、腫れ、痛みなどの症状を引き起こしますが、ひざにそうした症状が出る場合があるのです。
  次に症例をご紹介しましょう。
  Aさん(76歳・女性)は、右ひざの変形性膝関節症で痛みを訴えました。関節に水がたまることもあり、最近は手にも腫れが見られました。検査をすると、リウマチの反応も少し出たとのこと。Aさんの症状は水毒によると考えられたので、防已黄耆湯を服用してもらいました。
  すると半年ほどで、右ひざの痛みはかなり改善しました。以前は足がむくみ、靴下の跡がハッキリ足首についたそうですが、それも大幅に改善しました。手の指の痛みの進行も、ある程度、抑制されているようです。
  Bさん(75歳・女性)は、事故でひざ関節の半月板(大腿骨と頸骨の間でクッションの役割をしている、ひざの軟骨)を損傷、ひざの痛みに悩まされていました。水毒体質と考えられたので、防已黄耆湯を処方しました。すると、2ヵ月でひざの痛みが改善、2泊3日の旅行に出かけられたと喜ばれたのです。
  このように防已黄耆湯は、外傷によるひざ痛にも効果があります。

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