漢方掲載記事 『壮快』 目の難病は漢方で治る!

以下は、健康雑誌『壮快』2011年11月号(マキノ出版)に掲載された記事です。
clover 第1回 白内障
昌平クリニック医師  菅原 万喜

clover 気・血・水の流れを整えて症状を緩和
  かつて、漢方薬は、一部のかたが特別な意識を持って服用する傾向にありました。しかし現在では、一般的な疾患にも漢方薬が用いられるようになり、なじみのあるものに変わっているのではないでしょうか。
  眼科でも漢方薬が処方され、さまざまな目の疾患の改善や視力の向上に役立てられています。
  今月号から、そうした目の症状にとてもよく効くと考えられる漢方薬を、症状別にご紹介していきます。1回目は、特に患者数の多い白内障についてお話しします。
  白内障は、目の中の水晶体と呼ばれるカメラでいえばレンズに相当する部分が濁る病気です。
  白内障の主な原因は加齢です。白内障は早い人では40歳前後で発症し、それ以降年齢とともに急増し、高齢者のほとんどのかたに見られるようになります。
  しかし、生活スタイルや、ほかの病気の薬による副作用によって、若年層でも白内障が発症する場合もあります。屋外の仕事に従事しているかたや運動選手など、紫外線に当たりすぎている人、糖尿病の患者、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患でステロイド剤を長期間服用した人などが、それに該当します。
  一般的には、  白内障で水晶体が濁ると、眼球に入った光が水晶体をスムーズに通過できなくなるので、視界がかすみ、視力が低下します。水晶体は、一度濁ると元に戻すことができません。それどころか、時間の経過とともに、濁りが広範囲に及びます。西洋医学では、濁った水晶体を取り除き、人口のレンズに交換する手術を行います。
  これに対し、東洋医学の漢方薬では、目の働きにかかわる腎臓や肝臓の働きを高め、体を巡る気(目に見えない生体エネルギー)・血(血液)・水(血以外の体内の水分)の流れを整えることで症状を緩和させます。白内障では、目の中の水の流れや、目の奥の血行をよくし、水晶体を濁りにくくすることによって進行を食い止め、視力を維持、向上させるのです。

clover 75%に効果あり!大規模調査で実証
  漢方薬は、体質の違いによって、処方する薬の種類が変わります。白内障の場合は、腎臓の健康状態が反映される足腰の強さによって、薬を2種類に分類しています。
  足腰が弱り、腰痛やひざ痛を抱えるかた、階段の上り下りがつらいなど、腰から下の力が入りにくいかたには、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)を処方します。
  それ以外のかたには八味地黄丸(はちみじおうがん)[八味丸(はちみがん)]を処方します。八味地黄丸には、前述の気・血・水の流れをよくするための生薬(漢方薬を構成する草根木皮)がバランスよく含まれています。
  気に対しては桂枝(クスノキ科ニッケイの樹皮)、血に対しては地黄(ゴマノハグサ科ジオウの根茎)・牡丹皮(ボタン科ボタンの樹皮)・山茱萸(ミズキ科サンシュユの果実)・附子(キンポウゲ科トリカブトの塊根)の4種類、水に対しては茯苓(サルノコシカケ科マツホドの菌核)・沢瀉(オモダカ科サジオモダカの塊茎)の2種で、これに精力を増強する山薬(ヤマイモ科ヤマイモの根茎)を加えた8種類から構成されています。
  一方の牛車腎気丸は、八味地黄丸の8種類に、筋肉を増強する牛膝(ヒユ科ヒナタイノコズチなどの根)と、水はけをよくしてむくみを取り除く車前子(オオバコ科オオバコ属の種子)を加えた10種類の生薬から成り立っています。
  筋肉や骨、歯の老化や、記憶力や思考力の低下、水分調節の低下を起こした状態を「腎虚」といいますが、八味地黄丸は、腎虚の妙薬とされています。さまざまな老化現象の防止に役立つ漢方薬で、年齢と共に急速に進行する白内障にも効果を発揮します。

  日本を代表する漢方医の一人、故・藤平健先生も、白内障に対する八味地黄丸の効果を2回(昭和42年、60年)にわたる大規模な調査で実証しています。
  その結果が右表です。白内障の視力が回復したのが全体の49.8%で、現状維持つまり進行防止が26.5%と、合計で約75%に効果が認められたことがわかります。
  私が治療を行っている漢方専門病院の昌平クリニックでも、八味地黄丸によって白内障が改善したかたが多くいらっしゃいます。
八味丸による白内障治療成績
調査
年度
視力経過
上昇
維持
効果なし
昭和
42年
310人
(54.6%)
152人
(26.8%)
106人
(18.6%)
568人
(100%)
昭和
60年
165人
(42.7%)
101人
(26.2%)
120人
(31.1%)
386人
(100%)
475人
(49.8%)
253人
(26.5%)
226人
(23.7%)
954人
(100%)
藤平健 『漢方臨床ノート・治験篇』 創元社P432表2を改編

  1週間から1ヵ月で効果が現れる場合もありますが、多くのかたは3ヵ月くらい続けるうちに、症状が改善していきます。
  視力が上がり、予定していた白内障の手術を延期された例もあるのです。
  59歳の女性、Aさんもその一人です。Aさんは糖尿病も患っており、白内障の手術に踏み切れないでいました。そこで八味地黄丸を服用するようになったところ、0.7だった左目の視力が2ヵ月後には0.9に上がったのです。症状が改善したことによって、5年たった現在でも、手術を受けずに済んでいます。
  白内障にお困りのかたの中には、手術を敬遠されるかたも多いかと思います。手術に踏み切る前に、一度漢方薬を試してみてはいかがでしょうか。


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